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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ラストゲームは君と

最後の一球が蹴り出され、試合終了の声がスタジアムに響いた時何故か無性に泣きたくなった。
「あ゛ー゛……優勝出来なかったなあ」
ひと席空けて隣にいたサンゴリアスが伸ばしていた背筋をだらんと後ろに傾けて空を見た。
ここ数日の悪天候からは想像もつかないほどによく晴れた東京は蒸し暑いくらいだ。
「前半うちの優位で進められたのが大きいかもね」
「まあそうだけどな、審判もまあアレだけどそこは選手で合わせられないといけないわけだし」
「何より今日は福岡堅樹のラストゲームだから気合の入り方も違ったのかもね」
「……ボーデン・バレットも今日が最後だよ」
文句を言いたげにそう告げたサンゴリアスに「それもそうだけどね」と呟いた。
そう考えると今日はいろんなものが随分と終わりを迎える日だということに気づく。
「後で試合見返しながらオンラインで感想戦しようよ」
今日の試合は今日だけに留めておくにはもったいない。
節目の試合でありラストゲームだ、骨まで味わい尽くしたい。
「いいよ、ただ先輩が焼肉連れてってくれるって言うからその後でいい?」
「むしろブレイブルーパスさん参加して貰えばいいんじゃない?」
「じゃあそっちも人呼んでよ、アルカスさんとかさ」
「アルカスはちょっと無理だけど人は呼んどく」
これは全ての終わりのゲーム。その舞台に共に入られたことを俺は心底誇りに思っているのだ。
そして、始まりの舞台にも二人で立ってやろうじゃないか。

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ぽんぽこたぬきは吉兆か

『うちのグラウンドに狸が出た!』
サンゴリ明日からハイテンションのLINEとともに届いたのは、芝生で一休みする一匹の狸。
そこそこの大きさのように見えるし大人だろうか。
『都内で狸ってたまに見るぞ?』
『そうなの?!』
『ブラックラムズのところはよく見かけるって聞いた』
サンゴリアスはまだ若いから見たことがあまりないのだろうが、ブラックラムズやグリーンロケッツの所にはよく出てくると聞いた。
でもまさか狸でこんなにテンションが上がるのか。
(こういうところは都会育ちだよなあ)
戦前生まれなんかむしろタヌキは捕まえて食うものぐらいの感覚だろうに、と思うと苦笑いがこぼれる。
『珍しいから明日優勝できるぞって意味だと思ったのにな(´・ω・`)』
明日の日本選手権の吉兆と言う風にとらえたらしく、しょんぼりの顔文字までつけてくる。
『神頼みはいいけど最後は実力だろ』
『そうだけどね』
『タヌキは他を抜くで吉兆と思うのは間違いじゃないけど、最後は実力で勝たないとな』
『優勝したら酒奢ってね』
調子のいいスタンプまでつけてくるサンゴリアスに思わず苦笑いが漏れる。
俺より強いくせにこういうところでは後輩っぽいところを見せてくるからずるいよなあ、と思いながら『次の週末ならいいぞ』と返信をした。
せっかくだしたぬき汁でも探してやろうと思いながらスマホの検索画面に狸と打ち込むのだった。


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ブレイブルーパスとサンゴリアス。
公式がたぬきでテンション上がってて可愛かったので。

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大舞台で待ち合わせ

『決勝進出おめでとう』
ワイルドナイツからの第一声はそれだった。
試合後の浮かれ騒ぎのなかでかかってきた電話の声はどこか熱があった。
「ありがと、また今年もこの組み合わせだな」
『順当でしょ』
「そうだけどさー、試合前にLINE送ってきたろ?決勝で待ってるって。ちょっとは負ける可能性考えてたろ?」
『ちょっとだよ、8割がたお前が勝つかなって思ってた』
「残り2割は負けかよ」
『勝負は時の運だしね』
それを言われると言い返せなくてちょっとムッと来た。
「俺は100パーお前が勝つと思ってたんだけどなー」
『そうなんだ?』
「おう、お前のラグビーをよく知ってるのは俺だしな!」
しばらく妙な間が空いて『……一瞬求婚しそうになった』と呟いた。
「お前と一緒になったら試合できないじゃん」
『そうだけどさ……俺の純情もてあそんでない?』
「純情もてあそんでないって、一番のライバルとしてパナソニックワイルドナイツをよく知って居るって自負があるだけだよ」
俺の言葉にワイルドナイツは深い深い溜息を吐いた。
果たして俺は呆れられるようなことを言ったか?と疑問が沸く。
『……まあいいや、23日楽しみにしてる』
「俺も!」


