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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

夏越の祓

6月30日、広島市内某所。
静かに曇る空を見上げながらこの後どうしようかと少しばかり考える。
父親に呼ばれて広島市内の本社まで来たが昼過ぎには用事が片付き、ようやく再開された練習が始まるまではだいぶ余裕がある。
久しぶりにパルコかゆめタウンにでも行って新しいトレーニンググッツでも見に行こうかと思案していると、ポケットに入れていた電話が鳴った。
「マーズ兄さん、どうかしましたか」
『いや、今暇しよるか?』
「そうですね、本社に呼び出されたのは早く用事が済んだので新しいトレーニンググッツでも探そうかと」
『ちゅうことは市内に居るんか、ならちょうどええな。いま宇品の工場に居るけえ護国神社の六月祓に行かんか』
「良いですよ」
待ち合わせ場所を決めるとすぐに電話が切れた。

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護国神社の駐車場に車を止めると、思ったよりも参道は賑わっていた。
平日昼間でこの病禍のご時世によくもまあみんな来るなとつぶやくと「こういう時ほど神頼みなんじゃろ」と兄さんは笑った。
六月祓というのは6月の最終日に行われるお祓い行事で、茅の輪くぐりと言えば分かりやすいだろうか。
青々とした茅で作った大きな輪を八の字にくぐって厄払いをするアレだ。
「でも何で六月祓なんです?」
「上半期の厄落としだな、それに今シーズンのこととか新リーグのこととかもお祈りしてこようと思って」
「あー……今年はほんとに大変でしたもんね」
今年上半期に起きた様々な出来事が脳裏を通り過ぎていく。
下半期のほうもはたして穏やかに過ごせるのか?と思えば頭を抱えたくなる不安要素ばかりだ。
「ついてる厄は少ないほうがいいしなあ」
「ですねえ」
そうこうしていると茅の輪くぐりも自分たちの番になる。
ぐるぐると輪をくぐり、ぶつかって付いた茅もちゃんと払い落とす。
「……少し体も軽くなった気がしますね」
「そうだな」
ついでに神社もお参りしていこうと言って本殿のほうへ足を延ばすと、同じような考えの人たちが距離を保ちつつ並んでいる。

「そういやあ、新リーグの参加申し込みどうしたんだ?」

いかにも暇つぶしのようにそう切り出した兄さんの目は、どこか淡い不安の色があった。
(……本当はこのこと聞きたかったのかな)
申し込みチーム名の発表は明日だ。
事前に知って心の準備がしたいと思ったって不思議じゃないのかもしれない。
「参加するって話、あったろう」
「ええ」
「出しましたよ」
僕があっけなく答えると、「そうか」とつぶやいた。
「再来年には広島ダービー復活か」
「はい」
兄さんがどこか嬉しそうに呟くので、僕も心が穏やかになる。
明日から7月。本格的な夏は近い。



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レッドレグリオンズとブルーズ―マーズ。
広島ダービー復活確定めでたい!

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最近の小ネタ集

・日々愉快(グリロケ+アークス)
最近のマイブームは寝起きじゃんけんだ。
『という訳で今朝のグリロケじゃんけんのお時間です』
『……フェイスガードつけて人んちに突撃するのやめてくれません?』
寝不足顔のシャイニングアークスに対して僕のほうはスマホのカメラを起動して撮影続行中である。
『ほら、グリロケじゃんけんだよ。グーリロケじゃーんけーん、じゃーんけーん?』
『グー、という訳で10秒以内に退室しないとグーで叩きだします今すぐ帰りなさい』
『パーを出した人は超ラッキー!明日もこのミラクルセブンが誰かの家に突撃するよー!』
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と言う謎動画が届くだけの平和な世界

