忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

君の名を叫ばせて、

ああ本当にそうなってしまったか、と言う虚無感が静かに胸の奥に降り積もった。
サンウルフズのスーパーラグビー脱退の公式発表は日本中のラグビーファン全てを虚脱状態に陥れるには十分だった。
あの幼子も、同じように彼に声援を送っていた仲間たちも、この知らせを聞いたのだろうか。
ブーっと低いバイブ音が鳴り響いたので「もし?」と取ってみれば相手は可愛い町田の後輩だった。
『……サンウルフズの件聞きましたか』
「ああ」
『いちラグビーファンの発言として聞いて欲しいんですけど、あんまりじゃないですか?』
錯綜する報道を見た限りではどうもサンウルフズとそのファンや選手の扱いはあまりにもなおざりなもので、純粋にラグビーが好きであるこの後輩の姿を知るものとしてはその気持ちには深く同情した。
(あの子もシンガポールの空の下で聞いているだろうか)
自分達にとってあの子は可愛い最年少のようなものだったし、それを抜きでも実に魅力的で素直に応援したいと思えるチームでもあったのだ。
あの子は代表強化の道具でもお荷物でもないプロ意識をはっきり持つ魅力的なチームだということを分かって貰えなかったのがあの子の唯一にして最大の不幸だったのかもしれなかった。
『こんなの、あんまりだ』
「……ああ」




事務機ダービーに自分の心情代弁してもらったみたいな感じで申し訳ないんですけど許してくれ、これだけはまだ消化し切れてないんだ……

拍手

PR

春めく日々に

*小ネタです




・希望の花咲く日(シーウェイブス)
東では春の足音響く季節になっても未だこの街は冬の色が抜け切らない。
そんな今日この頃であっても、間違いなく春は近づいている。
自転車を漕いでスタジアムへ行った帰り道、真新しい駅舎に佇んでいると遠くから警笛の音が響く。
「……もうすぐだなあ」
あの日閉ざされた鉄路は再びつながり、釜石の街からこのスタジアムまでが結ばれる日はもうすぐだ。

・変わりゆく明日(ブレイブルーパス)
久しぶりに本社の方へ行ったので、帰り道に国立競技場へ寄り道した。
「国立競技場もう結構出来上がってるな」
ポケットから携帯を引っぱり出してサンゴリアスに写真を送るが返事はない。まだ仕事中なんだろう。
半年後のワールドカップと一年後のオリンピックを控え、ちょっと来ない間に東京も様変わりしてしまうものだとこういう時つくづく思い知らされる。
(そういや、秩父宮も建て替え決まったんだよなあ)
秩父宮の建て替え開始はオリンピック後だから2020年シーズンが最後の秩父宮での試合になる。
時代は巡り、街は変わる。みんなも変わってしまう。
それを見守ることを春風の中で噛み締めた、午後の日。

・出会いも別れも(レッドスパークス+キューデンヴォルクス+ブルース)
「ぞれ゙で゙も゙寂゙じい゙も゙の゙ば寂゙じい゙ん゙で゙ずヨ゙~゙~゙~゙~゙~゙~゙!゙!゙!゙!゙!゙!゙」
ぐずぐずと泣き喚くレッドスパークスをキューデン先輩がよしよしと慰める。
降格が決まったレッドスパークスはこの春、主力が退団していきそれがよほど寂しいようだった。
「すぐ再昇格すればいいだけの事だろ?」
「うう……」
ぐずぐずと泣き喚くのを慰める先輩の人柄の良さと言ったら本当に神の所業である。
「……寂しいのはお前だけじゃなか、」
「ブルース?」
「早よトップリーグば戻ってきんしゃい」
寂しいのは、お前だけじゃないのだ。

・何度でも逢いたい人(スティーラーズ+シーウェイブス)
「6月、こっち(神戸)でのレジェンドマッチ決まったで」
電話越しにそう伝えると『去年の夏にもやったのに?』なんて意地の悪いことを言う。
「ええやん、神戸来てくれたらええプリン奢ったるから」
『……プリンで釣れると思うなよ?』
「でも会場でプリン配ったりするぐらいには好きやろ?」
『スポンサーだからな』
「ついでに去年優勝チームのプレシーズンマッチもつくんやで?」
お徳やんと言ってやればお前なあと呆れたようなため息が漏れる。
今は生きてる世界が違えど、同じものを見て味わってきたお前が特別な相手であることを早く自覚して欲しい。
「とにかく、6月16日にノエビアでな」

・3月16日(サンウルフズ+シーウェイブス)
春の日差し降り注ぐ秩父宮にビックユニフォームが設置され、サポーターは思い思いに言葉を描き込んでいく。
「ヒトコミュニケーションズサンウルフズ、か?」
「はい」
「こうしてちゃんと会うのは初めてだな、釜石シーウェイブスだ」
ラグビー選手としては小柄なその人は年下の僕への手土産を手に挨拶にやってきた。
そう言えば今日の試合は釜石復興関連のイベントも同時開催だったことを思い出し、このところの報道で少々ナーバスになっていたことに気付かされた。
「ビックユニフォームのコメント、良いものばかりだった。よく愛されてると実感できたよ」
「……ありがとうございます」
「これだけ愛されていて、なおかつ今日の試合に勝てればSANZAARも方針変えるかもしれないな」
その言葉は絵空事のように空疎に響いたけれど、いまはただ希望を信じるしかない。
辛くて痛くて苦しくとも前に進む、それがラガーマンだから。

