ごんごんごん、と乱雑に玄関の扉を叩く音がした。
「敦賀ぁお前おんのやろー、出て来いやー」
昼寝を妨害するようなその煩さにのそのそと布団から這いずり出て、玄関の扉を開くとそのには予想していた通りの小奇麗な顔と焼き鯖の匂い。
「小浜のにーさん、うるさい」
「第一声それかいな」
「言うときますけど押し売りされても買いませんからね?」
「押し売りはしとらんって、お裾分け」
にこやかに焼き鯖の入った袋を押し付けてくる。
黙っていれば色男なのに喋ると関西ラテンでうるさい嶺南の中心都市はマイペースに人んちにやって来ては焼き鯖やへしこを押し付けてくる。
鯖を分けてくれるのは嬉しいが、今は正直ゆっくり昼寝させてほしかった。
「で、用件はこれだけ?」
「?せやけどなんか用事あったん?」
「いや……焼き鯖は美味しく頂きます」
「ならよかった」
ほななーと言ってまたフラリと去って行く。
相変わらずよく分からないな、と思うけれど焼き鯖に罪はない。今夜は焼き鯖と日本酒で一杯行くか。
小浜と敦賀。