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コーギーとお昼寝

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或る師弟

「おや師匠、こんなところで珍しい」
本来この国にはないはずの赤と青の入り混じった青年の視線がこちらに飛んできて、思わず顔をしかめる。
「……あなたの師匠と呼ばれると寒気がしますね、浦項(ぽはん)」
「師匠は師匠ですから」
さらりと言い切ったその台詞には怒りすら沸いてくる。
恩知らずのクソガキの手元には付き合いの深い日本一を奪って行った自動車メーカーの封筒。
(分かっていても、殺意しか湧いて来ませんね)
ある時期、国の求めのままに釜石や京浜と韓国で仕事をしていた時期があった。
その時に育てたのがこの目の前の青年であるのだけれど、彼は私たちの誰にも似ることなく育った。
京浜が言うには目や耳のかたちが八幡に少し似ていると言っていたけれど、そんなもん似てたまるかという思いの方が先に出る。
まだらになった赤と青の瞳は不自然さを感じさせるが、この青年が生まれた時からずっとこういう色であったことを私は知っている。ああ憎たらしいったらありゃしない。
「どうぞ、風邪など召されないよう気を付けて」
「あなたは一生肺炎で苦しんで死んで欲しいですけどね」
「嫌だなあ、僕は死にませんよ。韓国鉄鋼業は僕と妹にかかってるんですから」

****

「君津サンのごはん久しぶりですネ!」
大盛りのカツカレーを目の前ににこにこと笑う南国青年……もとい、ミナスジェイラス製鉄所は素晴らしくいい笑顔であった。
技術研修という名目で2年ぶりの来日を果たした(というか適当に言い訳つけては2~3年に1度は地球の真裏から遊びに来ている気がしてならないぞ?)弟子の事は、まあ、可愛いと思ってはいる。
「ええっと、イタダキマス!」
片言の日本語でそう返してくる弟子に「Vamos lá, mastigar(めしあがれ)」と呆れ気味に返す。
今日はあまり腹も減っていないからと選んだ卵サンドとコーヒーをもさもさと口に運ぶ。
(……弟がいたらこういう気持ちなんかな)
俺たちは人間じゃないから、そういう気持ちをちゃんと理解している訳じゃない。
でも「Delicioso!(美味しい!)」と叫びながら飯を食うミナスジェイラスを、可愛いと思うのはきっと普遍的な感情なんだろう。





浦項と八幡の死ぬほど仲悪い師弟と、ミナスジェイラスと君津のげろかわ師弟。

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梨を食う

大分からクール便の荷物が届いた。
『この半年お世話になったのでそのお礼です』という簡素なお礼状と一緒に届いたのは、カボスや冷凍のから揚げととり天に大分の焼酎と言った大分の特産品の詰め合わせだった。
比較的日持ちのするものが多いのはありがたい。大分の妹分である光の入れ知恵だろうか。
とりあえず冷蔵庫にポンポンと押し込んでいくことにすると、箱の奥の方にまだ入っていたことに気付いた。
「……幸水か」
大玉の梨が二つごろんと箱の隅から飛び出してくる。
一つは冷蔵庫にしまうとして、もう一つを水で軽くすすいでから皮をむく。
皮を剥いだ真っ白な身から果汁がしたたり落ちてくるのは食欲をかき立てる。
梨は秋の果物のイメージが強いが、幸水は7月下旬ごろから出回り始めるので今頃がちょうど旬の手前の走りの時期に当たる。
包丁でざっくりと4つに割り、一つを口に運ぶとひんやりした梨の甘い果汁が口の中に満ちていく。
「いい梨だな」
ここ半年ほどずっとバタバタしていたけれど、こういう美味いものが届くなら頑張った甲斐があると言うものだ。





君津と秋。
フォロワさんに指摘されるまで君津の話であることを明確にしていなかったという衝撃。

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おやすみなさい、大分さん

「大分さんはまだ寝たい」の直接的な続きです


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遠い友達

胸の奥に閉じ込めた思い出がある。
海の向こう、外地という名の異郷の匂いを背負った少年と過ごした記憶だ。
今はもう会う事も出来ない彼のことを覚えてる人ももうずいぶん少なくなってしまった。
「ねえ、呉」
「はい?」
「もう会えない人に会いたいって、思った事はある?」
今、目の前にいる年の離れた友人はその問いに困ったような顔をした。
「……俺の会いたい人はいつも近くにいてくれますから」
きっとうまい返事が思いつかなかったのだろう。
呉なりに言葉を選んだ答えだった。
「それは、すごく幸運なことだよ。大切にしてあげな」



俺の、もう一度会いたい友達は、あまりにも遠くにいる。


広畑と呉と広畑の遠い友達。

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夏のお話

・酷暑(君津+東京)
クーラーの効いた事務所から一歩外に出ただけでむわっとした湿気と熱波が顔に来る。
もう日も暮れた午後5時過ぎだというのにこの暑さはいかがなものか、と彼女の脳裏によぎる。
「よう、」
「君津がこっち来るなんて珍しいじゃん」
黄色みの強い金髪をオールバックにしてクールビズ仕様のビジネススーツを着た君津がそこにいた。
ビジネス仕様の服装なんて珍しいから今日は客相手に何かしに来てたのだろうか。
「帰ってから飯食うのめんどくさくて泊めてもらおうと思っただけ」
「ああそういう事ね……」
その名の通り本来は内房に住む彼がこの東京とは名ばかりの板橋の外れまで来ることは意外に少なく、むしろ彼女が彼の元へ行くことの方が圧倒的に多かった。
「というかどこ行くつもりだったんだ?」
「食材調達、冷蔵庫が空だったんだよ」
「……夕飯スイカで良いんじゃねえ?」
ほれ、と掲げてきたのは立派な大玉スイカである。
バスケットボール大はあろうかという立派なそれは確かに二人で分ければちょうど良さそうだ。
「お前がそれでいいなら夕飯スイカでいいか」
そもそもスイカは食事ではない、という事実には目を背けてこの熱波から逃れるために事務所へと戻って行った。

・海(大分+佐賀関)
この隣人は釣りが好きである。
自分が生まれた時にはすでにこの豊後水道に釣り糸を垂らし、それを捌いて食っていた。
「……何か釣れてる?」
「仕事サボりか?」
「息抜きの散歩」
「散歩にしちゃあ少し遠くまで来たな?」
そう言いながらもクーラーボックスを椅子代わりに座り込んだ俺を追い返そうとはしない。
佐賀関は自分よりもずいぶんと長く生きてきた。同じ会社どころかヘタすると業界内でも年少に分類される自分には想像もできないほど昔の時代を彼は知っている。
「火傷の調子はどうだ?」
「だいぶ良くなってきた」
「そりゃあ良かった」
佐賀関の視線は水面に浮かぶ浮きに向けられている。
ちゃぷん、と浮きが海面に沈むとタイミングを合わせて一気に引き上げる。
その先にいたのは大ぶりなマイワシだ。
「……美味しそう」
「生きてる魚を見て美味そうって八幡辺りが聞いたら卒倒する発言だぞ」
「でも、イワシの刺身って前作ってくれたじゃん」
「そうだっけ?」
「忘れた?」
「ま、どっちにしても刺身食いたいなら食い終わったらちゃんと仕事に戻るって約束しろよ」
「うん」





フォロワさんとの絵茶会の際に書いたもの。

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