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コーギーとお昼寝

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ホワイトバレンタインは始まったばかり

ぴくぶらの「ピクブラバレンタイン2018」投稿作品
ほぼほぼBL



「寒い」
「……ブリズベンは夏でもこっちは冬だからなあ」
成田から直接こちらへ遊びに来たというワイルドナイツの一言に思わずそんな台詞が漏れる。
オーストラリアはブリズベンの10人制大会に日本から唯一出場という名誉を果たして今年も活躍してきたらしいことは伝え聞いているが、直接太田に戻らず府中まで遊びに来るのは果たしていい事なのかどうか。
「とりあえずブリズベン土産」
手渡されたのはシンプルな茶色い紙袋だ。
「お、ありがとうな。というかほかの先輩達には送ったのか?」
「先輩には送った」
彼の敬愛する先輩―神戸製鋼コベルコスティーラーズ―のの名前を挙げたので、他の人にも贈っとくべきじゃないだろうか?と思ったが他の先輩たちとてそう心の狭い人でもないし気にしないことにしよう。
「せっかくだしなんか飲むか?」
「くれるなら飲む」
酒を詰めてある戸棚を開けてウィスキーとグラスを引っぱり出して並べてやれば「随分いいのだしてきたじゃない」と呟いた。
「確かこれ、ブリズベンの人気店の奴だろ?それなら少しはいい酒のほうが良いかと思って」
「親愛なるライバルへの手土産だからね、少しは奮発したんだよ」
「そりゃどうも」
ライバル心と友情という相反するものが共存したような、そんな台詞をかけられるのは悪い気分じゃない。それはきっと互いに相手が唯一無二であることを確認できるからだろう。
チョコレートに合わせるウィスキーはストレートが良い。水も氷も今日はなしだ。
「ブリズベンはどうだった?」
「最高だった、いい試合はやるのも見るのもやっぱり楽しい。……サンゴリアスも来れば?」
「検討はしとくよ」
「答えは全部いいえです、って?」
「検討は検討だよ」
酒が少し入れば舌も随分滑らかになるもので、ブリズベンの大会に始まり、シックスネイションズ(ラグビー強豪6か国による国際試合)の話や、スポーツビジネスに至るまで話題は四方八方に飛んでいく。
気の合う相手と酒を飲むのは愉快なもので、ウィスキーの1つ2つすぐ空になる。
「……雪降って来たね」
窓の方を振り向いたワイルドナイツがぽつりとつぶやいた。
「ほんとだなあ」
「ホワイトバレンタインだ」
「バレンタインは明日だろ?」
「もう日付変わったよ」
そう言って時計を指さすので確認して見れば、午前1時近い時刻になっている。
ずいぶんと長い間飲み続けていたらしいことに気付いて「ほんとうだ」と声が漏れた。
さすがにもう寝ようという心地になって立ち上がるとワイルドナイツが口を開く。
「このまま泊まっていい?」
「そもそもこの時間じゃ帰りの足ないだろ、まあ明日の朝もそれどころじゃないだろうしせいぜいゆっくりしていけばいい」
「……そういうんじゃなくて、俺がサンゴリアスとバレンタインを過ごしたいからって言ったら?」
「座布団あげられる程は面白くないな」
「けっこう本気だけどね」
「はいはい、もう寝ような」
空き瓶とグラスを全部流し台に突っ込んでソファーベッドを組み立てる。
洗い物の類は明日に後回し、細かい事は後で考えよう。
「床で寝る気?」
「寝室に戻るよ、うち客間ないからそいつで勘弁」
「別にい一緒でもいいんだけど」
「ガタイのいい男二人はさすがに無理でーす、それじゃあお休み」
灯りを消してリビングを立ち去る。



(……今の話、冗談だよな?)

何となく急に不安になって来たが、明日聞けばいい事だ。
ホワイトバレンタインは始まったばかりである。

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