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コーギーとお昼寝

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ここ数年の下妻さんの壊れぶりには潔いものがある

*広い心でお読みください。

*画像表示があります。

*大したネタではありません。

*大して腐ってもいない






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寂しい歌が聞きたい

確かにあれは恋だったのだ。
いつだって一緒に笑ってくれた人を、いわば自分で殺してしまったようなものだ。
だけれどそれはある意味で必然だった。
ならばなんて不幸な必然だろう。



寂しい歌が聞きたい



「つくば」
「・・・・・何?」
「つくづく思いますけど、あなたは筑波に似てるようで似てないですよねぇ」
ぷにっと顔をつねってみる。
「ちょ、痛い痛い痛い!」
「筑波はいつも笑ってたんですけどねぇ」
「いやここで比較するのはおかしいよね?」
ああ本当に理屈っぽい。
妙に理屈っぽいのは私に似たんだろう、県民性という可能性も無きにしも非ずということにしておこう。
「筑波は素直でしたよ」
「あの人はいい意味で単純だったから」
息子からそう解析されていいのかは甚だ疑問だ。
実際そうだと思うけれど。

***

『筑波は私を憎くないんですか』
『いいや?おらは茨城がでっけくなってくれればいい』
学園都市構想の受け皿にふさわしくないという理由により、筑波は将来的に消滅することが決まっている。
『それに、東京がおらんとこ選んでくれたのがうれしい』
そうやってあまりに悪気なく笑うものだから無性に泣きたくなった。










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きみと話がしたいのさ

1、初めて出逢ったその瞬間(土浦)
つくば道の先にある、広大な大豆畑。
そこが出会いの場所だった。
「きみが筑波?」
「んだ」
その時から僕らの永い友情は始まった。

2、好きな子教えて(土浦)
夕闇の中に筑波山が浮かぶ。
「おー・・・・涼し」
「今晩はよぉ晴れてんべ、だから星が綺麗だぁ」
「うん」
草っぱらの中心でしゃがみ込んだ僕の手を見て「白い手だなぁ」と筑波が言った。
「外に出ないからね」
「女っこみてぇだ」
僕の好きだった人も白い手をしていた。
「・・・・・筑波はいい人いないの?」
「いねぇなぁ」

3、二人だけの秘密(土浦)
筑波山のすぐそばにある小高い山・富士山(「ふじさん」ではなく「ふじやま」だ)に二人だけの場所を作った。
空と筑波山が綺麗に見えるこの場所は、永遠に秘密の場所だ。
誰にも渡さない秘密で特別な場所。

4、友達以上、恋愛以上、家族未満(土浦)
この関係をなんと呼ぼうか、と筑波に聞くと「・・・・・・親友、だなぁ」と言った。
友達では足りないけれど恋人ではない。
僕らの関係は友達がちょうどいい。

5、ほら、半分こ(筑波)
「ほら割れた」
土浦がうまく開けなかった栗のイガを取ると、感嘆の声を上げた。
「・・・・・これぐらい簡単に時代が分かればなぁ」
「野田の醤油が人気だもんなぁ」
鉄道が日本中に敷かれ、千葉で作られた醤油が東京に出回り始めて土浦の醤油の売れ行きが落ちた。
「栗、4つあんべ。二つづつにしようやぁ」
「うん」
時代がどう変わろうと、なにも変わるはずが無い。

6、泣いて、笑って、変わって(土浦)
僕らの出会いから長い年月が過ぎていった。
筑波は今、瀬戸際にいる。
新しい次代を担う研究のまちへと変貌するか、今までのままの自然豊かな町のままか。
僕はまだ賑わいのさなかにおぼれている。

7、あいつをよろしくお願いします(筑波)
「・・・・・・東京さん」
「はい」
「土浦はどうなっぺか」
「それは分かりませんが、あなたと同じように何かしらの変化は起きるでしょうね」
「んだらば、あいつも賑わったままでいられるようお願いできっぺか」

8、好きだよ、だから幸せに(土浦)
筑波は死んだ。
新しいつくばを引き換えに、古い筑波は死んでいった。
「・・・・・・ひらがな市名なんていけ好かない」
「土浦が不機嫌になるのも分かりますが、これも宿命です」
「取手は冷静だね」
「どうなろうと運命のままに生きていくしかないですからね」
レンコンチップスをさし出して、パリッとかじる。
僕の運命は不安定だけれど筑波の幸せを願っている。









お借りしましたr e w r i t e

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はつなつのかぜとなりたや

人間は正反対の人物に惹かれやすいというが、それはたぶん正しい。
私は間違いなくあの人に一目ぼれしたのだ。
その代償として、私は彼を殺したのだ。





はつなつのかぜとなりたや


1960年代、東京に一極集中する研究所の一部移転が問題となった。
朝鮮特需をきっかけにはじまった高度経済成長の真っ只中。
候補として挙げられたのは筑波山周辺と富士山周辺。
そして結果的に選ばれたのは筑波だった。

