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コーギーとお昼寝

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花園にて

花園ラグビー場にはきょうも日本中のラグビーファンが集う。
「こんにちわ、」
「ああ、神戸製鋼所さんやないですか」
冬物のロングコートに身を包んだ神戸製鋼所さんがふらりと顔を出してきた。
こんな年の瀬間際にも花園に来る企業さんは少ないが、この人は大体一度か二度は高校ラグビーを見に来る。
「今年もブース出してるのね」
「もうこれはお約束なもんで。うちの選手らのサイン貰います?」
「それは大丈夫。あと使い捨てカイロ要る?」
「助かりますわあ」
さっそく使い捨てカイロの封を切ってお腹辺りに貼っておくと、ちょっと体が楽になる。
(お腹冷えるとホンマにアカンことになるからなあ……)
「そう言えば今日スティーラーズ連れて来んかったんですねえ」
「あの子は今日仕事納めなのよ。あ、今年の高校ラグビーのパンフも買わなきゃ」
「パンフは例年通りいつものブースに置いてますんで~」
「ありがとう。……そういえば、第2グラウンドが随分ひどい状況になってるって聞いたけど本当なの?」
思い出したように神戸製鋼さんがそんな事を聞いてくるが、その声には微妙な遠慮が含まれている。
花園の第2グラウンドの整備問題はここ最近度々話題に上がっていた。
2019年にFC東大阪が指定管理者になった際、第2グラウンドをスタジアムにして寄贈することを表明して指定管理権限をもぎ取った。
……が、この5年間ずっと改修は止まったままとなっており問題となっていたのだ。
「まあ、残念ながら」
「悔しくはないの?」
その声の明瞭さに、この人が一番聞きたかったのはそこなのだろうと察してしまう。
スティーラーズやレッドハリケーンズには言えない気持ちも、この人になら明かしてもいいだろう。
「俺が指定管理者のままやったらあんなことにはせんかったけどなーって気持ちはありますけど、取れなかったんはどうしようもないですからねえ。第2グラウンド改修は行政とFC東大阪本人の問題ですし、俺に出来るんは第1グラウンドの優先使用権は俺が握っとると言う事実で軽ーく脅しかけるぐらいですよって」
カラッとごまかすようにそう答えると「そうよねえ」とつぶやいた。
「ここはあなたの庭だもの、あなたが一番悔しいはずよね」
「そうですよ。ここはラグビーの聖地で俺の庭なんですから」
遠くから試合終了のホーンが鳴り響く。どうやら試合がひとつ終ってしまったようだ。
彼らに最良の花園ラグビー場を見せてやれない口惜しさはあるけれど、俺に出来ることはあまりにも少なすぎた。

「……ああ、もうすぐ次の試合始まりますよ」

俺たちに出来るのはただ、ラガーマンたちにとって最良の道を探すことだけだ。

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ライナーズとこべネキ。
高校ラグビーの季節に花園の整備問題を想う。

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