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サンゴリアスとワイルドナイツ。

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2度目の奇跡は呼ばせない

これはゾクゾクするほどにいい試合になる、と開始10分で確信した。
真剣での立ち合いのようにギリギリの鍔迫り合いの様な試合で、個人技で魅せてきたスティーラーズさんに規律と連携の徹底によって抵抗し続けたスピアーズ。
相手のミスを誘発させる技量も、個人技の極みのような華麗なキックも、全てが最上級。
「これはどっちが勝っても楽しいやつだな」
勝った方が来週の対戦相手だと思えばよりワクワクも上がっていく。
一瞬たりとも見逃したくないと思える80分の攻防戦。

制したのは今まで大舞台と無縁だったスピアーズだった。

すぐに感想を言いたくなってスマホを引っ張り出し、即通話ボタンを押した。
『はいはい?』
「さっきの試合めちゃくちゃ面白かった!」
『何、それ言うために電話してきたの?!』
「当然じゃん!面白いもん見せて貰ったお礼言いたくもなるじゃん』
『……うちの人たち、カッコいいでしょ?』
電話越しの声色はいかにも嬉しそうでドヤ顔がありありと想像できるほどだった。
「うん。うちの人たちほどじゃないけど」
『そう言うとこー!!!!!あ、スティーラーズさんが話したいって言うからハンズフリーにするね』
ピッという音とともに『もしもーし』と言う声がした。
「お疲れ様ですー」
『スピアーズくんなー、めっちゃ強なってるから寝首かかれんように気をつけなはれや!』
チャンカワイのモノマネとともにスティーラーズさんなりにスピアーズくんをたたえてくる。
普通なら勝てただろう相手に負けるのは悔しさもひとしおだけれど、ここでちゃんと相手を称えられるあたりは先輩なんだろうなあと思う。
「でも誘発抜きにしてもミス多かったと思うんですけどね」
『そう言う日もあるわ!とりあえず俺はねーさんに叱られてくるから来週サンゴリアスが落とすの楽しみにしとくわ〜ほな、またな』
『俺もドーンとそっちにぶつかってそのまま倒して決勝行っちゃうから来週よろしくね!』
「何楽しみにしてんですか!ちょ、ちょっと!!!!!!!」
俺の意見も聞かずに電話が切れる。
なんか盛大に煽られたせいか余計に勝ちたくなってきた。
「……トレーニングしてこようかな」
来週勝って最後の優勝カップをうちへ持ち帰るために。



サンゴリアスとスピアーズとスティーラーズ。
すごい……すごい試合でしたね……。

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My Way

仕事から練習までの短い隙間時間に、香椎浜に向かうとレッドスパークスは海を見ていた。
小さく何かを口ずさみながら曇りなき空と美しく輝く芝生を眺めていた。
「レッドスパークス」
「ブルース、どうしたんですカ」
「……天神で仕事があったけんお前さんの顔ば見に来た」
それは嘘じゃなかった。ただ会いに来たのは一つの気がかりが合ったせいだった。
レッドスパークスの目はいつもの底抜けの明るさと違う薄暗い色を帯びていて、その目には見覚えがあった。
この世を去った神戸の友と最後に会ったときと同じ眼差しだ。
「そうでしたカ、てっきりワタシ心配されてるのかと思いましたヨ」
無理に笑おうとして微かに口角が引きつっている。
「なんでこれからが一番楽しいときに退場しよると」
「親の命令ですからネ、だぁれも相談してくれずに突然活動休止ーって」
「誰も?」
「うちの親も向井サンも部長もだーれも言ってくれなかったんですヨ?酷いですよネー」
いつもと変わらないどこかおどけたその口ぶりは真意を感じることが難しい。
だから果たしてその相談なしで、というのが親心であったのか急すぎて余裕がなかったのかもはかり知ることは出来ない。
じわりと目から涙がにじむ。
日が暮れて空がオレンジ色に染まっていくのが、滲んだ目から見えた。
「まあもしかしたらシーウェイブスさんやファインティングブルズくんとこみたいにクラブチームって可能性もありますシ、まだ泣くには早いですヨ?」
「そげなこと、言うな」
ぐりぐりと目元を拭いてその赤い目を見る。
何かを諦めたような赤い眼差しが今だけはひどく、憎たらしい。
「それにもしもの事があっても、ブルースや先輩やナナがワタシの事覚えておいてくれるでしょウ?


ワタシの道を行き切った男として、ネ?」

夕日の向こうから船の汽笛が聞こえた。
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ブルースとレッドスパークス。
廃部報道でまだ情緒が落ち着かない。

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