忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

つまりお前が主役です

メディアカンファレンスで久しぶりに全員が集まっての打ち合わせが行われることになった。
そして打ち合わせの最後に渡された新リーグの試合日程表を見たとき、俺は思わず立ち眩みを起こした。
「「スピアーズ?!」」
「いや……ゴメン思わず気が遠くなって……」
思い切りぶっ倒れて床に頭を打った俺をグリーンロケッツとシャイニングアークスが起こしてくれる。
「確かにこれはビビるわなぁ、開幕戦の担当ってめっちゃきついし。ほら、椅子」
スティーラーズ先輩に勧められるままに椅子に腰かけてもう一度日程表を見返す。
「……俺が国立での開幕戦担当でしかも相手がワイルドナイツさんって、責任重くないですか?」
「日本代表キャプテン所属チームなんですから良いじゃないですか」
「確かに俺のダーリンはキャプテンになりましたけどね?!俺が南アフリカから連れてきた最高のイケメンはキャプテンですけどね?!」
「代表クラス選手を擁するエリート軍団どうしと思えば妥当な組み合わせじゃないですか」
「そうだけどさ?!」
その横ではステーラーズさんが「ラピースの事ダーリンなんて呼んどるん?」とグリーンロケッツに確認してた。
平尾さんに対する感情のデカさで周囲を困惑させてたスティーラーズ先輩に言われるのは不服だがもうそこはどうでも良い。
「スティーラーズ先輩変わって?!」
「平日の試合やろ?神戸から東京行くのめんどいわ。俺に勝ってベスト4に入ったんやし、十分背負える荷物やろ」
「そうはいっても~」
「俺もリーグ開幕戦はやったしいい経験になるで」
当然の責務だという表情でそう言い話すと「おっ、シーウェイブスおるわ」と言って行ってしまった。
「正直もう今から既に胃が痛いんだけど」
「上り損ねた私の代わりに楽しんできてくださいよ、国立」
「そうだよー、俺も国立で試合したいけど選ばれたチームじゃなきゃ行けないしねー」
「シャイニングアークスもグリーンロケッツも頼りにならない……」
思わず顔を覆った俺に「スピアーズ」と声がした。
「ワイルドナイツ」
「リーグ開幕戦だろうが優勝決定戦だろうが何だろうが、試合に勝つことしか俺は考えてないよ」
そう言って口臭予防のミントガムを俺に渡す。
「開幕戦よりカンファレンスの事考えたほうが良いんじゃないの」
「確かに」
そう思ったらちょっと気持ちが落ち着いた気がする。
ミントガムを口に放り込んだらちょっとオレンジ風味がする。
「まあそっちのほうが先だよねー」
「あとグリーンロケッツ、フミのことよろしくね」
「もちろん!このミラクルセブンは引退まであの人についていくよ!」
ガムを噛みながらまずは目の前の事に向きあおう、と心に決める。
いい波に乗っていけば開幕戦も何も、きっと怖くない。



-----
最近のスピアーズがヤバすぎるって言う話でした。

拍手

PR

苦い船出と甘い菓子

「たこまん連れてってくりん」
「……ハア」
試合後のどこか暗い気持ちを隠しながらシャトルズさんの所へ挨拶に行くと、そんな無茶振りが来た。
「看板見てたら気になってのん、アザレアに聞いたら美味しいよって言ってたで食べまいか」
「あざれあもおかし食べたい!」
今回も裏方さんのお手伝いで連れてきていたアザレアもすっかりその気になっていて、スタッフに目配せするとどうぞどうぞと頷いた。
「アザレア、お菓子は一日?」「いっこまでー!」
「ちゃんと守れるならアザレアも連れて行きますよ」
「うん!」

