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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

君だけのいない庭

合宿地がジャパンベースになったのは偶然だった。
予算とか仕事の予定の都合を勘案したらここになったってだけのこと。
(でも、ここにレッドスパークスがおらんって不思議な感じするな)
かつてレッドスパークスの暮らしていた場所を協会が買い取って、合宿用施設に建て替えられてまだ半年ちょっと。
どこかの物陰を覗いたら『バレちゃったですネー』なんて笑ってそうな気がしてしまう。
それをブルースが『隠れきれとらんかったたい』なんて叱りつけて、それを自分がまーまーなんて言いながら二人を宥めるのだ。
ちょっと前までは日常的にあった光景は、もう見れない。
ここはもうレッドスパークスの家ではなくてラグビー協会運営の合宿施設なのだ。

「……ほんと、あいつら俺より先に死によってなあ」

普通なら年長の自分が先に死ぬべきだったろうに、自分よりも遥かに若かった二人はここを去ってしまった。
下手に何かを口走る程若くはない、だけど年長者としてそれくらいの文句は許されたっていいだろう。


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キューデンヴォルテクス先輩の話。
先輩が今日からジャパンベース合宿と聞いたら書かずにいられなくてだな……

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雨の日にはコーヒーを

秋雨の音で目を覚ますと、時刻はもう10時過ぎだった。
ワールドカップを見た後に寝たせいで起きるのが遅くなっても、今日は休日なので叱られる理由がないのは幸いだった。
いつものようにお湯を沸かし冷凍パンをトースターに入れて、今日の豆を選ぶ。
(……ブランビーズさんに貰った豆にするか)
この間の練習試合の時、お土産としてキャンベラで人気のコーヒー豆を貰った。
サンゴリアスも札幌での試合の時に同じようなものを貰っていたらしいので、きっと配っているのだろう。
一人前の豆を電動ミルで細引きにしているとポットのお湯が沸いた。
ステンレスのフィルターに粉を入れてお湯を注げばコーヒーの香りが湯気とともに立ち上る。
(此れのお陰で飲みたいときの手間が少し減ったな)
フィルターの在庫確認をしなくて済むようになったのが地味に大きい。
コーヒーが入った頃にはパンも焼けている。
焼きたてのパンには昨日の残りのトマトとレタスとチーズを挟み、ドライフルーツ入りヨーグルトの小鉢を合わせる。
ちょっと遅めの朝食にしては充分だろう。
「頂きます」
手を合わせてパンに手を伸ばす。うん、いつも通り美味い。
タブレットでニュースをザッピングしていると思い出すことがあった。
(そういえばライナーズ対レベルズ戦はどうなったんだったか)
ふと思い出して調べるとライナーズは負けていた。そういう事もあるか……。
しかしレベルズと楽しそうにしてるので慰めは不要そうだ。
他の面々もワールドカップ帰りの選手を出迎え、リーグ開幕の準備を進めている。
「我も頑張らねばな」
そう呟いてタブレットを閉じた。



