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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

特別な夜のために

朝一番に着いた東京は薄ら肌寒く感じられ、ばさりと薄いジャケットを被って外に出た。
「どうも、」
「お迎えおおきにな」
待ち合わせ場所ではサンゴリアスがひらりと手を振ってきた。
「こんな朝早くから東京来て良いんですか?」
「俺今季のリーグ戦でこっち来れるの今日だけやからなあ、それにどうも落ち着かへんねん」
「ああ……そういや今日が移籍後初試合ですもんね、ダン・カーター」
「せやろ?お陰でチケットの売れ行きは好調やったし」
今季初先発となった彼のお陰でこの試合は指定席完売という売れ行きの好調さを見せており、公共放送の中継カメラも入る上に東京メトロとのコラボスタンプラリーの期間も重なったりで今季特に賑やかなことになる試合になるのは間違いなかった。
「まあ、ちょっと天気は不安ですけどね」
「台風直撃ならまだしも小雨がぱらつくぐらいならええやろ」
「雨降ると客足落ちるんですよ、まあ今日は特別なんでガクンと落ちることは無いでしょうけど」
「せやなあ。ま、試合見に行くついでの東京観光も満喫しとこかな」
「はいはいお供しますよ、どこ行きます?」
「スカイツリーでも行こかな、俺タワーってポートタワーしか上ったことあらへんねん」




サンゴリアスとスティーラーズ。今回リアル観戦予定なので楽しみです。

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ラグビーボールはベリー味

「練習試合の後、時間は空いてるか」
ダイナボアーズさんがふと思い出したようにそう問いかけてきた。
それは練習試合前の軽い打ち合わせを終え、さあユニフォームに着替えようという矢先のことだ。
「空いてますけどどうしてですか?」
「父が昼間ケーキを買って来たんだが一人では食べ切れそうにない」
「ああ……でも珍しいですね、ダイナボアーズさんがお父さんの事言うの」
「父は忙しい人だからな、試合も見てくれることも稀なくらいだ」
「単純に顔を合わせる頻度が低いってだけでしたか」
「国防を支える身である以上多忙はやむなしだろう」
諦めを含みつつも父親への憧れと誇りを強く滲ませた声色は少しだけ気持ちが分かる。
僕だってキヤノンという会社を愛している。そしてその化身たるあの人の事も。
「せっかくですし、夕飯一緒に食べましょうか。ピザが良いです」
「ピザか」
「お嫌いでしたか?」
「いや、構わない」

****

練習試合後、僕は彼の私室に招かれ大きなピザとサラダを二人で分け合って食べながら練習試合の反省会をした。
「トップリーグとして今回の結果はちょっと不甲斐ないものがありますね……」
「こちらとしては楽しかったがな。そろそろケーキに行くか?」
「はい、ついでにコーヒーも頂けますか?」
「ボトル入りの物で良ければ」
ボトル入りのコーヒーをなみなみとマグカップに注ぎ、冷蔵庫から出て来た白い箱がどんと食卓の真ん中に置かれる。
そうしてゆっくりをふたを開ければ、白いクリームに青と淡い緑の入ったトップリーグ公式球と同じデザインの立体的なケーキがお出まししてくる。
「……実物大ですね」
「ああ」
これを丸々一個は甘党でもない限り一人で食べるにはいささか大きすぎる。
僕も特別甘いものが好きな訳ではないし、目の前の相手の反応を見るに同感なのだろう。
「父が言っていたが、今日はラグビーの日らしいな」
「ええ、今日がイギリスでラグビーの原型となったスポーツの生まれた日だと言われてますね。前にラグビー発祥の学校行ってませんでしたっけ?」
「ラグビー校には行ったがさすがに日付までは覚えてない」
「まあそうですよね」
フォークを借りて隅の方を一口食べると生クリームの甘さとスポンジのふわふわ感が広がり、間に挟まれた苺やブルーベリーの酸味がクリームの甘さを引き締めてくれている。
「あ、美味しいですねこれ」
「本当だな」
ケーキを食べながらラグビーにまつわるトリビアを語り、それをダイナボアーズさんは静かに聞いている。
(まあ、これもシーズン前だからできる息抜きですよねえ)
今シーズンのトップリーグは短期決戦だから気を抜ける瞬間は例年よりも少ないだろう、ましてトップチャレンジリーグは降格組が2チームあって去年より多い。
ワールドカップ前の厳しいシーズンを生き抜く前に、ケーキで英気を養うぐらいきっと許される。




