「今年のレッドハリケーンズくんはすごいわねえ」
姐さんがしみじみと言うように言葉を漏らす。
自主的にテント片づけの手伝いをしてくれるという姐さんにありがたく荷物の箱詰めをお願いし、俺は荷物をトラックに積み込む作業に勤しむ。
「ホンマですよね、今日はほんっとヒヤヒヤしましたわ」
「見てるこっちも肝冷やしたわよ、本物のマピンピとペレナラが見れたのは良かったけど……」
箱を閉じながらはーっとため息を漏らす。
「松岡君のトライが無かったらどうなってたことか、ほんとに想像するだけで恐ろしい試合だったわね」
「そこは否定できませんわ」
最後の段ボールを手渡すと「そういえばこのあとまっすぐ帰ってくるの?」と聞いてくる。
「すいません、レッドハリケーンズに夕飯誘われてるんですわ」
「そう、8時ぐらいまでに帰って来れる?一緒に呑みながら試合見ましょ」
「了解です」
姐さんは駅のほうへと歩いていき、スタッフや選手も神戸へと帰っていく。
この帰り路の時間というのは夢から現実へと移り変わる独特のまどろみがあるように思う。
「スティーラーズさん」
「おつかれさんやな」
レッドハリケーンズとともに現れたライナーズに「なんで居んねん!」とツッコミが口から迸る。
「試合あらへんから見に来てただけよ?」
「さっきそこの自販機んとこでばったり鉢会ったんで夕飯三人で行きましょ!」
そういやトップチャレンジは一足先にリーグ戦を終えていたのだったか。
言われてみれば納得の理由に「第三者の意見も必要よな」と呟きが漏れた。
「ほんならライナーズおすすめの美味い店にしよ、あいつのほうがこの辺の飯屋詳しいし」
「えー、俺きょうは混ぜカレーの気分やったんですけど」
「難波まで出なくても吉田駅のほうにめっちゃええカレー屋あるからそこにせーへん?俺のお勧め」
「……じゃあそこで」
男子三日逢わざれば刮目してみよと人は言う。
ならばその男追いつかれないように、俺も早く大きくなっていくために飯を食おう。そしてラグビーの話をしよう。
互いに強く大きくならなければ、最後に与えられる優勝の幸福は得られないのだから。
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スティーラーズとレッドハリケーンズとライナーズ。
今年の台風の目は大木巨頭をなぎたおせるのか。