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ブラックラムズ先輩の休日

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北の大地の散歩道

試合の遠征とはいえ、せっかく北海道まで来たので後泊して散歩しようと最初から決めていた。
(これで月曜仕事じゃなけりゃなあ~!)
有休使うって手もあったけど、貴重な有給はタイミングを見極めて使いたいと思って結局申請しなかった。
昨日は昼にラーメン、夜にサッポロビールからの締めパフェ。今朝はスープカレーを食べてとうきびをつまみ、お昼はジンギスカンと食いたいもの全部食ってきた(もちろん観光もした)
そうして札幌を満喫して、最後にやることと言えば。
「お土産だよなあ」
札幌遠征の話をしたら『うちの妹にお菓子買って来てくれないか?』って先輩に頼まれてたから部レイブルーパス先輩とうちの親兄弟の分は確定。
ブラックラムズ先輩にも釜石遠征行くって言うから瓶ドン頼んじゃったので買っていくべきだろう。
誰に何を買っていくか?と言うのは案外難しい。
「ブラックラムズ先輩はまあコーヒーに合わせるわけだし、ロイズかなあ」
ポテチにチョコをかけたやつをかご3つ放り込む。あ、2つはうちの家族の分ね。
あの人は食い物の嗜好が割とわかりやすくてコーヒーに合うものなら割と喜んでくれるんだよな。チョコとカレー系はコーヒーに合うしどこにでもある。
「問題は先輩なんだよなあ、先輩の妹さんとかよく知らんし……」
先輩には血の繋がりはないけど可愛がってる妹さんがいる。確かブレイブルーヴ、だっけ。
顔は合わせたことあるけどあんまり話したことはないんだよなぁ。
それに先輩って嗜好が酒と肉に寄ってて甘いものを自主的に食べる人でもないから、先輩の妹さんの嗜好が全く予想できないのだ。
うろうろとお土産物コーナーを見て回ると、サーモンチップスなるものが目につく。
「へえ、チップス状の鮭燻製……ワイルドナイツ好きそうだな」
先輩はつまみは最悪塩でいいって人だからつまみにこだわらないけど、ワイルドナイツは結構つまみ系が好きらしく飲みに来た時にちょっといい乾物とか出すと喜ぶんだよな。
誰かが飲みに来た時にさっと出せるおつまみにもなりそうだ。
「これも買ってこ……うん?」
先輩からラインの着信があって開いてみれば『お前に頼んだお土産の件だけど、うちの妹が食べたがってたお菓子分かった』と言い出した。
『教えて』
『ハスカップジュエリーってやつ』
『テレビで見たことある、売り切れてたらハスカップ系の別のやつでいい?』
『それで頼む、あと俺に酒を』
了解のスタンプを送ってから小さくため息が漏れた。
「……ここで自分のお土産は酒って指定するのが先輩だよなあ」
とりあえずサッポロクラシックと地ビールでいいかな。



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サンゴリアスの札幌遠征。お土産は大体実在してます。

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新しい名前

「またお前さんがうちの名前を背負う日が来るとはなあ」
釜石さんがしみじみとそう呟いた。
手元にはリーグに送る名称変更に関する書類で、最後の署名捺印を済ませれば東京に送るだけとなっている。
「まあそれもまた人生って奴なんでしょう」
捺印した書類を軽く乾かす間に次の書類に目を通す。
その書類は次シーズンで使う新チーム名が日本製鉄釜石シーウェイブスであることをほかのチームに告知するためのファックスである。
ここにも自分の署名を入れておけばいたずらではない事が伝わるはずだ。
「D2以外のチームにも告知するのか」
「10月以降にプレシーズンマッチやるとこだけですけどね」
「ああ、確かにそこんとこは伝えた方が良いか」
納得したようにつぶやくと乾いた書類を封筒に入れて糊付けしていく。
これが届けば正式な名称変更が完了となる。
「そうだ。リーグの方針無視して企業名入れるんですから、資金弾んでくださいね」
「お金のことはまだ八幡と相談中でなあ、ブレイザーズもお前さんと同じこと言ってるらしいから増やせる可能性はあるが」
「頼みますよ」


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海波さんと釜石。急なチーム名変更はちょっとビビった。

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それぞれのパブリックビューイング

*短編集です
*ワールドカップチリ戦パブリックビューイングの話

・釜石にて(シーウェイブスと釜石製鉄所)
4年前、この街にやってきたワールドカップの事を今も時々夢に見る。
目前で繰り広げられたワールドクラスの試合に心震わされたあの日がまたこの場所で再現されようとしている。
パブリックビューイングに合わせて行われるイベントの設営を終えると、パブリックビューイング用の画面のテストが始まる。
建物の壁をスクリーンにして試合を投影するので機械の調子を見る必要があるのだ。
「大きい画面だなあ」
そうつぶやいたのは釜石製鉄所その人であり、その首元には日本代表のタオルが巻かれている。
「目前で行われる試合の迫力には負けますけどね」
「でも、みんなで同じ試合を見る楽しさは味わえる」
4年前のようにみんなで集まって試合を見るのが、お互い楽しみなのだ。

