「豆まきしましょう」
会議の終わり、八幡が突然買い物袋から節分の豆と鬼の面を取り出してそう言った。
「……急すぎじゃない?」
「無事故ゼロ災の願掛けみたいなものですよ、去年は災害も多く今年は日新製鋼の合併と再編も控えてますからね。全員帰りの飛行機や新幹線夜に取ってるでから時間もあるじゃないですか」
「その時間に取らせたの八幡じゃん!」
「豆まきの時間確保するために夜帰りにさせたな?!」
鹿島や此花からの盛大なブーイングを横目に、八幡は無反応だ。たぶん最初からやる気だったんだろう。
それを察した釜石や戸畑は苦笑いだし小倉はアホかコイツという冷めた目で八幡を見てる。
スライドに大きなあみだくじを映すと「鬼役を決めるあみだくじプログラム用意したので好きな番号選んでください」と言い出す。
上は右から順番に数字を割り振り、下には鬼役の文字が二つ。
「とりあえず私は10番取ってあるので各々それ以外で好きな数字選んでくださいね」
「じゃあ僕6番で、室蘭の六ね」
僕があきらめ気味に数字を挙げるとこの謎の茶番に乗っかる事にした面々がぽつぽつと数字を挙げてくる。
ぶうぶう言ってた此花や鹿島も結局乗っかる事にしたらしく、あみだくじの数字はどんどん埋まる。
「なんか人数足りなくないですか?」
「たぶん直江津だと思います、あいつよほど強く言わないとすぐに現場仕事しに帰るんで……」
「どういう了見なんですかね」
「直江津はそう言う奴ですから」
和歌山に宥められつつもさっくりプログラムを修正して、あみだくじを始めると鬼役はすぐに決まった。
「鬼役は君津と大分ですね」
二人の表情が途端に曇るが八幡から鬼のお面を受け取ると、やれやれと言う風にそれを受け取るのだった。
***
「「「「「「鬼はーそと!!!!!!!」」」」」」」
会議室に大音量の掛け声と豆を投げる音が響く。
逃げまどう君津と大分を尻目に、若干やけくそ気味な此花が「くたばれ天災!」と叫びつつ豆をぶつけてくる。しかも結構本気だ。
というかついでに八幡に豆ぶつけてる鹿島と小倉は何なんだろう。ストレスかな。
「「「「「福はーうち!!!!!!!」」」」」」
まあでも、楽しいからいっか。
日鉄組と楽しい(?)豆まき。