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コーギーとお昼寝

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彼女の知ってること

ついった再録+アルファ。
神戸ネキとスティーラーズさんとシーウェイブスさんの話





魂の結びつきがもしも目に見えるものであったのならば、それは三陸へ続いているに違いない。
一度も口に出したことはないが彼がそう思っていることを神戸は知っている。
神戸にとって彼は己の誇りだった。
北の鉄人と呼ばれるかの男は彼の魂の恋人だと、神戸だけが知っている。

彼女の知っていること

シーズンオフの練習場はどこまでも静かで、青々とした草の匂いをはっきりと感じ取れる。
この若々しい新緑の匂いが神戸は何よりも好きだった。
「姐さん、なにしよるんですか」
「ただの息抜きよ」
神戸から受け継いだ紺色の瞳が困惑に染まる。
彼―神戸製鋼コベルコスティーラーズ―の真紅の髪が初春の風にふわりと揺らぐのを、神戸は静かに見守っていた。
「こんな時期に来られても今シーズンオフで誰もいませんよ?」
「そうね、私も着いてから思い出したわ。紅茶でも飲む?」
「……姐さんはマイペース過ぎません?」
「その分勤勉に仕事はしてるもの」
神戸がバスケットから魔法瓶とカップを取り出して、なみなみと温かな紅茶を注ぐ。
諦めたようにその紅茶を受け取ってから、砂糖を一つだけ溶かしていく。
「最近、シーウェイブスと逢った?」
「急にどないしたんですか」
「一昨日釜石と会う機会があって、その時にまた神戸製鋼対新日鉄釜石の試合が見たいって話してたの」
釜石と一緒に休憩するとき、話題は大抵ラグビーだった。
最近の強豪チームがどうこう、国際試合がああだこうだ、という話を一通りした後に恒例のように神戸製鋼と新日鉄釜石の試合を見たいものだという話になる。
クラブチームになり自分の名前が外れようとも、釜石にとってあのチームは大切な誇りであることに何ひとつ変わりはない。
「で、また試合できそう?」
「……非公式なのはともかく公式では向こうに昇格して来てもらわにゃ話にならんでしょう。俺かてまた花園か秩父宮で逢うてみたいもんですけどね」
「まあそれもそうよねえ」
「それをシーズン終わった後の集まりで本人に言うてみたら『ワールドカップの観戦でもいいんだぜ?』って言うもんですから、ほんともーあの子は何考えとるんやろか……」
ずずっと呆れ気味にそうこぼしながらも、どこか嬉しそうに見えた。
出来の悪い息子を愛おしむような口ぶりは友情と信頼の表れだ。
「ワールドカップに向けて釜石市内にスタジアムが出来るものね」
「俺は試合で逢いたいんですけどねえ」
「……そう思えるんだからいいじゃない?」
神戸は穏やかに笑う。
彼らの目に見えないつながりの、美しさに。

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