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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ビール、折り詰め寿司、ラグビー中継

「悪いがテレビ見てもいいか?」
「いいですけどどうかしましたか」
久しぶりに釜石が我が家に来た土曜日の夜更け、釜石はリモコンを借りると問答無用でBSをつけてラグビー中継が流れ出す。
「昼間じゃないんですね」
「たまにそういう事もある」
キックオフの笛が鳴れば釜石の視線はラグビーにくぎ付けとなり、もはや他のものは眼中にない。
私はちびちびとビールを飲みながら折り詰めのお寿司を口に運び試合の展開に一喜一憂するばかりのその人を見つめていた。
(……うちの業界ラグビー好き多いですよねえ)
釜石と言い神戸と言いどうもごつい男が好きな奴が多すぎる。
そう言えば呉も昔はかなりラグビーが好きだったが、最近はカープの方に乗り換えたようで一時期ほどは言わなくなったなとぼんやり考える。
「またノックオンか、今日はミスが多いな……」
ぶつぶつと試合を分析しだした釜石に私はもう何も言わないことにした。
ここに神戸がいたらもっとうるさかっただろうが不在なので静かに飲める。
「釜石、」
そう声をかけても釜石の視線はテレビから動かない。
ふとその手にあるビールグラスが空になっていることに気付き、そっと新しいビールを注いでおけば、無言でビールに口をつける。
まだ試合は前半20分ほど、あと1時間はこのままかと思うとなんだかため息が漏れてしまう。
(まあ、しょうがないですかね)
適当に酒でも飲みながら釜石が飽きるのを待つばかりだ。




八幡と釜石とラグビーの夕べ。

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もしも僕らに母が在るのならば

「釜石さん、今年もお荷物届きましたよ」
「ああ、すまないな」
今年は一輪のカーネーションの造花と共に小さいわりにずしりと重い箱が二つ、中身は酒だろうかと推測してみる。
母の日になるとカーネーションと共に荷物が名古屋と大分から届くようになったのはいつの頃だっただろう?
新日鉄内部で釜石を指して母なる製鉄所という呼び方が普及してきたころからだっただろうか。
小さな紙袋と一緒にカーネーションを一緒に渡してきた名古屋と大分に首を傾げた日のことを思い出す。
『はい、』
『釜石さんへのプレゼントです』
『……誕生日プレゼントにしちゃあ時期が違うが』
『大分君の発案で母の日のプレゼントを用意してみたんです』
名古屋がにこやかにそんなことを言って来る。
『なあ、大分わし一応男神なんじゃが』
『でも、新日鉄における『母なる製鉄所』だから』
『最近社内で釜石さんの事そう呼ぶ人が結構いるんですよ』
『……そう言う事か』
理屈はなんとなく分かったし、プレゼントに罪は無いからと受け取ったのを思い出す。
これ以降数年置きではあるが母の日になるとプレゼントが届くようになってきた、間が開くのは恐らく発案者である大分の気が向いた年に名古屋と共同で行っているからなのだろう。
(……まあ、設立経緯的にも親みたいなもんだがなあ)
名古屋は自分の規模縮小に伴って多くの人員を移したのだから息子のようなものであるし、大分も富士製鉄と呼ばれながらその設置に深く関わった場所だ。
ただ、年齢的には息子というよりも孫に近いので冗談であっても母と呼ばれるのは面はゆいような心地がした。


(もし、自分にも母が在るのならばどんな人だったのだろうな)

カーネーションの造花を窓辺の空き瓶に刺し、ふと初夏の空を見て考えた。


釜石と名古屋と大分。
完全に時季外れの母の日ネタですが、釜石が母なる製鉄所と呼ばれてるのに燃えたんですよ……。

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愛はそこにある

釜石は泊まりに来た客人に服を貸すとき、だいたいシーウェイブスのユニを貸してくる。
隙間なくびっちりと広告で埋められたそれは釜石にとって特別な意味を持つものでもあった。
「……過去のユニフォームよくこれだけ残してますよね」
「捨てられる訳が無かろう?」
最愛のシーウェイブス、彼の夢であり誇りである青年の足跡を釜石は一つとして手放そうとしない。それが釜石の愛情であるからだ。

「もう一度あいつを応援しに日本選手権を見にいくのが夢だからな」

釜石の愛情は、愚直でどこまでも真っすぐだ。


八幡から見た釜石おじじの愛情の話

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ぼくらは地獄を裸足で行く

『此花には怒られるんだろうなあ』
あの日、和歌山がそんなことを言っていたのを思い出す。
新日鉄との合併話が初めて世間に取り沙汰された日のことだ。
『怒るだろうなあ』
ぽつりと俺が返すと『だよねえ』と困ったような寂しいような苦笑いをこぼしてきた。
そんな事をなぜ今思い出したのだろうと重い身体を起こしながら考える。
「あ、おはよう海南」
「……ん」
壁時計を見るともう午後だ。昼飯どきは過ぎたがおやつ時には少し早い午後2時過ぎ。
しかしお腹は空っぽで何か食べたいような気はしていた。
「とりあえず焼きそば作ったけど食べる?」
「食べる」
のろのろと食卓に腰を下ろすと麦茶と焼きそばが目の前に置かれた。
「ああ、そう言えば今日久しぶりに此花に会ったよ」
その言葉で今日は和歌山が大阪へ行く日だったことを思い出した。
半月ほど前に新日鉄住金の社名変更が世間に知らされてから和歌山と此花が顔を合わせるのは今日が初めてだった。
「そうか、」
「……なにも無かったけど、発表直後だったら俺ぶん殴られてたかもね」
「ぶん殴られたらちゃんと傷冷やしといてやるから安心しろよ」
「うん、」
「此花の事をかわりにどやしてやってもいい」
腐っても和歌山は俺の大事な男なのだ、それを傷つけられて大人しくいられるほど俺は丸い性格はしていない。
「俺は一緒にいてやるから」
もしもこの身に死後があるのなら、地獄でデートしてやろう。



和歌山と海南が男夫婦してる話。

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お風呂の話

「広い風呂っていいよなあ」
佐賀関がやけにリラックスした声色で俺の隣でお湯につかる。
ここはうち(大分製鉄所)の職員向けのお風呂なのだが、諸々あって今日は俺と佐賀関の貸し切りになっている。
「……人んちのお風呂でリラックスしすぎじゃない?」
「でかい風呂に罪はないんだよ」
仕事する男の武骨な手が俺を軽く撫でてきた。
微かに潮の匂いがするのは日がな一日中釣りばかりしてるからに違いない。
「大分、お前ホンット顔がやわらけーよなぁ」
「それ褒めてるの?」
「褒めてるよ」
佐賀関はいつも俺を可愛がってくれている。
八幡のビジネスライクな扱い(まあ八幡は釜石以外にはわりとドライだけど)や、光の兄扱いや釜石の孫扱いとはちょっと違う、近所の犬を可愛がるような感じが俺は不思議と嫌いじゃなかった。
「風呂出たらビール飲んで昼寝するか」
「仕事しなくていいの?」
「午前中したから良いんだよ、お前が仕事あるならうちで寝るけど」
「いいよ、俺も飲む」



大分と佐賀関。昼風呂からの昼酒とか言う堕落。

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