拍手

春めく日々の一コマ

*小ネタ集です


・お引越し
「あんた、ほんとに熊谷に来るの?」
「いちおうね」
アルカス熊谷はその返事を聞いて実に不愉快そうに表情を小さくゆがめた。
「引っ越すにしてもまだ場所探しとか打ち合わせとかあるからだいぶ先だけど」
「あんたがほんとにお隣さんになるとか地味に嫌ね」
「一緒に熊谷をラグビーで盛り上げる人出が増えたぐらいに思えばいいでしょ」

・出会いの春に
金曜日の昼下がり、僕の妹分になるであろう子が見つかったという連絡を受けて定時明けに足早に尋ねに行くことにした。
「……この子が、アザレアスポーツクラブ?」
つつじの花のごとき淡いピンクの髪によく馴染む桜色の頬をした3つか4つばかりの幼い少女はすうすうと小さな寝息を立てて眠っている。
この子がこれから健やかに伸びてこの街でラグビーボールを追いかける仲間になるのだ。
「よろしくね、アザレア」
仲間の増えた喜びを込めて僕は小さくその頬を撫でたのだった。

・冬の終わり、別れの日
シーズンが終われば俺の元を去る仲間たちについての仕事が増える。
「今年の退任者は八人か」
ふうっと小さくため息を吐きながらも、きょう退任を発表した監督の事はやはりどうしても気にかかった。
まだあの人は若い。退任の理由は平成の最後に優勝を逃したと言う事実の重さなのか、それとも違う理由があるのかは分からないが人は来ては去っていく。
去っていく選手たちや過去に固執すれば重荷になるばかりだ。
「……今年は何人来るかな」
気分を切り替えるように退任者のリストを閉じると、次に来るシーズンのことだけを考えた。

・狼は太陽に吠える
スーパーラグビーの季節は春と共に南半球からやってくる。
シンガポールでの初戦の敗北は手痛いけれど、明日に控える国内初戦の準備は捗っている。
(……大丈夫、勝つぞ)
トップリーグのチームたちの上に自分は立っている。
姿かたちこそ幼くも自分は日本代表を支える柱なのだ。
晩冬の東京の陽の下で美しい勝利の星を掲げる準備なら、もうできている。

拍手

夜更けには酒瓶を

「やっぱフィジカルで押されると辛いよなあ」
テレビを消したサンゴリアスが深い溜息を吐きながら何杯目かのコークハイを飲み干した。
試合を見ながら飲んでいたウィスキー瓶はもう底を突きかけていて、最後のウィスキーをグラスに注ぐと炭酸水で割って飲み始めた。
「まあそればっかりはね。今日の試合はミスも多かったし、次の国内開幕戦に不安を残した感じはあるよね」
スーパーラグビー2019年開幕戦を日本代表が黒星で飾るまでをテレビで見るのは中々つらいが、さすがに仕事を放り投げてシンガポールくんだりまで行けないのだからしょうがない。
でも現地に行ってあの試合を見るのも悔しい気もするので悩ましい。
「ほんと今回の試合は見ててしんどかった……」
「ボロボロの試合ははたから見てるより自分でする方が気楽ってのはあるね」
「ホント連係ミスの多さがなあ、後半のシンビン(※選手にイエローカードが出て10分間退場になること)も痛かったし」
「でもスクラムの組み方変えたのと、スーパーラグビー経験浅めの選手が多かったからそれも大きかったのかもね」
「あー、それはあるかも」
モリモリ食べてぐびぐびと酒を飲み干すさまを見ながら今日の試合のクダを巻く。
それもまたラグビーを見る楽しみであるのかもしれない。
「ぼちぼち仮眠取ろうかな」
「仮眠?」
「2時からフランスリーグ見たいから」
「ああそっか、じゃあ俺もそうする」
携帯のタイマーをセットして仮眠の準備を始めたサンゴリアスに合わせ、俺も仮眠用の布団を引っぱり出す。
まだまだラグビーと酒の夜は終わらない。




ブレイブルーパスとサンゴリアス。スーパーラグビー開幕戦、残念でしたね……

拍手

22度目の冬

最後のホーンが鳴って勝利が決した時、こんな思いで聞くホーンは何年振りだろうと思った。
1998年以来21年ぶりのタイトル獲得であると気づいて長かったと思い知らされる。
「サンゴリアス、」
「日本選手権獲り逃したからカップ戦こそは!って思ったのになあ」
「悪いな」
「別にいいよ、優勝おめでとう」
祝福の握手が差し伸べられ、軽く握り返す。
厚く硬い掌はラグビーをやるものにのみ与えられたラガーマンの手をしている。
「あと、どこか美味しいお土産を買えるところ知らないか?渋谷か品川辺りで」
「普通に東京バナ○とかで良くない?」
「……シャトルズへの手土産なんだ、酒が良い」
少し前に降格の憂き目に遭って未だ薄暗さが拭いきれない片割れの名前を出すと、妙に納得したようになるほどねと小さく呟いた。
「なら品川の駅から少し離れたところに東京産の日本酒扱ってる酒屋があるよ」
「そうか、あとで地図送ってくれるか?」
「はいはい」
じゃあねと言って去っていく去っていく背中を見ていると、ふと思い出したようにサンゴリアスが立ち止まった。
「……ああそうだ、

来シーズンこそはタイトル獲るから」

若者の目は次の情熱と野望に燃え、その目の美しさに笑ってしまう。
「望むところだ」


ヴェルブリッツとサンゴリアス。カップ戦優勝おめでとうございます!

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