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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

今宵は帰れない

窓の外の雪は夜になっても止む気配を見せず、思わず深いため息が漏れた。
県内各地の雪情報を見返すとどこもかしこも雪で立ち往生というひどい有様で、雪による死者の報告も出ていた。
「夜ご飯出来ましたよーっと」
「ありがとう、鯖江」
電子レンジのごはんに肉野菜炒めを乗せただけの簡素な食事ではあったが、こんな日は暖かいものが食べられるだけありがたい。
「にしてもこんなに雪降るの56豪雪以来なんでしたっけね」
「そうらしいわね、とにかく被害を最小限にってことで考えなくちゃ」
「うちの県庁所在地様はほんとにまじめで……ま、俺もいるんで仮眠とってきてくださいよ」
「鯖江が気にしなくても平気だから」
「気にするんですー」
そう言って寝袋を押し付けられると「食べ終わったら少し仮眠しておくわ」と伝えておいた。





福井と鯖江と大雪の話。

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ホワイトバレンタインは始まったばかり

ぴくぶらの「ピクブラバレンタイン2018」投稿作品
ほぼほぼBL


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記憶と現在

「シーウェイブス、ちょっといいか?」
ふらりと釜石さんがやってきて渡してきたのが一枚のメモだった。
「もしかしたらもう話を聞いたかもしれないが、新日鉄住金の全社大会に来てくれないかって」
「ああ……組み合わせ決まったんですか?」
「おう。鞘ヶ谷との交流試合だ」
「え」
思わず上ずったような声が漏れる。
鞘ヶ谷―新日鉄住金八幡ラグビー部―は、かつて自分が追いかけて来た背中そのものである。
今でこそ主戦場が異なるがやはりその名前は少しだけ特別な音として響いた。
「今年で鞘ヶ谷が90になるからそのお祝いも兼ねてのことらしい、お前さん昔あいつに憧れてたろう?」
「……60年代ラグビーを見てた側からすれば憧れない方が無理でしょう」
「まあお前さんの言い分は分からんでもないな、神戸も似たようなこと言ってたしな」
年季の入ったラグビーマニアの同業他社の名前を挙げてそう答える。
「楽しみか?」
自分の追い掛けた背中をついに追い越したときの感慨はよく覚えている。
生まれたてのまだ人の身も与えられていなかった自分にとってあの背中は特別だった。何よりも超えたい存在だった。
「初恋の人と会う心地がする」
「……さすがに初恋の人は言い過ぎじゃないか?」
「いえ、これ以外にいい言葉が出てこないんです」
九州の空はどんな色だろう。
数年ぶりに出会う彼らはどんな風になっただろう。
鞘ヶ谷、あなたはこの交流試合を楽しんでくれるだろうか?
かつて追い掛けていた人は今どんな風にこの世界を走るのだろう?
過去のあなたしか知らないと俺と、過去の俺しか知らないだろうあなたは今の俺とどういう風に戦ってくれるのか、こんなにもわくわくすることはない!






シーウェイブスと釜石。
全社大会交流戦、某サイトでネット中継されねえかな……

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秩父宮にも雪は降るので

ある意味絶景だが、ある意味では微妙な心地だ。
雪に埋もれる秩父宮のグラウンドに思わずため息が漏れる。
ポケットに突っ込んであった携帯をとれば『サンゴリアスさん?』と声がかかる。
「サンウルフズ?」
『そうですよ、そちらの雪はどうですか』
別府で合宿中の狼の耳を持つ少年の姿を思い出す。
やはり彼もこの秩父宮の様子が心配だったのだろう、まあ彼もこの秩父宮をホームとするのだから当然と言えば当然か。
「壮観なまでの雪」
『でしょうね、この調子であと何度降るのか……』
「スーパーラグビーの開幕戦前にまたもう一度降るんじゃないか?」
『開幕戦当日に降られたら最悪ですけどね』
「フランビーズなら喜びそうな気もするけどなあ」
『芝の状態がこれ以上悪化されたら困るって意味ですけど』
「ああ……それとそちらの様子は?」
『つつがなく進んでますけど?』
「そりゃあ良かった」
それじゃあ失礼しますと言って切られた電話に溜息を吐く。
当初こそ扱いかねていたあの子供も今ではずいぶん馴染んだものだと思う。
トップリーグが終わって梅の香りが漂えばスーパーラグビーの季節、そして夏が来れば再び俺たちの季節だ。
(スーパーラグビー開幕戦もどうなるかね?)
雪解け水と混ざった雪を踏みしめながらそっとその場を立ち去る。
もう少しすれば、春が来る。





サンゴリアスとサンウルフズ。

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滝凍る朝のこと

冬は寒ければ寒いほどいい。
ロングコートにぐるぐる巻きのマフラーと耳あてのついた帽子をかぶって、カメラを片手に真っ暗いトンネルを抜ける。
ぱあっと抜ける朝のひかりと共にささやかな水音が響いてくると、ちょっと残念だ。
人のいない観爆台。目の前には時を止めたかのように白く凍る袋田の滝が広がっている。
「……きょうは8割強って感じかなあ」
まだ完全凍結には物足りないけれど、天気ばかりはしょうがない。
カメラを置いて氷の凍結度と共に観光協会のひとにメールすれば、あと2~3時間後には更新されるはずだ。
まだ誰もいない早朝の滝のキンと冷たい空気と微かな水音は好きだ。
椅子に腰かけて、鞄に入れておいた奥久慈茶とおにぎりを取り出す。
湯気の立った熱いお茶は凍える身体をじんわり温めてくれる。
「きょうもよろしくね、滝さん」
僕そのものであるこの街の象徴である滝は、おうと答えるようにその言葉を吸い込んだ。







大子町と袋田の滝の話。

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