・なまえのこと(スピアーズ+グリロケ)
『兄弟でおんなじ名前ってめんどくさくない?』
グリーンロケッツが画面越しにそんなことを言ってくる。
「んー、まあそうだけど決めたのうちの親だし、文句つけようがないよねー」
このたび同じ名前で活動することになった男子バレー部-いちおう俺の兄である-のことらしい。
まあ住んでるところ違うから兄弟間でそんなに交流ないし、名前を兄弟で共有することはちょくちょくあるから俺は気にしてない派だ。
『そうだけどさー、兄弟で名前一緒ってややこしいじゃん』
「どうせそのうち慣れるから大したことじゃないでしょ」
『……お前は、自分の名前に執着とかないの?』
グリーンロケッツがそんなことを聞くので「ないねえ」と答える。
「だって俺自身の権限で決められることなんて全然ないし、何かに執着したって苦しいだけじゃない?」
『そんなんじゃ自分がぼやけるよ』
妙に真剣みのある声で俺にそう告げたのは彼らしい言葉だ。
兄弟たちと姿かたちがよく似ていたグリーンロケッツだからこそ、兄・姉と自分が別人だと明確に感じていることで自分の輪郭を明瞭にしたかったのかもしれない。
「ま、たぶん大丈夫だよ。たぶん」
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スピアーズさんはのんき

・海の街の夏(シーウェイブス)
この町に夏が来る頃、冷蔵庫にはオレンジ色の詰まった牛乳瓶が並ぶ。
時期の名物であるウニの牛乳瓶詰はこの季節特有の貰い物であり、瓶詰づくりのバイトはオフシーズンの重要な収入源でもある。
しかし今年は昨今の飲食店自粛で売り上げがよろしくない。となれば、自分で知り合いに売るしかないだろう。
『新鮮な瓶詰ウニ要らないか?欲しい人は返信希望』
友人知人に送り付けたメールの返事を待ちながら、初夏の風を静かに浴びている。
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三陸のウニを喰え

・夏の盛りは近い(イーグルス)
色々なことが原因でいつもならば春先にやるような退部・入部の事務仕事に追われる日々が続いている。
「はー……疲れたな」
背筋を伸ばしてぽつりとつぶやけど、きょうも事務所の人気はまばらだ。
練習はようやく再開されたものの外での練習がメインだから中にいる人は少ない。
いつもなら屋内でやる筋トレやストレッチも器具を外に移したので、建物内は妙にすかすかした感じがする。
換気のため開け放たれた窓から入り込むぬるい風は夏の湿った芝草の香りがする。
「もっと暑くなったら、どうなるんだろうなあ」
夏の盛りは刻一刻と近づいている。
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もうすぐ夏です

・去り行く人(ブレイブルーパス+スティーラーズ)
『キンさん、引退するってホンマなん?』
「ほんとだよ。今度からうちの広報になるよ」
同じ内容の確認の電話を貰うのは今日で三人目だ。
みんなから愛される人だったのだと喜ばしいけれど、何度も同じようなことを答えないといけないのは正直うっとおしい。
『……人間が歳食うのって早いよなあ』
「戦前生まれが言うと説得力違うよね」
『俺のことジジィ思っとるよなお前』
「この界隈じゃ戦前生まれは年寄りでしょ、事実として」
俺は一応戦後生まれだけれど、年月の経過の早さは俺だってわかる。
自分が拾って育てた人が、鉄人と呼ばれて第一線を去る姿を見届けていればなおさらのことだ。
「今度福島行きたいな」
ぼんやりとそんな言葉を漏らすと『一人で行けや』と大変冷たいコメントが帰ってきた。
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大野選手、お疲れさまでした

