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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

愛をこめて花束を

通勤途中に花屋の軒先に並ぶ早春の花を見て、あの人に渡そうと思った。
突然風に攫われたように亡くなってしまったあの人は開幕戦の惜敗をどんな想いで見ていたのか、聞いてみたくなった。
ブーケを買った俺はスタッフさんに連絡だけして、あの人に会いに行く。
春の匂いがするブーケを揺らしてあの人が眠る場所へ向かう。
府中から一時間弱、慣れない道はスマホに教えてもらいながら辿り着いたそこにあの人が眠ってる。
「ユハさん、花束買ったんだ」
墓石にそう語りかけながら買ったブーケをそっと花瓶に生けておく。
どうかなと語りかけても返事はない。
「ねえ、ユハさん。この間の試合の時さ、喪章つけてたんだけど気づいた?あれね、ユハさんのために作ったんだ。俺も手伝ったんだよ」
ああだこうだと語りかけて見ると、ああ本当に俺は大切な人を亡くしたなあって思う。
「ユハさん、俺みたいに長く生きてても死に別れってほんっとに慣れないもんなんだよ」
特に風に攫われたみたいにいなくなった人はね。
俺には何もできないけれどさ、春を告げる花束を持ってきた。


「ね、ユハさん。もう春だよ」


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ブレイブルーパスさんの早春の話。
タイトルはあの曲から。

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待ちわびていた今日のため

「なんか今日まで長かったねえ」
試合会場の開門に向けた準備を終えて、アルコールで手を拭っていた時ぽつりとスピアーズが呟いた。
門の外には開場を待ちわびる人がちらほらいる。
「……一年近く試合しとらんかったけんね」
「中止になったの3月だもんね」
そう思うと今までよりも長いオフシーズンだったことを改めて気づかされる。
本当ならば1月には開幕してたはずのリーグ画延期され、ようやく迎えられた今日の重みは大きい。
「ブルース、俺つくづく思ったんだけどね」
「うん?」

「やっぱ、俺ラグビー大好き!」

「……みんなそうたい」
長い一年は終わった。
俺たちの手元にようやく、ラグビーのある日常が帰ってきた。
遠くのスタッフが開場知らせてくるのと同時に響く足音はどこまでも明るく高らかに響いた。


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スピアーズとブルース。
ようやく帰ってきたラグビーのある日々に感謝!

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出来ない日々と出来たこと

試合が終わり一通りの片づけを終えた後の手指消毒とマスクももはや日常になってきた。
勝利に浮かれながら飲む酒もうちにつくまでお預けだ。
「ウォーターガッシュ、今日はありがとう」
「こちらこそ遠路はるばるの移動ありがとうございました」
握手のために手を伸ばそうとして「今は握手じゃないほうが良いのか?」と聞くと「海外だと肘が主流らしいですね」と告られる。
「じゃあ肘で」
こつんと肘を合わせると「なんかこういうのあったな」と口からこぼれる。
「2700?」
「いや、それじゃなくてnhkの……何だったか」
いまいち思い出せない事を引っ張り出すのは諦めた。

「開幕戦も無事できて良かった」

無観客の寂しい会場ではあったけれど、画面越しの声援コメントを時々覗き見ればやはりラグビーができる嬉しさが募る。
未だ出来ない事も多い日々でようやくラグビーのある日常を取り戻せた喜びは大きい。
「終わったことはどうでも良いでしょう、次は負けません」
「……そうだなあ」
ラグビーのある日々を続けていく。
そのための努力の日々はまだ続いていくし、それでもラグビーをするという熱意はまだ胸の奥で燃えている。


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シーウェイブスとウォーターガッシュ。
トップチャレンジ無事開幕!!!!!

