*水戸とIHIと神戸製鋼のおはなし。
水戸から常磐線、新松戸から武蔵野線に乗り換える。
常磐から『駄目しの線には気ぃつけとけ』などと自分を棚に上げた忠告を受けたが、今日は快晴で遅延は無い。
京葉線直通の武蔵野線はするりと八丁堀の駅に着く。
そこから少し歩くと、懐かしい場所に突き当たる。
「懐かしいなぁ、石川島」
呟いた声は一人の耳の中でこだました。
石川島公園隅田川のせせらぎの音は初めてここを訪れた日と変わらない、静かな音だ。
東京や上野の喧騒に疲れると、ここへ良くサボりに来ていた。
まあアクセスの悪さは仕方ないけれど。
「水戸さん?」
「・・・・・神戸製鋼」
ふと足元から声をかけたワインレッドの瞳には覚えがあった。
「なんでこんな場所におるん」
「石川島に用があった訳ではないけど暇つぶしに」
「ふうん・・・・あの子に用があったんじゃ?」
神戸の言うあの子が誰なのかは容易に想像がついた。
100年近く昔、水戸藩がこの場所に作った造船所の血を引く黄金色の猫。
「IHIに会いたいわけじゃないよ、息抜き」
「わざわざこんな辺鄙な場所に来るんやし、よほどの用が無いと来ぉへんと思ってたんですけどねぇ」
いまだに何一つ変わらない隅田川の音。
「水戸」
「・・・・久しぶり、石川播磨」
こくりと黄金色の毛並みの猫はうなずいた。
「それじゃあこれから豊洲に戻るんで失礼しますね」
二匹の猫は連れ立って戻っていく。
きょうも石川島公園は平和だ。
一度書いておきたかった兵庫組(神戸とIHI)と水戸さん。
ただ石川島でだらだらさせたかっただけとも言う。
ちなみに水戸から公園に行こうとすると冒頭のルートで行くことになります。
宇都宮からだと上野で山手線に乗り換えて池袋、池袋から有楽町線かな。