***

車で10分弱のところにあるたこまんはこの辺りではお馴染みのお菓子屋さんだ。
地域のラグビー協会スポンサーとして今回お世話になったし、シャトルズさんもヴェルブリッツさんへのお土産にはちょうどいいのだろう。
「タコのお菓子はありゃーせんな」
「そういうもんですよ、お土産なら大砂丘とか良いんじゃないですか?」
「色々あるでのん、アザレアはどうするだん?」
「パフェにするー!」
一瞬首をかしげると、そう言えばここはカフェも併設されていたことを思い出す。
併設のカフェで出されているメニューには確かにクラウンメロンのパフェが紹介されている。
「このクラウンメロンのパフェですか?食べ切れます?」
「うん!」
ちょっと量が心配だが最悪残りは僕が食べればいいかと割り切る事にする。高いのはご愛敬だ。
僕のほうは大砂丘とコーヒー、シャトルズさんはお土産のお菓子とは別に二種類のマリトッツォを注文してくる。
「しゃとるずのおにーさんも甘いのすき?」
「こんきい時の甘いもんは好きだあ」
わいわいと話を弾ませる二人の横で僕だけがどうにも苦い気持ちが残る。
初めての船出の試合で三部リーグであるシャトルズさんにボコボコに負けるという失態。
(これで有観客だったら本当に恥ずかしさで死にたくなるな)
苦い気持ちはぬぐえない。けれどこれからも日々は続く。
失態は早く切り替えたほうが良いのは分かっててもなんでだかうまくいかない。
「お待たせしました。コーヒーふたつとミルクティー、大砂丘とマンゴーマリトッツォとマスカットマリトッツォ、クラウンメロンパフェでございます」
ミルクティーはアザレアが選んだ。砂糖を入れればアザレアも飲める味になるし、何より本人も大人気分になれるようでよく注文している。
するとアザレアが「ねえ、」と声をかけてきた。
「メロンひと切れあげるから元気出して」
「アザレア……ありがとう」
せっかくなのでそのメロンをひと切れ受け取ると温かい気持ちになる。
アザレア、控えめに言って天使なのかもしれない。
「ちんびいにいい子じゃんね。レヴズ、俺のもおもやいっこしまいか?」
「おもやいっこって何ですか?」
「分けっこ」
「それは大丈夫です」「うん」
そう言いながらさっそくマンゴーのマリトッツォにかぶりついて「美味い」とつぶやく。
頬には思い切りマンゴークリームがべったりついていて、それが妙におかしくてつい笑ってしまう。
「早く食べりん」
「そうですね」
かじりついた大砂丘はふわふわで甘くほんのり秋の味がした。



-----
ブルーレヴズとシャトルズとアザレア。
三河弁わかんないのでミスがあればこそっと教えてください。

拍手

逢いたかった人

「……という訳で今度のともだちマッチはキャンセルさせてほしい」
『そんなぁ』
電話越しに落ち込んだ声を隠さない後輩に自分としては「すまないな」としかいうことが出来ない。
このご時世でも岩手に行くと言ってくれたブルーレヴスには申し訳ないが、今は人を呼ぶのも厳しい状態になってしまった。
「こっちも本当に感染予防の体制が整えられない状態になってしまった以上、お前さんに迷惑はかけられん」
『いや分かってますけどね……まあ、今回は直で説明頂きましたしもうこれ以上文句は言いません』
「本当にすまないな」
『これは全部コロナのせいですからね』
乾いた笑いを零しながらうんうんと思わず頷いた。
こんなご時世でなければもっと自由に試合をしてラグビーの季節の始まりを全身で味わえただろうと思うと、悔しさしかない。
『代わりと言っては難だが、今度のお前さんの初陣は精一杯応援させてくれ』
19日にはブルーレヴスとしての初めての試合が控えていることは知っていた。
初陣にあたるその試合は日本中のラグビーファンが注目する試合だろうという事は予想がつく。
本当は詫びの品でも送るべきだろうがあいにく財布が寒々しくて出来ることがそれぐらいしかないことは黙っておく。
『見てくれるんですか?』
「ああ、お前さんのために今できることがそれぐらいしか無いしな」
『ありがとうございます』
厳しい時代に船出を迎えた後輩に、半歩先の先輩としていえる言葉はひとつしかない。

