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コーギーとお昼寝

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雪かき後のラーメン

「この雪はヤバいね」
グリーンロケッツが驚きを込めてそう呟く。
今週は雪が多くて何度か雪かきに行ったが、もう大丈夫だと思っていた。
しかし今目の前のスタジアムは昨日になって降った雪がスタジアムを白く覆い尽していた。
「だから手伝いに来たんだけどな」
製鉄所さんがプラスチック製の雪かき大きいスコップを手に後ろから出てきた。
「お疲れ様です」
「別にいいさ、試合がやれるならこれくらい大した労力じゃない」
そう言って雪かきのスコップをグリーンロケッツに手渡してくる。
一応自分も雪かきやるように持ってきてたのだが、流石にグリーンロケッツの分までないので多めに持ってきてくれたのは助かった。
早速雪かきのためグラウンドに入ると、うちの関係者やファンでは無さそうな人もちらほらスコップ片手に雪かきに励んでいる。
「あ、うちのサポさんも来てるね」
「前日入りしてくれた人が雪かき来てくれてるのか」
「まあ前日入りしたのに見れなかったら悔しいもんねえ」
そう呟きつつ雪をグラウンドからかきだし、地面が凍ってないかを足先で確認してみる。
(……まずいな)
ちょっと試合をやるにはグラウンドの状況が良くない。
「にしても本当にここは雪国なんだねえ」
グリーンロケッツがそんなことを言うが「雪国ってほどじゃないぞ」と製鉄所さんが言い返す。
雪の降らないところからすればこれだけでも雪国なのだろうが、もっと降るところを知ってるのでうちは感覚的には雪国ではない。
この辺の感じ方はブルーレヴズとも話してて感じることではあるので何も言うまい。
「シーウェイブス、試合出来そうか?」
「他の人達とも話さないと分からないですけど、ちょっと厳しいですかね」
体感的な意見を告げると、3時間後には正式に開催不可が決定した。

*****

試合出来無い事への詫びを入れ、ファンとのグリーティング終えると、もう時刻はお昼過ぎだった。
雪かきで温まった身体も芯まで冷え切って、汗が冬の冷風で体を冷やしてくる。
「シーウェイブス、グリーンロケッツ。飯食いに行こう」
製鉄所さんがそう誘ってくれたので一度昼飯を食いにスタジアムを離れる事になった。
スタジアム周辺には食事できるところが少ないし、来てくれたキッチンカーはまだ忙しそうなので控えたのだ。
車で10分ほど走らせた場所は小さなラーメン屋。
製鉄所さんの奢りと聞くとグリーンロケッツは嬉々として大盛りのチャーシューメンに餃子とチャーハンを注文してくる。
「元気だな……」
「試合出来なかったから美味しいものを楽しもうかと思って。これでもお酒は自粛したんだよ?」
グリーンロケッツはあくまで前向きである。
(こう言う前向きさを見習わんとなあ)
「シーウェイブスはどうする?」
「じゃあ、チャーシューメンに味玉追加で」


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シーウェイブスとグリーンロケッツと釜石。
雪で試合中止になったけどせめて釜石を楽しんでいってね……と言う気持ちを込めて

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きみと手で話そう

ブラックラムズがいきなり『今夜テレビ通話出来ないか?』と言う連絡が来た。
何故テレビ通話?と思いつつもまあ夜ならいいかと思って応じたら、想定外の相談が来た。
「急で悪いが手話の練習が必要になったから付き合ってくれないか」
「手話?別にいいけど、俺もそんなに詳しくはないよ?」
俺と付き合いのあるスタッフさんでデフラグビー(聴覚障害者のラグビー)の選手がいて、基本的な挨拶やラグビーに関するものくらいなら覚えたのだが何故そんなことを知ってるんだか……。
「付き合って呉れそうな奴を探していたら、前にワイルドナイツが応援手話動画を作っていたのを思い出してな」
「ああ、前にインスタにあげたあの動画ね。でもなんで手話が必要に?」
「区の手話言語条例のPR動画を作る事になってな、あとで必要になる可能性もあるから挨拶程度は覚えておこうかと」
「なるほどね。でも俺も専門家じゃないし、参考文献とか動画送るぐらいしかできないけどいい?」
「ついでに練習に付き合って呉れると助かる」
俺も手話は本当に最低限だし、普段使う機会が少ないので復習にもなる。
夜に少し練習に付き合うぐらいなら何の問題もない。
「まあ、それぐらいならいいよ」

