「と、いう訳でとりあえず乾杯!」
高々と掲げられたビールジョッキをカチンと鳴らして冷たいビールを一気に流し込む。
リーグワンアワードに合わせてお疲れ様会をしようと提案し、今日は有休をとって皆で飲み会となった。
来れないメンツははオンライン参加だがやはりその手には冷えたビールやジュースが握られている。
「にしてもまさか日比谷のミッドタウンで飲み会とはなあ」
サンゴリアスが感嘆の声をあげながらそんなことを言う。
この一室はパナソニックスポーツ本社の一番大きな会議室であり、そこを半日ほど俺が貸し切って行っている。
「これぐらいの役得がないとあの人たちの下なんてやってらんないよ」
「……お前いつか怒られるぞ」
「こんなことたまにしかしないよ」
そう言いながらサンゴリアスが作ったチャーシューを一口かじる。
「サンゴリアスは若いなあ」
スティーラーズ先輩が呆れ気味にそう笑いながら横からチャーシューを一枚攫って行く。
「ええか、社会人も半世紀やっとると嫌なことは手ぇ抜いたりせなやっていかれへんねんで」
「ラグビーには手を抜かないのに?」
「俺らは本業がラグビーやからバランスとらないけんのよ、それに意外とこいつ事務仕事好きやないからな」
事務仕事が嫌いというのは人に明かした覚えはないのに何で知ってるんだこの人。
実際、新会社での仕事もやるにはやったがそんなに好きではないのも事実だ。
ふうん、とサンゴリアスが呟きながら酒を飲む。
「ほな、来年は優勝俺に譲ってやー」
「「譲りません!」」
シンクロした台詞にお互い目を見張り、そして笑ってしまう。
「相変わらず仲が良いな」
ブラックラムズが面白がるようにそう告げてくる。
「偶然ですよ」
「あ、それ泡盛コーヒー!」
「良いのが手に入ってな。飲んだ事無いだろうと思って購入しておいた」
俺の優勝祝いだというコーヒー泡盛の瓶がポンと俺の横に置かれる。
「ストレートで飲むんですかこれ」
「其の辺は好みだな、割るなら豆乳がお勧めだ」
見慣れない酒なのでサンゴリアスにいいつまみを用意してもらう事にしよう。
「リーグワンアワード始まりますよ!」
イーグルスの声がテレビのほうから響く。
俺が飲んでいる間に機材を全部セッティングしておいてくれていたらしい。
「今シーズンも終わるね」
その最後の記念式典が画面越しに華やかに始まった。
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ワイルドナイツと愉快な仲間たち。