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仲間外れと苦手意識

スポライブからの賑やかなトークに耳を傾けながら、先月分の活動費用の総計をテキストにまとめていく夜。
長いパソコン作業で固くなった身体をストレッチで軽くほぐしながら選手たちのトークに耳を傾けていると、やはり参加できる人員を探すべきだったのかなどと悩んでしまう。
どうしても都合が合わないからと断ったオンライントークイベントの誘い。
主催であるシャイニングアークスさんからではなくブレイブルーパスさんから先に聞いていて、数日遅れで誘いが来たときもしかしてそう言う事なのかもしれないなどと思ってしまう。
トップリーグ歴の浅いので自分と親しいものは少なく、どうにも厳つい雰囲気や身内のイメージもあって苦手に思われてるような気はしていたので仕方がない。
(……ほんわか、と言う柄ではないのも自覚済みだしな)
もちろん選手個人でなら向いている人もいるが、選手たちの予定も埋まっていたのだから仕方ない。
『結局お前オンラインイベント来ないのね』とブレイブルーパスさんに言われたときはちょっと申し訳ないような気がしたが、長い付き合いの面々で楽しくやってもらうほうが良い。
ストレッチを終えてから、小腹をココア風味のプロテインで満たす。
リーグを盛り上げる事だけが仕事じゃあない。こうした裏方の雑務も必要なのだと呟きながら、両手をキーボードにそっと置いた。



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ダイナボアーズさんの独り言。
赤カントークイベント不在の裏側を勝手に捏造しただけなので実際のところは知らんです(重要)

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ひとりライド

人生には往々にして事態がマイナスに動くこともある。
けれどもそれはそれとして諦めて生きていかなくちゃいけないし、それなりの折り合いの付け方も必要なのだ。
「……さてと」
印刷し終わった新しい試合の日程表をカバンに詰めて、ホワイトボードに『関係各所へのあいさつ回りのため4時ごろまで不在』と書き込んでおく。
私物の大型バイクにスマホを取り付け、ナビアプリに予定のルートを入れていく。
近隣の小売店や宣伝用施設、応援してくれてる地元のお店を回りながら浜松方面へ。
親戚の所にも新しい日程や応援のあいさつもして、11時頃には浜名湖近くの舘山寺温泉で昼休み。
午後は浜名湖を散歩したり、少しのんびりして3時ぐらいに出れば余裕で間に合う。

(こういうのをサボりって言うんだろうけど、たまにはやらなきゃやってらんないよなあ)

バイクの調子を確認しながら開幕延期に落ち込む心の奥のもう一人の自分をなだめてみる。
ヘルメットをかぶり、手袋をつけ、リュックをしっかり止めてエンジンの鍵を刺す。
大型バイクにまたがって走り出せば冬の冷たい風が吹きつけてくる。
荒馬のような自社製の大型バイクは僕の動きにだけはぴったり寄り添ってくれる。
バイクは西へ、ちょっと寂しい心をなだめながら走り出す。

***

12時過ぎ、舘山寺温泉に到着。
ちょっと話し込んだりしたせいで予定より遅くなったけれど誤差の範囲内だ。
ぶらりと入ったうなぎ屋さんでは、浜名湖のよく見える席に通してもらえた。
「うな重並とうまき1つお願いします」
ホカホカのお手拭きで手を拭いながら冬晴れの浜名湖が綺麗だ。
いつもなら見ることのないこの季節の浜名湖をのんびり見れるのは嬉しいような、寂しいような。
試合の隙間時間に海外の試合や過去の試合を見たり練習メニューについて改めて考え直したりしてみたけれど、やっぱり試合がしたいという気持ちは募っていく。
(今年があの人最後だもんなあ)
全部流行り病のせいだけれどせめて最後の試合ぐらいはちゃんとさせてあげたい。
延期された試合だって本当に開幕するのかも分からない。
ラグビーの失われた日常がじわじわと自分をおかしくさせていくみたいな、この感覚が怖くてたまらない。
もちろんいつかこの状況は終わる。けれどこの異常事態が終わる前に、休部-それは事実上死ぬという事だ-となれば?
遠くからうなぎの香りとともにお店の人の気配がする。
「お待たせしました、お先にうな重です。う巻きは現在焼いていますのでもう少しお待ちください」
「ありがとうございます」
うなぎの甘辛い匂いとごはんの匂いは幸せだ。
いただきます、と小さく呟いてたれの染み込んだごはんを思いきり口に放り込む。
甘辛いたれと炊き立てごはんの甘さがほっこりと気持ちを明るくさせる。
ほんと、美味しいものの前に人はあらがえない。


「……そうだ、デザート買って帰ろ」

今日だけは思う存分好きなことをしよう。
不安な未来を正しく怖れるためには、きっとこういう事も大事だろうから。


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ジュビロ弟のサボり。
ゆるキャン△見てたら浜松行きたくてしょうがない。

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