*新成人おめでとう小話
「~~♪」
「北茨城、何でいるんだよ」
「会いに来た」
俺は呆れたようにため息をついても、この懲りない奴はそれでも楽しげに笑った。
今日は日本全国の20歳を祝う成人式の日で、自分だけで泣くこいつもその日のはずである。
「自分のトコの式典の準備はいいのかよ」
「うちは日曜開催ですから」
地元のイベントホールの窓から、振袖や袴姿の若者がいる。
毎年こういう式典には不埒な若者がいるが今年はそれも自粛らしい。
まあこっちとしては永遠に自粛してくれというところだが。
「春よ まだ見ぬ春 迷い立ち止まるとき
夢をくれし君の 眼差しが肩を抱く」
「・・・・・ユーミンのあれか」
「そう、希望の春でしょ?いわきさんにはさ」
そうだ。
あの日から失ったいろんなものを、一つ一つ取り返していかねばならない。
「・・・・・まあ、そうだな」
「夢をくれし君、になるからさ」
「あんま調子乗るな」
どうか来年も、この日が祝えますように。と小さな声で呟いた。
新成人の皆さんおめでとう、とかいいつつ県内はほぼ日曜に行うので全然意味が無いと言う。
いろんなものを失って取り返す過程の中にあるいわきにとって行政主催のイベントである成人式が何かの意味があればいいなと。