忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

枇杷の木と夏

『うちのグラウンドの枇杷が豊作だからコンポートを作ったんだが、ちょっと量が多いんで良かったら一つ貰ってくれないか?』
ブラックラムズ先輩からそんな電話が来たので、本社からの帰り道に先輩のところに顔を出すことにした。
二子玉川の駅を一歩出れば湿気が纏わりついてひどく蒸し暑く、梅雨の晴れ間の日差しが肌に突き刺さるように暑い。
「来て貰って悪いな」
先輩の暮らす部屋を訪ねるとモノクロでスタイリッシュな部屋の雰囲気にそぐわない枇杷の葉っぱが山のように積まれている。
「この葉っぱは何にするんですか?」
「枇杷の葉を乾燥させてお茶にしたり焼酎に漬け込むんだ、親が割と好きなんで毎年剪定した時に出た葉っぱで作ってるんだが此の光景を見せては居なかったか」
「先輩のところのグラウンドに枇杷の木があるのは知ってましたけどね」
枇杷の葉は新鮮な青い香りがしてグラウンドの芝の匂いに少し似て心地よく、その香りを嗅ぎながら作業する先輩の顔を眺めるのは退屈しない。
葉っぱと枝を分けて、使い古しのタオルで枇杷の葉っぱを綺麗に拭く。ただそれだけの単純作業だ。
やがて先輩は葉っぱを全て干し網に並べて外に干して行く。
「此れで良し、と。待たせて悪いな」
「お気になさらず。今日はもう仕事終わってるのでゆっくり帰っても怒られませんから」
「其れならば良いんだがな」
冷蔵庫からタッパーに入れられたコンポートが出てきて、それを薄いビニールに入れて渡してくる。
明るいオレンジの果肉は夏によく映える色味だ。
「じゃあ、先輩の手料理うちでおいしく楽しみますね」
僕がそんな風に笑うと「そうだな」と先輩も穏やかに微笑んだ。



------
イーグルスとブラックラムズ。
ブラックラムズのグラウンドに枇杷の木があるという話をTwitterで見たので。

拍手

PR

初物スイカで乾杯を

まだ梅雨明けしてないはずなのに本格的に夏の日差しが降ってくる。
(差し入れが重い……)
チョイス間違えたかなとぼんやり考えながら、スタジアムの控室の扉を開ける。
扉を開けた瞬間にクーラーのひんやりした空気が漂って来てちょっとほっとする。
「あ、ワイルドナイツじゃん」
「こんにちわ!」
そう言って声をかけてきたアルカスとナナイロに「差し入れに来たよ」と声をかける。
窓の向こうの試合を真剣に見ているのは、ながとブルーエンジェルズと三重パールズだろうか。
TKMは山九フェニックスのテーピングを巻きなおしているし、みんなどこか試合前の緊張感を帯びている。
「これで全員だっけ?」
「今試合してる日体大とVENUS、あとPTSとディアナが試合前の準備で、桜七ちゃんが運営の方行ってる」
女子の試合はそこまで詳しくないけど名前ぐらいは聞き覚えがある。
居ないものはしょうがないので彼女たちの分は後で渡そう。
「で、差し入れって?」
「大玉スイカ冷やして持ってきたよ」
クーラーボックスに冷やされた大玉スイカ(もちろん地元産)を取り出すと、フェニックスがそわっとこちらに視線を向けてきた。
「このスイカ切ってないじゃん」
「包丁とまな板持ってきてあるから」
お陰で重くてしょうがなかったが近くだからできる事でもある。
包丁で12等分にすると、ナナイロが目をキラキラさせながらこちらを見てくる。
ブルーエンジェルズもスイカが気になるようで時々こちらを見るので「全員分あるよ」と声をかける。
「……ジャージ、汚すの嫌なのでかけるものありますか」
ブルーエンジェルズの要望に応えて大きなごみ袋に首と腕が通る大きな切れ目を入れて「これ被れば汚さずに済むよ」と告げる。
そう告げると軽く頭を下げてビニール袋を被り、ジャージを汚さないようにパクっと頬張るとその味に目を輝かせた。
「私もスイカ貰っていいですか?」
試合が休憩に入ったタイミングでパールズも遠慮がちにそう聞いてきたので「全員分あるんでどうぞ遠慮なく」と手渡す。
アルカスは最初から何も言わずにスイカをバリバリ食っており、フェニックスとTKMもそれを見て「差し入れあざっす」「頂きますね」といってスイカを食べ始めた。
「まさか初物スイカが大会の差し入れになるとはねー」
「ちょうど休みだったし、一度見てみたかったんだよね」
女子セブンスの大会は男子15人制と雰囲気が大きく異なり、お祭り的な賑やかさで知られる。
しかし国内の女子セブンスの試合を見に行くタイミングはあまり多くなく、休みと大会日程が被ったので思い切って直接来てみることにしたのだ。
「そういうことね」
「アルカスの試合ってこの次の次でしょ、せいぜい見苦しくないようにしてね?」
「当然でしょ」
アルカスがスイカを手にニヤリと笑う。
スイカで程よく冷えた頭で、この街よりも暑い試合を見れるなら安いものだ。




