久しぶりのサンゴリアスからの電話は俺にある頼み事をするためのものだった。
「サンゴリアスのファンクラブ向け先行販売?」
『そう。今度お前とやる試合の会場熊谷だからさ、うちから遠征に行きたい人向けに枠確保して貰えないかと思って』
「うちのファンクラブ優先枠か一般枠削ってお前のファンクラブ用に確保して先行販売か」
まん延防止措置の関係で収容数には限界があるから、サンゴリアスファン向け優先枠を作るという事はそのどちらかを削るという事にもなる。
府中から熊谷なら日帰り範囲内だから来てくれるお客さんも多いだろう。集客を増やすためにもプラスに働くだろう。
(そうなるとどこを削るかって話になりそうなのがなあ)
正直に言えば自分のファンクラブの枠は削りたくないので引き受けないという選択肢もある。
『きつい頼みかもしんないけど、お前とのゲームはひとりでも多くの人に直接見て欲しいんだよ』
サンゴリアスの電話越しの声は悲痛にも響いた。
確かにそれは分かる。互いの死力を尽くすギリギリのゲームの楽しさ、美しさを多くの人に見て欲しい気持ちは俺にだってあるのだ。
『なあ、頼むよ。一番のライバルだって、そう思ってくれてるならさ』
サンゴリアスのその痛切な言葉心を揺さぶってくる。
「……分かった、サンゴリアスのファンクラブ向け優先枠が確保できるか相談してみるよ」
『ありがとう、いい返事が来るのを待ってる』
「あとで書類送ってもらえると助かる、どのぐらいあればいいかとか分かんないし」
『了解、即作って送るわ!』
電話が切れると何だか嬉しいような面はゆいような気分で受話器を置いた。
サンゴリアスが俺を一番のライバルだと思ってくれていることが、俺との試合が一番見て欲しいゲームだと思っていることが、こんなにも嬉しいなんて知りようがない。
「希望の席数用意できるといいんだけど」
そう呟きながらいつものスタジアムの図面を広げて、どんな風に席数を用意するか考えてみたりするのだった。
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ワイルドナイツとサンゴリアス