夜の東尋坊は潮騒の音しかしない。
それゆえ投身自殺の名所などと呼ばれているが、最近はなんぞのゲームの影響で夜でも人気を感じることが増えた。
これで汚名を晴らせればありがたい限りなのだけれどいつもそう上手くいくものでもない。
目の前には、革靴がひとつ揃えられた状態で崖の縁に置かれている。
(……ああ、間に合わんかったのか)
大きさからして女性だろうか、デザインも革で出来た花があしらわれた可愛らしいものだ。
持ってきていたビニール袋に靴をしまっておく。カードには拾った場所も書いておく。
せめて、この海の底で安らかであってくれと手を合わせて。