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コーギーとお昼寝

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僕の愛するブラザーフッド

一発勝負の試合に負けた事よりも、敵としてであってもラグビーでの再会を喜びただ抱き合って泣いた2人の姿に泣いてしまう。
曇天の江戸川区立競技場で敵として再会した唯一無二の親友二人の間には誰も立ち入らせない空気があった。
「お疲れ様でした、シャイニングアークスさん」
そう言ってイーグルスがポケットティッシュを渡してくれ、それで目元と鼻をぐりぐりと拭う。
イーグルスの方も目が潤みこそしているが泣くのは堪えているようだ。
「……今になって後悔が深まってきますね」
「移籍のことですか?」
「お互い事情があったとは言え急な移籍で離れさせてしまいましたからね」
二人の関係の深さは周知のことだったし、それも一番近くで見てきたのは僕だという自負もある。
『情がなければ人を理解し切れないが人間に深く情を入れ過ぎれば辛くなる』
かつて父にはそう言われたけれどこうして二人の姿に泣いてしまう僕は情を向けすぎているのかもしれない。
「シャイニングアークスさん、友情は距離で壊されるものじゃありませんよ」
「そうですけどね」
イーグルスは二人の姿を穏やかに見守る。

「ナキに日本最高の舞台、見せてあげてくださいね」

それは僕の心からの願いであった。
事情から手放した男への最後の花向けと言い換えてもいい。
「当然ですよ」
イーグルスの声には覚悟が滲んでいた。

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シャイニングアークスとイーグルス。
試合後に抱き合うナキさんとしょけさんに泣かされたオタクいっぱいいると思うんすよ。

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ラストゲームはあの人に

あの人はラストゲームになったその試合を観客席から見つめていた。
今シーズン限りで現役を終える人を最後の晴れ舞台に立たせることのできなかった己の弱さに、涙を滲ませながらスピアーズの元へ挨拶に行く。
「お疲れ様でした」
「そっちこそお疲れ様、俺もうちのキャプテンとゴローさん戦わせてあげたかったな」
スピアーズはポツリとそうつぶやいた。
「あの二人仲良いですもんね」
「うん、まあ俺のいう事じゃないけどね」
「……最後のトップリーグ決勝をあの人の花道にしてあげたかったのになあ」
それでも僕が泣くわけにはゆくまい。
1番決勝の舞台に立てた事はきっとあの人だろうから。

「俺たちにできるのは、せめて心からのお疲れ様とありがとうだけじゃない?」

スピアーズが観客席の方をちらりと向いてそう告げた。
その言葉は僕ではなくきっとあの人に向けられているのだろう。
「スピアーズもそういうこと言うんですね」
「ジュビロは俺をどういう存在だと思ってるのさ!」
「ラグビーと米以外のものに興味がないと思ってたので」
「人でなしみたいにいうのやめてよね〜」
あの人へ美しい花道を捧げられなかったけれど、心からの感謝と愛情をここから捧げよう。




———
ジュビロとスピアーズ。
この敗北はジュビロにとって本当に悔しいだろうけれど、今となってはお疲れ様しか言えないな……。

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ごちそうにしよう!

「聞いてよ!きょうの劇的勝利!」
上機嫌のグリーンロケッツが大量の荷物を抱えたシャイニングアークスを引き連れてうちに来た。
遠征の荷物とスーツもそのままにこっちへ寄ってきてくれたのだろうか。
「開始早々の先制ゴールに最後の最後でもぎ取ったポイントゴールのあの曲線!かっこよかったでしょ?」
「テレビで見てたよ、よかったね」
「そんなミラクルセブンのために美味しいお米を炊いて欲しいんだけど!おかずはあるよ!」
疲れのにじむシャイニングアークスの荷物をもぎ取って出してきたのは、大阪名物のイカ焼きやちりとり鍋のセット。
さらに豚まんやチーズケーキにお酒の飲み比べセットも出てきて、上機嫌で大阪土産を買いあさったのだろうなと言うことは察しが付く。
「このミラクルセブンのために作っといて!あ、三人分あるから安心して!」
そう言ってちゃっかりテレビの前に陣取ってチーズケーキとワインを開けると他会場でのリーグ戦を見始める。
「チーズケーキにワインって美味しいのかな」
「……ツッコミどころそこですか?」
よれたビジネススーツを身にまとった疲れ気味のシャイニングアークスが呟いた。
その疲れ具合から、職場からそのまま訳も分からず連れてこられましたという状況がありありと想像できる。お疲れさまとしか言いようがない。
「別にご飯作るの嫌いじゃないしね。ちりとり鍋は普通の鍋で良いのかな?
あ、ごはんは冷凍のがあるから好きなだけ解凍して食べちゃっていいよ。シャイニングアークスも食べてきなよ。冷蔵庫の残りものだけど鯖味噌あるよ、好きでしょ?」
鯖味噌と聞いて一瞬ピクっと表情が動いた。
仕事による多忙で普段は粗食気味のシャイニングアークスだが、和食党で最近は鯖が好きなことを俺は知っている。
「いただいてもいいんですか」
「うん、だいいち繁忙期はプロテインとカロリーメイトで生き延びてる人をほっとけるほど冷血じゃないしね」
「じゃあ、甘えさせてもらいます」
そう言って冷蔵庫からご飯と鯖味噌を電子レンジで温める。
遠くからグリーンロケッツの「肉まんもあっためといてー」と言う声がする。
「自分でやりなさい」
「えー?このミラクルセブンのお祝いなのに~」
「祝われに押しかけてくるのは世界広しと言えどもグリーンロケッツぐらいでしょうね」
「まあまあ、俺があっためとくよ」
たぶんグリーンロケッツにとって一番の勝利のごちそうは、こうやってみんなで食べてるときなのかもしれない。
そう思えばこのちょっと奔放すぎる振る舞いも許せる気がする。



