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コーギーとお昼寝

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秋田と縁がない話

『今回は本当に申し訳ありませんでした』
電話で詫びを入れてきたレッドドルフィンズさんに「いいんですよ」と僕は緩く答える。
『いえ、感染者が出なければ中止にはなりませんでしたし……』
「第四波の話も出てきましたしね、集団感染を防ぐことが一番ですから」
『いや、まあそうなんですけど……早くワクチン受けられればなあ』
「そうですね、次こそちゃんと試合しましょうね。失礼します」
電話を切ると目の前にの段ボールにようやく手を付けられる。
(レッドドルフィンズさんには悪いけど、正直詫びの電話よりこっちのほうが重要なんだよな)
秋田での試合は去年も予定にあったが見事に中止となり、先日のブラックラムズ先輩とのやり取りもあって無性に秋田名物が恋しくなってしまった。
その勢いのままに注文した秋田名物・稲庭うどんに比内地鶏ステーキがちょうど電話の直前に届いたのだ。
うどんはお湯で3分ゆでて、うどんつゆは水に入れて解凍。比内地鶏は袋ごとレンジでチンするだけ。
指示通り手早く作れば美味しいにおいが立ち込める。

「……来年は現地で食べたいなぁ」

二年連続で立ち消えとなった秋田での試合。
来年こそは絶対秋田で試合をしたいと、心底思いながら比内地鶏を噛みしめるのだった。

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イーグルスのはなし

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7年ぶりに勝ちの味

「そういえば事務機ダービーで僕が勝つのって結構久しぶりですよね」
イーグルスは久しぶりの勝利への感涙をタオルで拭いながら此方に問う。
「七年ぶりになるか、随分汝も成長したな」
「速度はともかく成長しないものはないですから、これで安心して秋田遠征出来るなー!」
そう言いながらイーグルスは心地よい春の風を胸いっぱいに吸い込み、晴れやかな面持ちで空を見上げる。
正直に言えば今日の試合は最後のミスが響いてしまったように思う、しかしそれを誘い込むだけの地力を得たというのは正しく成長である。
「少々血の気が荒くも見えたがな、何度か揉めていただろう」
「あー、まあ、そうですね」
「何か心当たりが在るのか?」
僅かな躊躇いの後、周囲の目を確認して小さな耳打ちをする。

「……ここだけの話ですけど、今日うちの親が会長と一緒に来てたんですよね。勝ったら特別勝利給出すって言われてたんでそれでヒートアップしやすかったのかも」

そこまでこの試合に思い入れがあったのかと言う感想の前に、イーグルスは唇に人差し指を当てて他言無用を知らせてくる。
個人としての我らは付き合いの長い先輩後輩であるので話しても良いと判断したのだろう。
しかし内容が選手の士気に係わる事だ、我が必要以上に人の話す事を嫌がったのだろう。
「イーグルス、「はい?!」
「秋田土産は稲庭うどんを頼むぞ、我は稲庭うどんを食べた事が無くてな。ついでにいい酒を一本」
口止め料の意味も含め手土産を頼むと後輩は「……先輩のお望みのままに」とほほ笑んだ。


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ブラックラムズとイーグルス。
事務機ダービー楽しかったなー!

