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コーギーとお昼寝

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Adoの歌声を聞きながら

「まだおいは死んどらんぞ」
試合後に着ていたシャツを指差してブルースさんがそんな事を言う。
ブルースさんへの感謝を込めたThanksシャツが気に食わなかったらしく「間違えました?」と聞く。
「あくまでうちは活動休止やけん、5月以降に新しく面倒見るっち言うてくれる人が見つかればすぐ戻る」
この不景気真っ盛りの時代にできるのかも分からないことを口にする。
「さすがにそれは夢見過ぎじゃないっすか?」
「プロが夢見れんでどぎゃんするとね」
当然のような口ぶりでブルースさんが告げる。
(マジでこの人夢見がちのガキンチョのまま死んでくんだな)
親から一度切り離された時の絶望感は知っているけれど、ここまでくそポジティブに生きて行こうなんて思った覚えはない。
まあ今は良いんだけどね?親会社のくくりから外れることで得られた自由も気に入ってるんで?
「ブルーシャークス、おいにありがとうだの尊敬だの言う前に勝ち点よこせ」
「それは無理ですねえ」
すっかり癖になった人当たりのいい笑いに「へらへらしよるな」と叱られる。
うっせえわとがなり立てる歌手のようにまだこの人は足掻くのだろう、本当の死を迎えるその日まで。


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ブルーシャークスとブルース。
私の脳内青さんはこういう感じです。

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君に希望を、僕らに絆を

4月1日、金曜日の朝はずいぶんと肌寒かった。
暖かかったり寒かったりを繰り返す天気が嫌になりつつ、今日は練習着ではなくスーツでうちを出ないとならない。
「ワイルドナイツじゃん、スーツなんて珍しい」
ジャージをまとったアルカスがスポーツドリンク片手に向こうから歩いてきていて、走ってきたんだろうと察する。
「新会社の関係で呼び出されてるんだよ」
「独立したんだっけ?」
「パナソニック系のスポーツチームを全部まとめて一つの会社にしたんだよ、これからその顔合わせ」
「あ、そっか今日から新年度……」
「そういう事。昨日の非公式決勝戦の件も言われそうでめんどくさい」
「非公式決勝戦ってあれでしょ?あんたが庭先を貸してコロナで中止になった決勝戦と同じ組み合わせで試合した奴」
コロナで決勝戦が中止になった高校生たちのために同じ組み合わせで試合を行い、中継もしたあの件はいまだ賛否両論が分かれている。
一般メディアにもいくらか取り上げられているようでうちへの非難の声もある。
「正しいと思ってやったんなら否定も肯定も受け入れるしかないじゃん」
「まあね」
少なくとも俺は安全措置を行ったうえで正しいと思った事をした、そう思っている。
協会の判断を無視したという考えもあるしそれも受け入れなくちゃいけない事だろう。
「アルカスに肯定されると少しは気が楽になるな」
「そりゃーどうも。ほら、仕事行ってきなよ」
ぽんとアルカスに背中を押される。
その触れた手から肌寒い朝を超える元気をほんの少しだけもらうと「いってきます」と応えた。



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ワイルドナイツとアルカス。

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お米の国で待ち合わせ

「さっむ……さすが雪国は違うわ……」
思っていた以上の寒さに羽織っていた上着の前を閉める。
大阪ではめったに積もらない雪がまだ薄っすら残っているのはこの間の寒の戻りのせいなんかなあ、と考えたりする。
「レッドハリケーンズ!」
そう声をかけてきたのはがっつり防寒したスピアーズで、何故かスッピーくんもポケットからこんにちわしてる。
「完全防寒やないか」
「新潟の冬だからねえ、まあこの寒さも俺結構好きなんだけど」
試合を新潟でやると言い出したときは「何でそんな寒いとこ行かなあかんのや!」と言ってしまったが、こういう地方開催ゲームはラグビー振興のためだと言われると拒めない。
(だとしても寒いもんは寒いなあ)
ふうっと吸い込んだ冷たい空気がまだここは冬なのだと伝えてくる気がする。
「さて、レッドハリケーンズって日本酒はイケるほう?」
「嫌いやないけど今は飯の気分」
「ご飯かあ、お寿司とラーメンどっちにする?」
「新潟まで来てラーメンはないやろ」
「こっちのラーメンも美味しいんだよ?ま、レッドハリケーンズが言うならまずはお寿司だねえ」
そう言いながら歩きだしたスピアーズの背中を追いかける。
街角には地元のサッカーチームのポスターとともに今回の試合のポスターも散見される。
こういうのを見るとなんか歓迎されている気がして気分がいい。