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うちの妹は可愛いので

「ルーヴ、髪伸びたね」
このところのバタバタでろくに顔を合わせていなかった妹の髪がずいぶんと伸びていることに気づく。
「そうですか?」
「うん、前は肩甲骨ぐらいまでだったのにもう背中の真ん中ぐらいまで伸びてる」
ちょっとおいでと妹を隣の椅子に座らせると、ああやっぱり伸びてるなあとよくわかる。
猫っ毛気味の細く柔らかい髪は触り心地がいい。
俺も伸ばしたらこれぐらいふわっとした感じになるんだろうか、まあ俺男だし伸ばす予定ないけど。
「長いとふんわりしてるのがよくわかって可愛い」
「兄さまにそう言っていただけるなら幸いです」
俺はそんなに兄弟と縁の濃いほうじゃないから、妹が一人増えてもさほど気にしたりはしていなかった。
けれどこうして一緒に過ごしてると兄弟姉妹もいいものだととつくづく思う。
ダイナボアーズとかサンゴリアスが兄弟を大事に思う気持ちがようやくわかってきた気がする。
「いまゴムでもあれば三つ編みにしてやれたんだけどね」
「三つ編み出来るんですか?」
「簡単なのならね」
「……じゃあ、今度してください。わたし、兄さまに髪結んでほしいです」
妹が野花が咲くように表情をほころばせる。
……うちの妹めちゃくちゃかわいいな。




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ブレイブルーパスとブレイブルーヴ兄妹のはなし

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走れ!

外出自粛制限が解かれた日、久しぶりに靴箱からランニングシューズを引っ張り出した。
いつものランニングセットの入ったカバンを背負って走り出す。
五月晴れの風の中、人と距離を取りながら多摩川の河川敷を目指すと赤い布マスクの先輩がフラッと手を振った。
「あ、先輩久しぶりー」
「直に会うのは、だけどな。……サンゴリアス、お前やっぱ太ったろ」
外での練習が自粛になってから、先輩とちゃんと会う事は全然なくていつも画面越しだった。
「先輩も太ったとか言ってたじゃん!」
「お前が余ったもんうちに持ち込むからだっての!」
軽い雑談とともに息を整えると、ランニングウォッチやスニーカーのひもを確認する。
「……じゃ、行くか」
「はあい」
今日は久しぶりに長距離を走る。
多摩川の河川敷をなぞって羽田まで20キロほど、ほぼハーフマラソンだ。
家でのストレッチや筋トレはずっとやって来たけれど長距離ランは久しぶりだ。
以前の長距離走のリズムを思い出すように、心拍数を上がり過ぎないちょうどいいペース配分で、舗装された道を踏みしめるように走る。
先輩も久しぶりなのか時々河川敷のほうに目をやりながら深く息を吸い込みながら走る。
水道橋が見えてきた。ということはもう狛江まで来たから羽田まであと半分くらいだろうか。
(にしても久しぶりの長距離走、きっついな)
前はまだ平気だったのに少し持久力が落ちたのかもしれない。
少しだけテンポを落としてできるだけ酸素を多めに体に送り込むようにすると、体は少し楽になる。
すこし先を走る先輩がちらっと先輩がこちらを見るので、平気だという顔をするとならいいやと言う顔をした。
首都高の高架を超えるとそろそろ二子玉川だ。
少し先で先輩がふいに足を止める。
「どうかしました?」
「ブラックラムズがいたから」
ほら、あそこ。と先輩が指を刺したところには確かに人影がある。
よく見たらラグビーボールの壁あて練習だ。
ふとブラックラムズさんのほうも俺たちに気づいたようで、軽く手を振って来たので俺たちも手を振り返した。
「おーい、そっち行っていいー?」
「良いぞ」
行こうと先輩が言うままに着いていくと、壁あての手を止めたブラックラムズさんがそこにいた。
「こんなとこでやってたんだ」
「ここの壁が色々と都合が佳くてな」
地面に置いてあったスポドリを飲んでくるので、俺もせっかくだしと飲み始めた。
この二人が盛り上がりだすと年下の俺はどうも突っ込めない。
「走って来たのか」
「久しぶりに長距離走って羽田まで行こうと思って」
「羽田か、帰りはどうするんだ?」
「電車で帰るよ」
「……なら我のほうで車を出そう、ちょうどサンゴリアスに借りた容器類を返したいと思っていたしな」
「えっ、いいの?!と言うかタッパー返してくれる気あったんだ」
「返す機会がなくて返せずに居ただけだからな、しっかり洗って漂白もしてあるぞ」
「やった。先輩どうする?」
「んー……じゃあ、せっかくだし便乗させてもらうわ。待ち合わせどこにする?」
「所用を済ませてからになるが其れで良ければ、30分後に穴守稲荷で良いか?」
「俺はいいけど先輩は?」
「少し休んでから帰る感じでちょうど良いかなあ」
「了承した」
それじゃあと言う感じで別れると、再び俺たちは走り出す。
すると先輩が突然走りながら話を切り出した。
「六郷土手着いたら穴守稲荷まで全力で走るか」
「は?!」
「最後の追い込みだと思ってさ」
「15キロ以上走ってラスト5キロスプリントって!」
「イケるだろ、どうせ帰りは車だし灰になってもまだ燃えてこそラガーマンじゃん」
「そんな無茶な!」
ああだこうだ言いあいながら走っているともう新幹線の高架が見えてきた。
この先多摩川はぐにゃりとひの字に曲がって、その一番端っこが六郷土手になる。
「……俺帰ったら筋トレできないじゃん」
「もうこのランニング自体トレーニングじゃん」
これもう俺が何言っても聞いてくれないやつだなと何となく察しがついたころにはもうJRの高架が見えてきた。
「この先の第一京浜道路、あそこからスタートにするか」
「……俺が勝ったらプリンね!」
「おー」
第一京浜道路の柱の前で一度立ち止まると、ここからが最後5キロのスプリント対決だ。
水分を取って息を整えて、汗も軽く落とす。
「んじゃ、行くぞ」