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スピアーズとグリーンロケッツとシャイニングアークス。
800日ぶり&今季初公式戦勝利おめでとう!

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男子三日逢わざれば

「今年のレッドハリケーンズくんはすごいわねえ」
姐さんがしみじみと言うように言葉を漏らす。
自主的にテント片づけの手伝いをしてくれるという姐さんにありがたく荷物の箱詰めをお願いし、俺は荷物をトラックに積み込む作業に勤しむ。
「ホンマですよね、今日はほんっとヒヤヒヤしましたわ」
「見てるこっちも肝冷やしたわよ、本物のマピンピとペレナラが見れたのは良かったけど……」
箱を閉じながらはーっとため息を漏らす。
「松岡君のトライが無かったらどうなってたことか、ほんとに想像するだけで恐ろしい試合だったわね」
「そこは否定できませんわ」
最後の段ボールを手渡すと「そういえばこのあとまっすぐ帰ってくるの?」と聞いてくる。
「すいません、レッドハリケーンズに夕飯誘われてるんですわ」
「そう、8時ぐらいまでに帰って来れる?一緒に呑みながら試合見ましょ」
「了解です」
姐さんは駅のほうへと歩いていき、スタッフや選手も神戸へと帰っていく。
この帰り路の時間というのは夢から現実へと移り変わる独特のまどろみがあるように思う。
「スティーラーズさん」
「おつかれさんやな」
レッドハリケーンズとともに現れたライナーズに「なんで居んねん!」とツッコミが口から迸る。
「試合あらへんから見に来てただけよ?」
「さっきそこの自販機んとこでばったり鉢会ったんで夕飯三人で行きましょ!」
そういやトップチャレンジは一足先にリーグ戦を終えていたのだったか。
言われてみれば納得の理由に「第三者の意見も必要よな」と呟きが漏れた。
「ほんならライナーズおすすめの美味い店にしよ、あいつのほうがこの辺の飯屋詳しいし」
「えー、俺きょうは混ぜカレーの気分やったんですけど」
「難波まで出なくても吉田駅のほうにめっちゃええカレー屋あるからそこにせーへん?俺のお勧め」
「……じゃあそこで」
男子三日逢わざれば刮目してみよと人は言う。
ならばその男追いつかれないように、俺も早く大きくなっていくために飯を食おう。そしてラグビーの話をしよう。
互いに強く大きくならなければ、最後に与えられる優勝の幸福は得られないのだから。


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スティーラーズとレッドハリケーンズとライナーズ。
今年の台風の目は大木巨頭をなぎたおせるのか。

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土佐は春のなか

「高知ってもっとあったかいイメージだったのにな……」
思ったよりも肌寒い空気に思わずため息が漏れる。
グラウンド整備を手伝ってくれた学生さんに挨拶を済ませ、カメラの準備をしていると「何ばしよると?」という声がする。
聞き覚えのある福岡訛りの主はブルースくんだ。
「キャンプテンズランの中継準備を」
「試合じゃ無うて?」
「ええ、試合中継はアプリでやりますけどねそれとは別に」
「変わった事ばしよるな」
ブルース君がぼそっとそんなことを言う。
「グリーンロケッツに比べればマシですよ」
「あん人も変わった事しよるけど……」
「あ、そこにある延長コードこっちに伸ばしてもらえます?」
ブルース君は何となく腑に落ちないという顔をしつつ、延長コードをこちらへと伸ばして渡してくれる。
「ちなみにブルースくんは何してるんです?」
「試合前にグラウンドをくまなく見るのがおいの習慣なもんで」
「君も大概変わってる気がします」
「そげん事はない、って思うとるんですけどね……」
首を傾げつつも再び彼はグラウンドの様子を見て回る作業に戻っていく。
陽が高くなるにつれ、肌寒かった風が少しづつ温まっていく。
南国土佐の春の日に開幕のホイッスルが鳴るまであとすこし。


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シャイニングアークスとブルース。

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