窓を打ち付ける雨と遠雷の音で目が覚めた。
時計を見れば午後4時前になっていて、ああしまったなと思う。
特殊な身元故にあっても無くてもいいような部署に置かれているとはいえ、いちおう割り振られた仕事はしないとならないというのに3時間以上寝ていたことになる。
とりあえずお茶でも飲んで目を覚ましてから仕事するか、と給湯室に足を延ばした。
唐突に携帯が鳴って取ってみれば、それは遠くに住まう友であった。
『もしもし、福井です』
「どうかしましたか」
『今朝送った交流事業の件のファックスの返事が来ないので確認の電話を、いつもなら夕方にはお返事来てるみたいなので……』
「分かりました、確認してきますんでいったん切りますね」
給湯室へ向かう途中にある担当者の机に向かってみれば今日は風邪で休みだという。
なるほどそれなら仕方ないと思いつつ電話をかけなおすとすぐにつながった。
『もしもし』
「もしもし、ファックスの件確認しましたけど担当者病欠みたいなんで返事明日になりそうです」
『そうでしたか……』
「ところで、随分と後ろが騒がしいですけど何か?」
『熊本への災害派遣でいま人が足りなくて』
「それで本来閑職のあなたに仕事が多めに割り振られてると」
『はい。彼は大切な友人ですから』
その言葉に思わず納得の声が漏れる。
「あまり無理はしないでくださいね、あなたが倒れたら大変ですから」
『……はい、そう言っていただけるなら幸いです』
「事実を述べたまでですよ、それじゃあ」
電話を切って窓の外を見る。
まだ、遠雷は止まない。
結城さんと福井ちゃんの何てことない話。
熊本さん頑張って……。