「頑張れよ」

『シーウェイブスさんも、もう少し落ち着いたら試合しましょうね』


----
シーウェイブスとブルーレヴズ

拍手

祭りの後の静けさに

「ああああああああ~……」
パラリンピック閉会式中継用カメラのセッティングをしながらこぼれたため息に、隣にいたシャイニングアークスさんがこっちをにらみつけた。
「ため息がでかすぎません?」
「だって寂しいじゃないですか、夏と一緒にオリパラも終わっちゃって……」
「あなた一番ノリノリでしたもんね、毎日マスコットと試合実況してましたし」
「中継担当の手伝い名乗り出たのは確かに僕のほうですけど、実際もうすぐ終わりってなると寂しいですし」
「気持ちはわかりますけどね。カメラの準備出来ました?」
「どうぞ」
カメラ端子を繋いで特設サイトでの中継準備を進めるシャイニングアークスさんに対し、僕のほうはもうカメラの設置準備の進捗確認だけなので隣に腰を下ろす。
「これでしばらくお祭りがなくなっちゃいますねえ」
「たった半年の我慢ですよ」
「新リーグ?」
「それ以上の祭りが僕らにあります?」
シャイニングアークスさんがニヤリと悪巧みを思い付いた子供のように笑う。
「確かに」
この世界最高の祭りは今日で終わる。
だけどまだ楽しい事が僕らを待っているのだ。



-----
イーグルスとシャイニングアークス。
五輪ゴールドパートナー(親会社が)コンビでした。

拍手

引っ越しおろしそば

引っ越し祝いに貰ったものを自分の部屋に積み上げながら、ふうっと小さくため息が漏れた。
乾麺のそばやお酒類、引っ越し祝いの花束、金券やカタログギフトの冊子、タオルや箱テッシュなどその量は結構なものだ。
「ワイルドナイツ生きてる〜?」
「勝手に人を殺すな」
ひょっこり顔を出したアルカスが「いや外も人が多くてすごかったから」とつぶやく。
俺の新しい拠点となるさくらオーバルフォートに拠点を移したアルカスはいわばご近所さんであり、引っ越しの合間にちょくちょく顔を出してきていた。
「結構メディアも来たからね」
「注目度が桁違いだわ、昼ごはん食った?」
「食ってないけど何?」
「いやこのそば貰っていい?」
「俺の分も作ってくれるなら、冷蔵庫の食材好きに使ってくれていいよ」
「数日分のご飯代浮いたな」
そう言いながら乾麺のそばを持って台所で早速料理を始めてくる。
太田から持ってきた荷物は一通り出したがとりあえず誰から何を貰ったかを把握し、遠方から引っ越し祝いをよこしてきた人たちには礼状の準備も要る。
花束も意外に多いので花瓶が足りるか不安になってきたが、最悪ペットボトルに刺して置けばいい。
それに明日様子を見にくると連絡してきた身内の相手や、9月以降に本格稼働する施設の担当者への挨拶は必須だろう。
「……引っ越し準備もうやだ」
「引っ越したじゃん」
「まだ開けてない荷物が積んである」
「のんびり開けてけばいいじゃん」
そう言いながらアルカスがサクサクと手を動かしていく。
湯がいたそばに大根おろしと麺つゆ、刻みネギや茗荷などの薬味類、細かくしたサラダチキンがさっと乗せられる。
「へいお待ち」
「ん」
とりあえずもう考えるのはやめよう。
日が暮れてメディアが帰ったら体を動かして、シャワーも浴びて、今夜はしっかり寝よう。
そばを思い切りかき混ぜてずるっと啜れば爽やかな味がする。
「……72点」
「微妙な点数やめて」



_____
ワイルドナイツとアルカス。熊谷へのお引っ越し編。

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