差し出されたのはマグカップだった。
「……なにこれ」
「チョコプリンです、笠間さんのとこでいいカップ買ったんで」
「手作り?」
「じゃなかったらどうせ拗ねるじゃないですか、何か不満でも?」
毎日毎日うちに来て、好きだ好きだ言い連ねて。
そんなことされれば誰だってほだされてしまうというものだ。
「ない!下妻の手作りチョコプリンならない!」
無駄にキリッとした表情でこちらを向く。
顔文字の(`・ω・´)を三次元化したらこんな感じだろうなあと思いながら、自分の分のココアを飲む。
「ねぇ、チョコプリンの中に何か入れた?」
「薔薇のジャムですよ」
「ローズジャム……薔薇……」
何かを察したような顔でこちらを見る。
薔薇の花言葉は、愛。
「そういうことです」
「……下妻!大好き、結婚して!というか抱いて!」
思い切り抱きしめられていれば、ああこんな日も悪くないなと思うのだ。