キックオフ10分前に滑り込んだ秩父宮立見席の最前列にはいつもの顔なじみがビール片手に俺を待っていた。
「ずいぶんギリギリに来たな」
駆けつけいっぱいの冷たいビールをサンゴリアスから受け取って飲み干す。
「っはー……」
「今日は随分と遅い到着だったな」
珍しく紅白に包まれたブラックラムズ先輩の問いかけには「午前中仕事だったもので」と返す。
「土曜日だと云うのに一苦労だな」
「優勝記念イベントが重なったもんで」
地元のお菓子屋さんからいただいた生サブレを二人に渡すと、これまでずっとカメラ小僧だったイーグルスがふと顔をあげた。
「あ、ワイルドナイツさん」
「ちょっと写真見せて」「どうぞ」
生サブレと引き換えに写真を見せてもらう。
うちの選手たちの練習の様子を写真で見た限りでは好調そうだ。
「国内戦が終わったと思ったらすぐ代表戦で心配だったけど調子良さそうだね」
「気になることがあるとすればこの湿気ですよね、雨降らないといいんですけど」
「天気予報だと降らないって話だったし大丈夫だと思うけどな」
冷えたワインとカリーヴルストをつまみながらサンゴリアスが言う。
選手入場を眺めながら思うのは一つだけ。
「今日は勝ちたいよね」
「一戦目だもんな」
カリーヴルストをぱくりと口に放り込むと、梅雨の湿った風の向こうから試合開始のカウントダウンが始まった。
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ワイルドナイツとサンゴリアスとイーグルスとブラックラムズ。
昨日の試合良かったね……