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似たり寄ったり

日が暮れて肌寒くなったスタジアムにはもう一部のスタッフしかおらず、撤収作業が始まっている。
「シャイニングアークス」
「はい?」
「今日はありがとうございました、よかったらどうぞ」
差し出された豚汁と箸を受け取ればほんのりとちょうどいい暖かさと味噌汁の香りが心を和ませる。
これは冷たくなる前に食べてしまうのが礼儀だろう。
「いただきます」
ずっと口を付けた味噌汁からは馴染みのある優しい味がする。
「……正直今日の試合内容のせいであなたの事ちょっと嫌いになりそうなんですが」
「えっ」
「だって、本当ならトライになってたものを何度邪魔されたことか」
グラウンディング(※トライの際にボールを地面につける行為、これをしないと得点が認められない)を幾度となく阻止されたし逆転勝利は立ち消えになるし、なかなかやっていてキーッ!と歯噛みしたくなるような試合だった。
「それはそうですが……」
「けれども全力でぶつかってきてくれた証拠でもありますしね、この豚汁に免じて許します」
ダイナボアーズは納得いくようないかないような、不服そうな表情をしながら「はあ」と呟いた。
「次は勝ち点を倍返しにしていただいていきますから」
「いえ、次はちゃんと勝ち点を頂いていきます」
ごちそうさまでしたと豚汁の容器を返すと片付けも終わりだ。

「次は私のホームでお会いしましょうね」




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シャイニングアークスとダイナボアーズ

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イーハトーブのもてなしを

「掃除はこれでよし、と」
グラウンドから枯れ草や鹿の落とし物(なんせ市街地を鹿が歩き回る土地柄なので)を回収し、袋の口を結ぶ。
ボランティアによるスタジアム整備ももうそろそろ終盤だ。
「……シーウェーブス」
「ああ、ダイナボアーズか。まだテント組むには早いんじゃないか?」
「天気や風を見たくて来たんだが」
「今日は大丈夫じゃろ、海風もゆるい方じゃし天気の急変もなさそうだからな」
うのスタは海が近いのでどうしても海風の影響を受けやすいし、芝も時々鹿に喰われたりする。収容人数も決して多くない小規模なスタジアムだ。
「いつもシーウェーブスのもてなしには感服するものを感じていたが、今回は直接関わり合いのないトップリーグの試合だと言うのに本当によくしてくれて助かっているんだ」
「うのスタで試合する奴はどこの誰でもみんなもてなすのがわしらの流儀なもんでな」
10年前のあの日、ラグビーが結んだ関係に救われて助けられた身の上だ。
ラグビーという縁でこの土地に来た人がここを素敵だと思って帰って行くことは本望なのだ。
「そうだ。今日の試合見にいくからな。チケットもとってある」

「……勝って帰ろう」

ダイナボアーズのその目に闘志の火がカチリと灯るのが見えて、ああ今日はいい試合になるなと確信した。

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シーウェイブスとダイナボアーズ

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ラグビーの友を探しつつ

「あーこの空気久しぶりー!」
うんと背伸びをしながら久しぶりに感じる甲州の風を思い切り肺に取り込んでいく。
メインホームである東京とはまた違うこの街の空気を浴びながらやる1シーズンに一度の試合は、俺のささやかな楽しみでもある。
「サンゴリアスさん」
「あ、お疲れ様。先に準備しといてくれて助かった」
昨日のうちに甲府入りしていたブルースが準備しておいてくれたグラウンドやテントの様子を確認すると、頭が下がる思いだ。
「今日は天気も持ちそうやけんみんな安心してやれそうで良かったっち思います」
「うん、そうだな」
ブルースが天気予報アプリと空の様子を見比べてそうつぶやく気持ちもわかる。
雨でも試合はあるけれど降らないに越したことはないのだ。
「あ、そうだ。今日ワイン持ってきてあるんだけど要る?」
行きがけに寄った道の駅で購入した甲州ワインの瓶を数本と、酒のつまみに購入した乾き物類をいくつか鞄から持ち出す。
「……先輩からの気持ちはありがたかことばい、だけんど今日はグラウンドで給水の手伝いがあるけん飲むんは遠慮しときます」
「ならしょうがないか、ワイン持ってく?」
「ええ」
赤と白を一本づつブルースにプレゼントしてやると、薄く笑う。
「ワインと一緒に勝ち点ば貰うて帰りますけん、今日は楽しみに」
「おっ、言うようになったな!」


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サンゴリアスとブルース。ときどき甲府で試合してるのを見ると結構アレ楽しんでるのかなあと思う。

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