胸の奥に閉じ込めた思い出がある。
海の向こう、外地という名の異郷の匂いを背負った少年と過ごした記憶だ。
今はもう会う事も出来ない彼のことを覚えてる人ももうずいぶん少なくなってしまった。
「ねえ、呉」
「はい?」
「もう会えない人に会いたいって、思った事はある?」
今、目の前にいる年の離れた友人はその問いに困ったような顔をした。
「……俺の会いたい人はいつも近くにいてくれますから」
きっとうまい返事が思いつかなかったのだろう。
呉なりに言葉を選んだ答えだった。
「それは、すごく幸運なことだよ。大切にしてあげな」
俺の、もう一度会いたい友達は、あまりにも遠くにいる。
広畑と呉と広畑の遠い友達。