ニュースに嫌気がさした日にはカモミールティーが効く。
釣り戸棚のお茶コーナーからハーブティーをいれたかごに手を伸ばそうとするも、微妙に手が届かない。
諦めて踏み台を取り出そうと背伸びを辞めると後ろから手が伸びた。
「姐さん、きょうはハーブティー飲まはるんですか」
「スティーラーズも飲む?」
「貰います」
ポットやティーカップを出してもらい、お湯を沸かす間部屋にはジムノペティを流して。
カモミールティーはぬるめに淹れておく。
マグカップに注いだものとティーカップに注いだものを作って、マグカップのほうを渡しておく。
「はい、スティーラーズの分」
「助かります」
ちびちびと飲みながら心のよどみを吐き捨てるように深く息を吐く。
「……長く生きてるとこういう事ばかり上達してくわね」
「それが長く生きる事なんやないんですか」
お茶に再び口をつけて、ジムノペティに耳を澄ませる。
げんなりする現実と折り合いをつけていかなくちゃいけない。
神様とは名ばかりの何の力もない私たちは無力だし、ただ人間社会に寄り添って傍観するだけの存在にすぎない。
なのになぜ私たちには人と同じ心と体を持つのだろう。
刺されても撃たれても死ぬことを知らず、製鉄所という存在とともに生まれて死んでいく。
その癖死ぬことが誰よりも怖い臆病な自分がいる。
(こんなこと考えてたって何の答えも出ないのにね)
それは私自身がよく知っている。折に触れて自問自答してきた問いはいまも答えが出ないままだ。
……こういう時は頭を切り替えよう。
「スティーラーズ、」
「はい?」
「あなたがやってるパブリックビューイングって明日の試合でもやるんだっけ?」
「明日はないですね」
「じゃあ二人で現地観戦行きましょうか、私仕事休むから」
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神戸ネキとスティーラーズ