カレンダーを見て、ああそういえば今日だったと思いだす。
年度初めの忙しさにかまけて大事なこどもの二度目の誕生日を忘れるとはなあ、と思う。
「八幡はいつも覚えててすごいよなあ」
「手帳に書いてあるので」
久し振りに東京の本社でふたり、机を並べてそんな話をしている。
「今日何かありましたっけ」
「シーウェイブスの2度目の誕生日が今日でな」
去年はどうしただろうかと記憶を掘り返すと、ラーメンを奢ったなと思い出す。
「よく覚えてますね」
「お前さんはいっぱいいるからなあ」
八幡のところには部活が結構あるのでいちいち覚えてられないのだろう。
ただうち、というか釜石という土地にとってシーウェイブスは特別な存在だった。
一万人以上の署名活動によって生き延びた愛し子にとって今日は新しく生まれなおした日なのだ。
「ただいまー、とりあえず適当に買ってきたよー」
室蘭が弁当の入った袋を下げて戻ってきた。
「おかえり、遅かったな」
「大丸行ったからねー。あ、叙〇苑弁当俺のだからね」
「別にコンビニでも良かったんだけどな」
専門店のおにぎりとお茶を受け取ってパクリとかじる。
そうか、帰りに東京駅の中でシーウェイブスにプリンを買って行こう。
あいつの好物であるちょっといいプリンを誕生日お祝いに持って行けば喜んでくれるだろう。
ひと仕事落ち着いたら調べてみようと思いながらおにぎりをもうひとくちかじると、中からから揚げが出てきて思わずほくそ笑んだ。
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釜石と八幡と室蘭。