------
ワイルドナイツと女子組。
太陽生命ウィメンズ、始まりましたね。

拍手

夏の初めに大掃除

リーグワンが終わり、季節は本格的な夏へ差し掛かろうとしている。
一区切りついたので大掃除をしようと言う話になり、今日は掃除道具片手にあっちこっちを拭き掃除することになった。
「やっぱ汚れって溜まるもんやなあ」
一年分の汗と泥の染み込んだダンベルを拭いたタオルは一瞬で真っ黒になり、選手たちの努力を感じさせてくれる。
今年のシーズン結果はとてもいいと言えるものでは無い。
けれど努力の痕跡はここにある。
「この辺のダンベル拭き終わりました?」
「一番下の段の奴は全部拭き終わったとこやね」
「じゃあこれでダンベル磨きは終わりですかね」
一緒にダンベルを磨いていたスタッフがそう言うので「まだトレーニングマット洗ってへんやろ」と返す。
もうすぐ梅雨でもあるし、マットがカビたら大変だ。
雑巾を新しいものに変えた後、トレーニングマットに洗剤を混ぜたぬるま湯をかけてタオルで徹底的に拭き上げる。
こちらも汚れが随分染みついていて、毎日消毒液で拭いてるのにまだ汚れたのかと驚くしかない。
(一応マット外したら床も吹き上げといたほうがええかな?)
ふたりがかりで大きなマットを拭きあげると今度は消毒液で全体を消毒し、最後は陰干しして完成だ。
ポケットのスマホを確認すると、ライナーズからラインが来ていた。
『俺これから北海道なんやけどお土産要る?』
何故いま北海道へ?と一瞬首を傾げたが、そういえばライナーズが毎年出てるセブンスの大会の会場が北海道だったなと思い出す。
(今の時期ならメロンがええかなあ)
『夕張メロンのスイーツ頼むわ』
個別ラインを閉じてツイッターの方を見るとファン感謝祭などの情報があっちこっちから流れてくる。
「こういうの見るとシーズンオフ始まる感じやなあ」
シーウェイブスが県庁行くついでに盛岡冷麺食ったり、ブレイブルーパスが優勝パレードで大はしゃぎしたり、ブラックラムズが選手の家族にバカでかいカステラ送ったり。
次のシーズンに向けた骨休みの景色を眺めていると、ちょっと楽しく思える。
「洗濯物干すんでどいて貰っていいですか?」
「あ、ごめんなあ。手伝うわ」
布系の小物たちを物干し竿にかけながら、俺は季節の節目を感じている。


(掃除終ったら、何しよかな?)

-----
スティーラーズとシーズンオフ。
公式がお掃除してたのを見て思いついたネタでした。

拍手

届かなかった夢舞台

こうしてグラウンドの外から試合を見るのは久しぶりだった。
国立競技場3階席は選手が遠すぎてもはや豆粒にしか見えないのが難だが、ここしか取れなかったのだから仕方ない。
「ワイルドナイツも来てたんだ」
「ずいぶん遠い席取ったね」
「決勝はグラウンド脇で見るつもりだったから」
俺と同じく席を取り損ねてこんな遠い席になったらしいサンゴリアスは大きな保冷バックを開き、キンキンに冷えたビールを取り出した。
しかも隙間に保冷剤まで入れており、ビールへの執念を感じさせてくる。
「一つ飲む?」
「くれるなら貰う」
「どーぞ」
自社製缶ビールを俺に寄越したサンゴリアスは、その手で別のクラフトビール缶を取り出すと保冷ホルダーに入れて栓を開けた。
そのまま勢いよくぐびぐびと呑むと「はー……」とつぶやいた。
「いい飲みっぷりだね」
俺もそう言いつつ缶を開けてちびりとビールに口をつける。
「そりゃね、今年こそは決勝出るつもりだったし」
「俺もどっかではそうなる気がしてたんだけどね」
ここ数年は決勝常連となっていたから、きっとどこかで油断してしまったのだろう。
己の油断と力不足がこの現状を呼んでしまった。
「今年は自分が緩んでるってみんなに叱られた気がする」
それはここ数年で一番酷い成績でシーズンを終えたサンゴリアスの紛れもない本音なのだろう。
同時に俺やサンゴリアスが勝ちにくくなっているという事はリーグワン全体の水準の向上を意味しており、これまでよりも厳しい世界が広がることを意味している。
「サンゴリアス、」
「うん?」
「来年は、国立で逢おう」
俺が言えるのはただ一つ、叶うかどうかも分からない事を承知で約束をすること。
来年も常勝軍団であり続けようという誓いを立てる事だ。
「……うん」
その誓いの代わりに乾杯を捧げた。




------
サンゴリちゃんと野武士さんと国立の片隅
Twitterに乗せたその頃のブレイブルーパス先輩とスピアーズも置いときます

拍手

締めラーメンの夜に

「22年ぶりの勝利って恐ろしい数字よね」
うちの姐さんがそう呟きながらタバコを揉み消す。
ワイルドナイツとの飲みを終えたあと、締めラーメン奢るから付き合えという姐さんに呼び出されて立ち寄った中華料理店で姐さんはそう呟いた。
「ようやっと二強時代が終わって新しい時代が来るっちゅーことやないですか?」
「まあそう言われればそうなんだけどね、ただ22年って長いわよね」
「それはそうですけどねえ」
「ほんと、昨今は色んなことが変わって行くわよねー」
姐さんは困ったようにラーメンを啜り、時々冷えた水に口をつける。
俺に日銭を与えてくれている鉄鋼業もつい先日大いに揉めていた合併話がまとまり、また新しい変化が起きることは目に見えている。
「そうですねえ」
「あなたの活躍が私の生きがいなんだから、来年はもっとがんばりなさいね?」
「来年こそは秩父宮やのうて国立招待しますよ」
そう言い切ると姐さんは満足したように「努力しなさいね」と笑った。


-------
スティーラーズと神戸さん

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