***

研究都市候補地という事を言い訳に陸の孤島だった筑波に入り浸っていたのは、仕事というよりも個人的な意思だった。
正直に言えば完全な恋愛感情によるもので、仕事を短時間ですべて終わらせて時々顔を出す生活は体力的にきつくとも当時は平気だった。今思うと恋とは恐ろしい。
「・・・・・・・おらが、研究都市に」
「ええ、正式に閣議決定しました」
「すげぇなぁ」
「なに他人事みたいに言ってるんですか、最終的にあなた死ぬんですよ?」
研究都市は将来的に地域発展のあおりを受けるため、代替わりすることが最初から決まっていた。
彼の体では地域の急激な成長を受け止めきれないことは明白だった。
「でもな、おらは東京にも会えたし、街のみんなのためになるんなら代替わりも良いなって思うんだぁ」
「さっぱりしてますねぇ」
「東京と会えてよかったべ、おらの次代は東京みたいに立派にさせてぇ」
古い着物を身にまとった筑波が私にそういう。
(綺麗な笑い方をするなぁ)
彼は底抜けに明るいのだが、優しい笑い方をするのだ。
「私も会えてよかったと思いますよ」
「東京との間にややできっとは思わねかったなぁ」
「・・・・・・え」
「だって、国の手も入んなら、ややこも東京の血ぃ引くべ?」
お互いにぽかんとして笑ってしまう。





はつなつのかぜになりたや。
そう呟くと「東京はすでにそうだべ」といわれた。
私はあなたのようになりたいと、思っていることはあえて胸の奥にしまった。







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ブルーベリー畑で捕まえて

あ、と思ったときにはもう下妻の怒りの平手打ちが顔に直撃していた。 「・・・・・・・本当にあんたって人は最低ですね」 下妻を、怒らせてしまった。

ブルーベリー畑で捕まえて

下妻は温厚で、「あー、ったくしょうがないですねぇ」と受け流してしまうタイプだ。
まあ、うん、今回は自分も悪い。
女装して見てといわれればさすがに怒るのはわかる、でもそれだけでは何かが足りないのだ。
「いくらなんでも親の形見の品そんなあっさり俺に上げて良いんですか?」
「・・・・・・・親の?」
「この浴衣、筑波の形見じゃないですか。なのに巾着にして・・・・・・」
確かに巾着に使った浴衣は筑波の残したものだ。
紺は自分よりも下妻のほうが似合う、そう思って巾着に仕立て直してもらったのだ。
(親のものを大切にしろって事?)
自分で導き出した結論はその一言に尽きた。
「でも、もう筑波はいないじゃない」
「親のもの大切にしろって言いたいんですよ」
そう言って怒る下妻にふと思い出したのだ。
かつて、筑波がくれた一本の木のことを。
「ねぇ、ブルーベリー摘みにいこう。」
「・・・・・・突然なんですか」

***

自分にとって筑波は血の繋がった父だ。
おっとりとした田舎育ちで、茨城弁の抜けない垢抜けない存在だった。
同じ時期を過ごしたのはほんの数年に過ぎないけれど、筑波はつくばとなる自分に一本の木をくれた。
「それがこのブルーベリー」
「ああ・・・・・特産品ですしねぇ」
「まだ県内で栽培が始まってもいない頃だけどね」
今でこそ茨城は全国2位のブルーベリー産地であるけれど、この木を貰ったのは市制開始の40年近く前のことだ。
まだブルーベリーも珍しい時代、この木を自分へと渡したのだ。
「・・・・・・で?」
「筑波がね『おめぇは新しい時代の子供だから、でっけくなれ。おらの持ちもんが古臭けりゃ、好きなようにしろ』って言ってたんだよね。」
「・・・・・・筑波自身の意思だったわけですか」
「そういう部分もあるよ、それにあの浴衣は下妻が着た方が似合うと思ったし。」
かつて言われた言葉を告げると、肩の力が抜けたように大きくため息をこぼした。
さっき渡した巾着を取り出して下妻が言う。
「これ、土浦さんが筑波に渡したものなんですよ。あの二人はすごく仲がよくて、土浦の浴衣を筑波に上げたりしてたんで筑波は土浦さんから何か貰うたびにニコニコ顔でうちに来てたんですよ。『上方の新作だ』って」
「へえ」
筑波と土浦が親しかったのは知っているが、下妻と親しかったのは初耳だ。
(羨ましい)
下妻は長く生きているから、自分なんかよりも色んなものを見てきている。
そんな事実に気づかされるたびにちょっとだけ嫉妬する。
「土浦さんに呪われるのだけはごめんですからねぇ」
「ふうん」
「・・・・・・・ブルーベリー、摘んだらどうしましょうか」
「好きにしてよ」
「ブルーベリーのムースにしますか、好きでしょう?」
「下妻の次ぐらいにね!」
嫉妬心も過去の思い出も全部なかったことにしたくて、ブルーベリー畑を全力で走り始めた。










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