ラグビーの日のイーグルスとダイナボアーズ。

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きょうは35度を超えてない

「あつい」
ぽつりとそんな台詞が口から洩れる。
一時期の連日40度に迫ろうかというような酷暑に比べれば落ち着いたとはいえまだ8月の下旬、暑いもんは暑い。
ましてやここは酷暑で名高い埼玉・熊谷、東京から流れ込む熱風とフェーン現象により余計に暑い。
「……なら熊谷に来なけりゃいいのに」
出迎えたのは浅黒い肌にオレンジと紺のグラデーションの髪をした勝気な雰囲気の女性・アルカス熊谷だ。
女子ラグビーの強豪として名高いが同じ熊谷に縁のある者同士なにかと顔を合わせることはあった。
「これも仕事の一環だから、ちょっと涼ませて」
アルカス熊谷は呆れたようにクーラーの効いた部屋へと誘導し、そのまま冷風のよく当たるソファーに寝ころんだ。
「そうだ、ガリガリ君いる?」
「いる……」
「ソーダ、コーラ、梨、グレープフルーツ、どれがいい?」
「普通にソーダでいいよ」
冷凍庫の前から放り投げるように渡されたのはグレープフルーツだった。なら何故聞いた?と言いたくもなるがまずはこの身体に溜まった熱を冷ます方が優先だ。
ガリっと齧ればグレープフルーツの酸味とシャリシャリ食感が心地よく、身体のほてりを冷ましてくれる。
「というか、オーストラリアにいたんじゃ?」
「昨日戻ったよ」
「へえ、帰国翌日仕事なんて大変そう」
「企業チームはそんなもんだよ」
しゃりしゃりと氷菓子をかみ砕き、冷たい風を浴びながらようやくひと心地着いた気分になれる。
「まあ、うちもお金が無いから一長一短なのかなあ」
「……クラブチームってそんなに貧乏なの?」
「野球やサッカーだと大きい会社がスポンサーついてくれたりするけどラグビーはね。あ、今度クラウドファンディングやるから投資してよ、50万」
「もっと安いコースなら検討しとく」
ちえっと呟いてアルカスは俺から視線を外す。
不機嫌な妹分(としかこの関係性を言いようがない)は面倒なようなそうでもないような、よく分からない感じだ。
(まあ、うちは兄弟分みんないなくなったしなあ)
一応大阪の方にいなくはないけど、あれは松下の子だ。三洋の子じゃない。
今はもういない兄弟と特別縁が深かった訳じゃないし、兄弟という感覚はいまいち掴みかねるところがあった。
「チラシぐらいなら貰っておこうか、うちのイベントに置いとくぐらいならできるし」
「むしろTwitterで拡散してよ」
「SNS繋がってないし無理じゃない?」
「無理って……ガリガリ君代取るよ」
「100円置いとけばいい?」
不愉快ではないこの距離感を案外俺は楽しんでいる。




野武士とアルカスさん。

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その腕に花束を抱いて

その日付は彼にとっては特別で、その場所に居合わせることが出来ることは僕にとっては本当に素晴らしく喜ばしいことでもある。
「シーウェイブスさん、」
「ジュビロか」
お祝いの品の積みあがった部屋で、彼は嬉しいような困ったような表情をこぼした。
「落成試合、呼んでくれてありがとうございます」
「こちらこそわざわざ釜石くんだりまで来てくれて助かるぐらいだ」
「これ、お祝いの花束です」
お祝いに持って来た花束はゴミにならないようチョコレートで作られた花束にしたが、甘いチョコの香りを嬉しそうに嗅ぐと「ありがとうな」と顔をほころばせた。
「これ、チョコで出来てるから食べられるんですよ。お嫌いでないと良いんですが」
「甘いもんは嫌いじゃないから大丈夫だ」
「なら良かったです」
尊敬する先輩の記念すべき場面に立ち会あえることが、僕にはとても喜ばしい。
チョコレートの花束を抱きしめた先輩と、今日は本気の試合になるだろう。
さいわい、今日は晴天の涼しい日だ。きっといい試合になるだろう。





ジュビロとシーウェイブス。うのスタのこけら落とし楽しみです。

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夏の北国水遊び

いの一番にと大きな水音を立てて飛び込んだのはレッドハリケーンズだった。
ここは北海道某所のとある川辺、合宿シーズンだし川辺でバーベキューでもしようというスティーラーズの誘いで近隣で合宿中の面々が大集合していた。
「みんな川入らへんのかな?気持ええのに」
「いまみんな忙しいから……」
焼肉番長と化したスティーラーズさん(この合宿四度目のバーベキューだと言っていた)とライナーズさんに、川で大きなスイカを冷やすスピアーズ、水のようにビールを飲むサンゴリアスとヴェルブリッツさん、日陰で仕事しているアークスさん……と各々好き勝手に過ごしているのを呆れ気味に眺めていた。
そんな時、背後からぶしゃ!と冷たい水が頭にぶっかけられた。
「油断大敵だぞジュビロ」
そう不敵に笑ったのは大きな水鉄砲を小脇に抱えたブラックラムズさんである。
「……ブラックラムズさんあなたねえ」
「トレーニングマッチの仕返しだ」
クハハ!と愉快そうに笑うのがちょっとイラッとくる。先輩だが仕返しは許されるだろう。
ガシッとその身体を引っ掴んで小脇に抱えると「レッドハリケーンズちょっと横にそれて!」と告げると、ブラックラムズさんの叫びも気にせずそのまま川に飛び込んだ!
「不意打ちにも程があるぞ!」
「不意打ちには不意打ち返しが一番ですから」
「なんだか楽しそうだねえ」
ケタケタ笑いながら来たのはラッコのように川に浮かんでいたグリーンロケッツさんだ。
「……グリーンロケッツは何で水に浮いてるのだ?」
「このミラクルセブンはカナヅチだからね」
「それ堂々という事やないと思うんやけど」
「だって事実だもの、このミラクルセブンは嘘つかない主義だから」

「あ、ぼちぼち肉焼けたでー」

その呼び声で全員の視線がバーベキューに向けられる。
さて、北海道での最後の思い出に肉を食おうじゃないか!


微妙に時季外れの北海道合宿話。もうすぐシーズン開幕です。
それはともかく私も北海道行きたい。

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