「なんか結城んち久々だな」
下舘のつぶやきは正しい。
最近、結城があまり人を家に招いていないのは事実だ。
今日は茨城県西にスポットを当てたフリーペーパー・にしもの創刊を祝っての集会だった。
「私の家に自由に出入りしていいのは小山さんだけですから、あと人んちの戸棚勝手に開けないでください」
「何気に小山の私物が戸棚一つ埋め尽くしてるとか完全にストーカーじゃねぇか」
ダメだこいつ末期だ。
分かっている公然の事実とはいえ、末期ぶりが加速している気がして溜息しか出ない。
「ストーカーじゃないですよ、裁縫頼まれたんで預かってるのといつでも泊りに来れるようにです」
「実際に小山が泊まりに来たことあるのか?」
「今年に入ってからはないですけど年1ぐらいでありますよ」
「置いとく必要まるで無ぇな」
とりあえず戸棚は見なかった事にしよう。そうしよう。
***
結城の家の広間には結構な人数が集まっていた。
下舘と筑西、桜川、下妻、古河、今日は珍しく境町と五霞と坂東もいる。
「なんか五霞がいるのがすげー違和感」
「同感だね」
「マヨネーズぶちまけますよ下舘」
「……落ち着け、だから幸手ににげ「それ以上言うと僕にも危害が加わるので勘弁して下さい」
堺のツッコミが五霞の一番触れてはいけないところに入りそうだったのを坂東をきっちり止める。
「オラ!到着遅れましタ」
「常そry
下妻がそう呼ぶ前に白いものと卵が空中を飛ぶ。
白い粉が部屋を覆っていた。口に広がるのは小麦粉の味。
「ブラジル式のお祝いデース!」
部屋中が卵と小麦粉まみれになる。
「……常総、あなた人んちで何してくれてるんですか?」
「だ、だっテ、今日はにし/も創刊のお祝イって」
「今すぐこの部屋を掃除しなさい」
日本刀片手に笑顔で怒る結城によって全員が部屋掃除をやらされ、に/しも創刊どころではなくなったのはまた別の話。