―5日後―
自らを指さしながら「私は」
左手で頭から耳の下あたりまでを撫で「ブラック」
耳の横を指でグルグルと渦を巻いて「ラムズ」
親指と人差し指を立てながら上に突き出して「東京、です」
「……うん、それで大丈夫だと思う」
開いた左手を左胸から右胸に移動させて大丈夫という手話で伝える。 表情でニュアンスが変わるけどブラックラムズには問題なく伝わるようだ。
「ありがとう」
左手の甲に向けて右手で手刀を切るのはありがとうの手話だ。
「じゃあ、またな」
ブラックラムズが手を振るとテレビ通話が途切れる。
ちょっと出来ることが増えると世界が広がる事を感じたブラックラムズの表情は、どこか楽しげだった。



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ワイルドナイツとブラックラムズ。
作中に出てきた野武士の手話動画はこれで 黒羊先輩の動画はこれ

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朝日の海を見に行こう

まだ寝静まる朝6時前、ふと思い立って外に出てみることにした。
私服に着替えてランニングシューズを履き、ワイヤレスイヤホンでこの街を代表する歌手の曲を流し、走って海を見てきますとスタッフにメッセージを送る。
(みんなに心配させちゃいけないもんね)
ホテルを出てみるとまだ日の出前の薄暗い町は人も少なくて走りやすい。
目的地までの道順はあえて確認していない。
道案内の看板を見つつとりあえずこっちかなーなんていう適当な直観で知らない街をあてどなく走るのだ。
朝いちばんの路面電車がちんちんと軽快な音を鳴らしながら走っているのは我孫子では見ない景色だ。
(写真撮っとこ)
姉ちゃんとの話のタネに撮った路面電車はナポリ推しだった。なんでナポリなんだろ?
よく見るとこの通りもナポリ通りだ。ナポリとなんかあるのかな。
やがて大きな川にかかる橋を越え、フェリーターミナルの文字が見える。
フェリーターミナルなら近くに公園とかあるだろうし最終目的地はそこにしようか。
でもちょっと遠回りして向かってみよう。
電停に止まっていた路面電車を追いかけるように走れば、そこは町の中心的繁華街だ。
この時間はコンビニぐらいしか空いてないのが残念だけど雰囲気は朝でもなんとなくわかる。
(あ、このまま路面電車を追いかければフェリーターミナルだけど曲がればお城見れるんだ?)
せっかくだしお城も見に行こう。 ち
ょっと寄り道がてら寄り道してみるが、お城の入り口は空いてなかった。まだ6時半過ぎだものねえ。 と
りあえずこの太い通りを走ってみれば、テレビで見たことある銅像や立派な建物が目についた。
しかもここ、国道だけあって歩道も太くて走りやすい。
そうこうしてると交差点でフェリーターミナルの文字が出てきた。
最後のひとっ走りと走ってみれば海の匂いが近づいてくる。
(あ、見えた)
海の向こうに桜島がそそり立つ。
ブレイブルーパスが頻繁に霧島で合宿するのはこの景色が気に入ってるからだ、と言うのも分かる気がする。
フェリーターミナルの中に入ると20分後にはフェリーが出て、海の上から桜島と朝日が見られるという。
(んー……戻りが大変そうだし良いか)
結局ターミナル内のコンビニでお茶とおにぎりを買い、海辺の公園に足湯があるというのでそこで食べることにした。
冬の朝の足湯が汗ばんだ足裏を流し、温泉水で濡らしたハンカチで首や胸元を軽く拭う。

(ああ、日が昇る)

ゆっくり桜島の向こう側から朝日が昇ってくる。
スマホから流している曲が朝日の染まる錦江湾と桜島のBGMみたいだ。
姉ちゃんやスピアーズやDロックスにもこの景色を見せてあげたくなって、俺はその景色を写真に収めた。


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緑ロケちゃんと鹿児島の朝。
ギリギリまで固有地名を出さないチャレンジしてました()
鹿児島中央から天文館・国道10号の西郷さん像経由で走るルートを想像しつつ、長渕剛の桜島を聞いてました。