(ちーっとはこの辺のラグビー振興に役立てるとええんやけどなあ)

まだ雪の残る街を歩きながら、そんなことを考えている。


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レッドハリケーンズとスピアーズ。
新潟での試合はBS日テレの中継もあるので是非どうぞ。

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なんにもないはなし

何となく気が晴れないときというものはあるものだが、今日はもうだめかもしれんなあと思う。
ブルースにでも電話してみようかと思ったけれどあいつは今忙しいのでやめておく。
スティーラーズのおっちゃんでもええけどこういう話が一番嫌いな人やしな、シャイニングアークス?あれは論外。
こういう時は出来ればあんまり遠くない、近くにいる人がええな。
「……ライナーズのじいちゃんならいけっかな」
スマホを弄って電話を繋いでみると『レッドハリケーンズ、腹減っとるん?』と聞いてくる。
俺が小さかった時からの付き合いやしそこまで気ぃ使わんでええ人ではある。
「腹は減ってへんわ」
『そら残念、今日結構ええ感じのキーマカレー出来たんやけどなあ』
電話越しになんかミキサーの音がして、料理してるんだろうなあというのが伝わる。
こういう音ってなんか聞いてて不思議と心地ええよな。
「何キーマ?」
『肉は鶏と牛半々、野菜は人参・玉ねぎ・ピーマン・たけのこの水煮』
「たけのこの水煮?!」
『これが歯ごたえ面白くなってええねん、あとパプリカとかも入れてある』
「ピーマンとパプリカほぼ同じやん」
特に何もない他愛もない話が耳と心に心地よい。
しばらくダラダラと話していると少し眠くなってきて「そろそろ寝るわあ」と言って電話を切る。
スマホは充電器に繋いでそのまま布団にもぐりこんで静かに深呼吸。
明日どれだけ辛い宣告を受けようとも、まだ俺は大丈夫だから。

*****

レッドハリケーンズの他愛もない電話が切れて、「何やったんやろうなあ」とつぶやいてみる。
だいたい誰かが俺宛に用事もなくいきなり電話寄こしてくるときはろくなことが無い。
スマホのニュース通知を見ると【NTT、ラグビーチーム再編へ】の見出し。
「これかあ」
レッドハリケーンズ心の裡のもやはこれだったらしい。
俺と話して少しでも晴れたんならそれでいいだろう。
「にしても最近こういうの多くて嫌んなるな」
仲間が減るのは寂しい。けれどそれを仕方ないと諦めてしまう、そんな自分もいる。
長く生きてるうちに多少感情が摩耗したんかなあという気もするけれど俺にはよぉわからん。
まだ暖かい焼きカレーパンをかじりながら俺の裡には何があるのだろうと思ってしまう、そんな日曜の夜である。




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レッドハリケーンズとライナーズ

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君といつまでも

設営準備をこなしながらマスク越しに鼻歌を歌う。
きょうは俺たちの愛すべき男の100試合出場の記念日で、それを祝う商品を並べるのが妙に楽しくて仕方ない。
「なんで加山〇三?」
「そういう気分だからだよ、ぼんやりしてないで自分とこのチームテントの整備したら?」
「一通り終わって落ち着いちゃったからね」
グリーンロケッツが飄々と言い返すので「暇人め」なんて言ってみる。
「掃除でもしといてよ、俺たちのリーチの記念日なんだから」
「……ブレイブルーパスってホントにあの人の事好きなんだねえ」
「当然でしょ」
ずっと俺のところにいていい日も悪い日もそばにいてくれた。
桜のジャージをまとって先頭に立つあの姿に多くのラガーマンが心を震わせ、日本ラグビーを支えてくれた。
そんな特別な男の100キャップを俺が祝わずだれが祝うというんだか。
「チームマンの特別さぐらいわかってるでしょ」
「まあねえ」
「グリーンロケッツも記念Tシャツ買ってきなよ」
「一枚ぐらいなら良いけど財布と相談かなあ」
そんな風に苦笑いをしながらグリーンロケッツが言う。
まあ買わなくても別にいいけどね。色んな人に買って欲しいし。
腕時計を見てるとそろそろお客さんが来始める頃合いだと気づく。
「そろそろチームテントに戻れば?」
「ほんとだ、じゃあ今日はよろしくね」
そう言ってグリーンロケッツが手を振って自分のチームテントに戻る。
自分のテントの仕上がりを確認すると見本として展示していた記念シャツについた埃に気づく。

(どうかあなたがいつまでも俺たちのラグビーの一員でありますように)

そんな祈りを込めながら俺はシャツに印刷された顔を撫でるように埃を取った。


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ブレイブルーパスとグリーンロケッツ

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