熊谷に引っ越して迎える夏はやはり過酷だった。
「これ、一歩間違えたら死ぬんじゃない?」
「夏だからね」
まだ朝の9時だというのに30度超えの外気温のなか、ストレッチの時点で汗がダラダラと吹きだしてくる。
「夏ってこんな死と隣り合わせだっけ?」
「そういうもんでしょ」
根っからの熊谷人だからなのか、それとも昭和の夏を知らずにいるからなのか、アルカスはそういうものだという口ぶりだった。
さっさと日陰に逃げ込んで出ていった分の水分を補いつつ、改めてグラウンドを見返す。
広く青い芝生に面した俺のクラブハウスにアルカスのいる管理棟。
そのはす向かいにはカフェやショップ、そして大きなホテル。
「つくづく、良いもん貰ったな」
「ホントにね。あんたのおこぼれとはいえ私も助かってるしね」
「そりゃよかった」
そんなことを話しつつ水分を取り体を冷やしていると、アルカスが思い出したように口を開く。
「……今度ホテルのほうでビアガーデンやるんだって」
「ビアガーデン?」
「そう、オープンは1日なんだけどその前に練習も兼ねてプレオープンやるから来ないかって支配人が」
「初耳なんだけど」
「今思い出したから、明日一緒に飲みに行く?」
「奢り?」「奢りというかただ酒」「じゃあ行く」
熊谷の暑い夏の夜に冷たいビール。
想像しただけでなかなかおいしそうだ。
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ワイルドナイツとアルカス。
ビアガーデンで思い付いたネタでした。