よーい、どん!


サンゴリアスとブレイブルーパスとブラックラムズ。
ただただ多摩川走ってほしかっただけです。

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静かに燃ゆるは赤きもの

大切に想える人がいるという事は幸福なことだと思う。
それが親であれ仲間であれ恋人であれ、一人ではないと思えるのはこころが穏やかでいられる。
「というわけで姐さんよかったら受け取ってもらえます?」
縦長の瓶に詰められた赤いカーネーションの花にその人は目を見張った。
20センチほどの瓶には赤いカーネーションやバラを詰め、感謝と情熱をその中に詰め込んだ。
「奇麗なハーバリウムね」
「きょうは母の日ですからね」
「あら、スティーラーズは私のこと母親だと思ってたの?」
「人の関係性で言うなら母親のお腹の中に眠る赤ん坊みたいなもんやないですか、俺らの関係は」
親会社という言葉に表されるように企業を経営母体とするチームはいわば親子のように密接だ。
すべてが親会社の手の上にあり、ときにその生死すらもこの人に決められる。
自分がへその緒で命をつなぐ赤子のように弱いことも、自分を生かしてくれているこの人もまた決して強くないことも、永い生の中で充分学んでいる。
「……そうね」
ぽつりとつぶやいてそのハーバリウムを抱きしめると「大切に飾ることにするわ」と言う。
その笑みを見て、きっともう気づいているのだろうと確信する。
このハーバリウムが市販品ではなく俺が自分の手でひそかに作ったものであることを。
そして中に飾られたカーネーションの数が、この世を去っていった俺の兄妹たちと同じ数であることを。
世を去った兄妹たちがこの人をまだ愛してくれているかは分からないけれど、この家で長く過ごした兄妹であるからそうであってほしいという俺の一方的な願いであることも。
「ええ、そうしたってください」
「私もスティーラーズの誕生日には何か用意したほうがいいかしら」
「別にモノはなぁんも要りません。
ただ、俺がラグビーできる日々が一日でも伸びて、姐さんが真摯に俺を応援してくれる。それが俺の一番必要なもんですよ」
「それもそうねえ」




スティーラーズと神戸さんの母の日

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