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コーギーとお昼寝

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走る男と追う女4

それから葺合は製鋼一貫製鉄所の建造と言う夢に向かってまっしぐらに走り出した。
西山さんと共に候補地を巡った末に、二人はある結論を出した。
「ちょっといいか」
「はい?」
「製鋼一貫製鉄所を千葉に作る」
「……山口とかじゃなく?」
「千葉だ」
けろりとした声でそう述べた葺合の顔を覗き込むが、その目はいつも通りの深い赤だ。
葺合がそんな冗談を言うような相手でないことは分かっているが、随分と遠くに作るものだと驚いてしまう。
「でも、お金は」
「オヤジがなんとかする」
そしてまあこれが一つ騒動の始まりなのであった。

****

「ばっっっっかじゃないんですか?」
八幡さんはばっさりとそう切り捨てた。
声のトーンは努めて冷静であったけれど隠しきれない怒気を端々に滲ませながら答えていく。
「確かに鉄鋼の生産能力の増強は急務ですけど休止中の高炉を動かすことが先決です、それに製鉄所を増設するなら私か釜石が先になるのが妥当でしょうが」
「作る予定でもあるのか」
「そう言う意味じゃなくて!ほんとその淡々とした声腹立ちますね!」
「八幡、ちっと落ち着かんか」
ぺしんと頭を軽く叩いて釜石さんが待ったをかける。
こういう時八幡さんを止められるのは釜石さんだけだな、とつくづく思う。
「いやこれもう予定とかそう言う話じゃないですよ、工場にぺんぺん草しか生えませんよこれ」
「ぺんぺん草は薬草じゃぞ?煎じて飲むと熱が下がる」
「そう言えば釜石に昔飲まされましたねぺんぺん草のお茶、あれ効果あるんですか?」
「あるぞ?昔高任さんに飲まされてな」
なんか2人の話がどんどんずれてきている。
千葉に作る製鉄所の話をしに来たのだが、2人の会話がぺんぺん草の薬効の話にずれてきている。
「で、八幡。世界銀行に金を借りるときはどうしたらいいんだ?」
葺合が力技で二人の会話を引きずり戻す。
「はい?」
「いやだから、世界銀行から金を借りたいんだが?」
「……世界銀行に借りに行くと?」
「他所が貸す気ないからな」
馬鹿かこいつ、と言う目で八幡さんはじっと葺合の目を見ているのだった。



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