「・・・・・今日で何度目だっけ徹夜」
「7日目です」
どうも七夕が近づくと調子が狂う。
まあ諸悪の根源は鷲城と祇園城陥落なんだけど。
(やばい、)
倒れるかもと思ったとたんに倒れて意識を失った。
笹の葉は夏風に揺れて気づいたときにはあの見慣れた蔵の中にいた。
「やっと起きたんですね」
「なんでこの家に?」
ため息を漏らすと、僕に冷たい麦茶を渡して簡潔に説明してくれた。
「睡眠不足で倒れたんでしょう?その後に部下の人がここまで運んで下さったんですよ。ほらゴーヤチャンプルーでも食べて」
麦茶と一緒に運ばれてきたものは、朝ごはんにしては少しガッツしていたので時間を見るとお昼を少し過ぎたころあいだった。
「さっき電話があったんですけどしばらく有給休暇消化しておけ、というのがそっちの上司さんからの伝言です」
「有給休暇そんなに溜まってたっけ・・・・?」
「電話によるとここ10年分の有給が一切手を付けられずに溜まっていると」
言われて見ればそうだったかも知れないな、と思い返して苦笑いした。
割と苦味の抜けたゴーヤは寝ぼけた舌にはちょうどいい刺激になった。
「まあ私も似たような物ですけど、ところでゴーヤはこれぐらいが好みでしょう?」
「・・・・・・そういえば教えてたっけ」
「ずっと見ていたんですから、分かって当たり前です」
そういえばそうなんだよな。
ふと思い返せば小さい時から俺はこの人といたのだ。
「俺のどこが好きなんですか?」
「全部に決まってるでしょう。こうやって仕事の時に無理するところも、料理下手もあなたが貴方である全てです。」
真顔で言う相手に俺は何も言えずに麦茶を飲み干した。
・・・・・・というかあんまり盛大な告白しないでくれません?
「あと16日まで有給が降りたそうですからしばらくここにいたほうが良いと思いますよ、どうせ有給を有給として使えない人ですし」
「・・・・・その通りです」
庭の笹の葉の揺れる優しい音が夏の少し蒸し暑い風と共に入り込んできた。
結城の小山に対する愛情は年季が入ってるので分かり過ぎるくらいに分かってると思う。
逆に小山はいればいるほど分からない部分に気づいて行けば良いなと。
そんな二人に私が禿げます。