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丸の内にて

本社への挨拶を終えてから、少し時間に余裕があったので少し散歩に行くことにした。
丸の内のどこだったかに日本代表の銅像や手形があるというのでその実物を拝みに行こうと思い立ったのである。
丸の内に限った事じゃないが東京はいつどこに行っても人がいて忙しなく感じるのは自分が田舎者なせいだろう。
ふらふらとあてどなく歩いていると観光客が写真を撮るベンチに目が留まる。
「……これか」
ラグビーボール型の板に日本代表の手形が映され、それがベンチの彩りとなっている。
噂のシロモノをようやく見つけたので記念の写真を撮ってからふと思う。
「世が世ならうちの松尾さんとかの手形になってたのかもな」
ヴェルブリッツだとかブレイブルーパスだとかの古なじみたちの名前とともに刻まれた手形の中に、己の名がないのはシンプルに不甲斐なく思う。
同時に今与えられた条件で戦うとしても今より上に上がれないのではないか?という不安が胸をよぎった。
いや、そんな発想はいけない。自分の頬をぺちんと叩いて活を入れる。
そんな弱気でいたら自分は町の誇りでいられなくなってしまう。
「……明日、頑張ろう」
正直勝てる自信はない、というかDロックスには最近負けてばかりだ。
けれど奮戦することはできるし、奮戦する姿こそが自分があの町の誇りでいられた理由なのだ。
冬から春へと移ろう風のなかで自分を奮い立たせてもう一度歩き出した。



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海波さんの散歩道。
インスタ開いたら数日前の本社訪問の記事が目に入って、それでふと思いついたお話でした。

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苦い福豆

終わってから「やっぱりああするべきだったのかなあ」悔いてしまう。
クロスボーダーマッチの結果がひどく心に重くのしかかったまま最寄駅で降りると、携帯電話が着信を知らせてきた。
『もしもし?サンゴリアス今どこ?』
「京王府中だけど」
『じゃあ大国魂神社まで来れる?お前の分の福豆もらったんだよ。ほら、今日節分だからさ』
そう言われて初めて節分のことを思い出した俺は「わかった」と答えて電話を切る。
なんとなく重い足取りで呼ばれた通り大国魂神社へと足を伸ばすと、冬物のコートを着込んだ先輩が「暗い顔してるな」と声をかけてきた。
「試合見たんなら分かるでしょ」
「まあな、スタメンの時点で少し手を抜いたなって感じはしたし案の定というか」
「リーグ戦のこともあるからあんまり本気出し過ぎるのもなって思ってああしたけど、やっぱ負けると悔しくてさ」
まして今回俺の応援に来てくれた人達は本当に多く、その期待を裏切ってしまったような後悔が口の中で残っているのだ。
「やっぱり俺もちゃんとベスト揃えて本気で勝ちに行くべきだったかなぁって」
実際ワイルドナイツはかなり本気で勝ちに来ているし、あれを見てると妙な後悔と申し訳なさが少しだけあった。
「でもそれはお前が決めたんだろ。勝っても負けても、悔いても悔いなくても、それを選んだのはお前なんだからお前の責任だと思うよ」
「……うん」
「まあ俺もサンゴリアスと同じ立場だったら完全ベストで揃えられるかって言われると自信はないけどさ、それでも自分で選んだことだから仕方ないだろ」
先輩は慰めるように言って俺の手を取って連れてこられたのは大国魂神社の本殿、賽銭箱の前のお祈りスペースだった。
「その悔いを神様に洗いざらいぶちまけて、次を向いとけ。それを引きずったまま次の試合出られたら相手に失礼だろ」
先輩はもしかしかして最初からそのつもりで俺を大国魂神社まで連れてきたのだろうか?
「……うん。お賽銭ないけどいいかな」
「良いんじゃないか?」
手を合わせて思いの丈を吐き出す。
ここにいないはずの神様が聞いてくれるような気がして、ほんの少し気が晴れた。
「あとこれ、お前の分の福豆」
お参りの後先輩は袋入り大豆を俺に渡してくる。
袋には大国魂神社の名前が印字されておりほんとに福豆だと分かる。
「たぶんこれで足りるよな」
「うん、ありがとうね」
今日はこの苦い豆を噛み締めながら反省会だ。
次はもっと本気で頑張らなくちゃ、俺はみんなの前に立てなくなってしまうから。


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サンゴリアスとブレイブルーパス。
クロスボーダーマッチと節分のお話でした。

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