・府中にて(サンゴリアス+ブレイブルーパス)
4年ぶりに味わう賑わいの中、先輩が「こっち!」と俺を呼ぶ。
「先輩また良い席確保して……とりあえずビールとおつまみ3つ買っといた」
「いくら?」
「おつまみは3つで1400円、ビールは800円。おつまみは俺ももらうから1200円で良いよ」
「100円玉ないから1500円あげよう、残りはお駄賃ってことで」
1000円札と500円玉を手渡されたので「ありがとう」と受け取った。
おつまみの冷やしきゅうりを齧りながら選手のトークショーに耳を傾けていると「4年なんてあっという間だよなあ」とつぶやく。
「ほんとにね、でもこの4年で色々変わりもしたじゃん」
「日本がティア1入りなんて想像出来なかったもんな」
先輩が実にしみじみとそう呟く。
この4年で日本ラグビーがどれだけ進んだかを、この大会で世界にみせつけるのだ。

・横浜にて(TKM+イーグルス+ダイナボアーズ)
「パブリックビューイングに来て欲しい」とイーグルスくんに頼まれた時、本当に私でいいのかしら?とすこし悩んだ。
確かに横浜市民として地域のパブリックビューイングに出ることには意義がある。
しかしイベント慣れしていない私が行って迷惑をかけないかという不安が付き纏っていたのだ。
けれどその気持ちはすぐに打ち消された。 2人はイベント運営に必要な指示を行政さんからすぐに貰って動いてくれ、私が迷わず動けるように支えてくれた。
「今日のイベントは思い切り楽しめそうね」
「当然です、パブリックビューイングって楽しいイベントですから」
ダイナボアーズさんが私たちの分のお茶のボトルを持ってきてくれる。
キックオフまで、あと10分。

・清水にて(レヴズ+アザレア)
前半終了が近づいた頃、隣に座るアザレアがうつらうつらとしているのに気づいた。 時計を見れば時刻は9時半を回っており、いつもなら眠りにいている頃合いだと気づく。
「アザレア、眠くない?」
「ねむくない……」
不機嫌そうに答えているのを見ると眠気と試合を見たい気持ちとでせめぎ合っているのを感じる。
寝させてしまうという手もあるけれど、まだ精神も肉体も幼いアザレアはむしろ意固地になって寝ない!と言い張る気がする。
「ねえ、アザレア。もう少ししたらハーフタイムに入るから眠気覚ましにお茶飲みに行こうか」
こんなに小さい子の夜ふかしなんて本当はよくないだろうけど、今日は特別。
2人でカフェインの入った静岡茶を飲んで眠気を覚ましたら後半の試合もアザレアと楽しめる。
「アザレアものむ」
その答えと同時に前半終了のブザーが鳴り響いた。


・東大阪にて(ライナーズ)
花園ラグビー場はもう夜の9時過ぎだと言うのににぎやかに華やいでいる。
キューデンヴォルテクスやレッドハリケーンズも呼んだけどあいつらは家でゆっくり見たい、と言うので今日は1人だ。
こうも賑やかな場所に1人だと何とも言えない寂しさが湧いてくる。
「小腹空いたわあ」
そう言ってもおやつをくれる奴はいない。
売店に足を向ければ大行列で、仕方なく並べば家族や友人と前半の試合内容を語らう人が多く見受けられる。
(……こう言う時、1人の寂しさが身につまされるわあ)

・姫路城にて(スティーラーズ)
試合終了直前、帰りの誘導のため椅子から立ち上がると夜の姫路城が目に入った。
試合前はそれどころじゃなくて気づけなかったがこのパブリックビューイング会場からはライトアップされた姫路城がよく見える。
(ライナーズとシーウェイブスにでも写真送ったろ)
写真を撮ってラインで送ろうとすると、ライナーズから『きょううちのマシレワがすごかったよな』と言うメッセージ。
『うちのぐーくんも頑張ったやろが!』
やっぱり姫路城の写真はシーウェイブスにだけ送ったろ。


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