確かにあれは恋だったのだ。
いつだって一緒に笑ってくれた人を、いわば自分で殺してしまったようなものだ。
だけれどそれはある意味で必然だった。
ならばなんて不幸な必然だろう。
寂しい歌が聞きたい
「つくば」
「・・・・・何?」
「つくづく思いますけど、あなたは筑波に似てるようで似てないですよねぇ」
ぷにっと顔をつねってみる。
「ちょ、痛い痛い痛い!」
「筑波はいつも笑ってたんですけどねぇ」
「いやここで比較するのはおかしいよね?」
ああ本当に理屈っぽい。
妙に理屈っぽいのは私に似たんだろう、県民性という可能性も無きにしも非ずということにしておこう。
「筑波は素直でしたよ」
「あの人はいい意味で単純だったから」
息子からそう解析されていいのかは甚だ疑問だ。
実際そうだと思うけれど。
***
『筑波は私を憎くないんですか』
『いいや?おらは茨城がでっけくなってくれればいい』
学園都市構想の受け皿にふさわしくないという理由により、筑波は将来的に消滅することが決まっている。
『それに、東京がおらんとこ選んでくれたのがうれしい』
そうやってあまりに悪気なく笑うものだから無性に泣きたくなった。