あの人はラストゲームになったその試合を観客席から見つめていた。
今シーズン限りで現役を終える人を最後の晴れ舞台に立たせることのできなかった己の弱さに、涙を滲ませながらスピアーズの元へ挨拶に行く。
「お疲れ様でした」
「そっちこそお疲れ様、俺もうちのキャプテンとゴローさん戦わせてあげたかったな」
スピアーズはポツリとそうつぶやいた。
「あの二人仲良いですもんね」
「うん、まあ俺のいう事じゃないけどね」
「……最後のトップリーグ決勝をあの人の花道にしてあげたかったのになあ」
それでも僕が泣くわけにはゆくまい。
1番決勝の舞台に立てた事はきっとあの人だろうから。
「俺たちにできるのは、せめて心からのお疲れ様とありがとうだけじゃない?」
スピアーズが観客席の方をちらりと向いてそう告げた。
その言葉は僕ではなくきっとあの人に向けられているのだろう。
「スピアーズもそういうこと言うんですね」
「ジュビロは俺をどういう存在だと思ってるのさ!」
「ラグビーと米以外のものに興味がないと思ってたので」
「人でなしみたいにいうのやめてよね〜」
あの人へ美しい花道を捧げられなかったけれど、心からの感謝と愛情をここから捧げよう。
———
ジュビロとスピアーズ。
この敗北はジュビロにとって本当に悔しいだろうけれど、今となってはお疲れ様しか言えないな……。