―振り向くな、振り向くな、後ろには夢が無い。
―ただ前を向いて走る事だけが、未来への最短距離だ。
「葺合!」
派手な音を立てて開いたドアに従業員が一斉に振り向く。
荷物が片付いてがらんどうになった部屋に、あの美しいワインレッドの瞳の輝きはない。
「西宮さん、どないしました?」
「葺合はいる?」
「それが今朝から居らんのです、閉鎖式に出たないんやろうとは思うんですけど」
本社の社屋にも、ここにもいない。
(どこに行ったの、葺合)
感謝の言葉のみを告げて私はもう一度彼を探しに走り出した。
次へ西宮と葺合がメインの過去編です。神戸でも日新でもなく川鉄ってどういう事なん痕は自分が一番思ってます。