真っ白の麻の着物に雪駄と信玄袋をぶら下げて人の波を眺める。
待ち合わせは福井駅前の改札口。
隣でぼんやりと掲示物を眺める勝山が人ごみに流されないように手首を掴み、福井の姿を目で探す。
「福井、」
ひらひらっと手を振れば福井がこちらに寄ってくる。
福井は淡い青に花びらの浴衣と桐下駄に身を包んでおり、トンボ玉のかんざしで留めた髪型も含めていかにも夏祭りの風情だ。
「今日は勝山も浴衣なのね、珍しい」
「お祭りなら浴衣かなって」
勝山は灰色の無地の浴衣に和柄のスニーカーというなんだか不思議な組み合わせだ。
こういう変な組み合わせを平気で着てくるあたりに勝山の気質が出ている気がする。
「じゃ、行きましょうか」
福井の後を追いかけるように歩き始める。
駅前はもう夏まつりの空気と匂いに包まれており、太鼓の音に屋台の匂いが香ってくる。
今日は夏祭り、土地も住人も心躍る夢の一夜だ。
今日は福井フェニックス花火なので福井鯖江勝山トリオのお話。