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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業擬人化サイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

夏の行く先

「……あんたなんで東京に」
「ちょっと呼び出されてな」
いつもは新潟に引き籠っているはずの男がへらりとした顔で俺の前にやって来た。
「出光お前この後暇だろ?ちょっと付き合え」
「あ?!」
俺のいうことも聞かずに手を取ってずんずんと歩き出すので、昭和シェルと食事する約束をしたのに反故にするしかないと察した。
地下鉄を乗り継いで辿り着いたのは隅田川の見えるビルの屋上。
ビルの足元には浴衣や甚平でめかし込んだ老若男女が歩き回り、そういや今日は隅田川の花火だったかと思い出した。
「なんだってここに連れてくんですか、今日昭和シェルと飯食う予定だったのに」
「そうだったのか、悪いな。まあ親孝行だと思って付き合えや」
「……シェルに電話してきます」
後で穴埋めしないとと思いながら詫びの電話を入れると、2時間後にこちらまで来ると言うので地図をメールで送ってやることにした。
「あとでシェルがこっち来るそうです」
「そうか、じゃあ来るまででいいや」
ぼんやりと見上げていた空に大輪の花火が打ちあがった。
食い物も飲み物もない二人ぼっちの屋上に花火の音だけが響く。
「……なあ、出光」
「はい?」
「俺はもう国産石油と共に死んだ身なのに、何故生きてるんだろうな?」
「あんたが自分は死んだと思ってるだけでエネオスのブランドは生きてる、だからでしょう?」
目線も合わせずに言い返してやれば「そうだなあ」と呟いた。
まさかそんな事を聞きたくて俺をここまで連れて来たというのだろうか?
「じゃあ、エネオスブランドの死が俺の本当の死なのか」
ぽつりとその人がこぼす。
「……あんた、そんなに死にたいんですか」
俺を育てたあんたはそんな男じゃなかった。こんな弱くてもろい男じゃなかった。


「そんな簡単に死にたがるな」

それ以上の言葉は、もう俺の口からこぼれそうにない。


夏の日石出光。

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あおぽりずむ:1









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煙草の煙と消えていく

急に書きたくなって日石×出光習作


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餅と兄弟

「兄弟、餅食うか?」
ビニール袋片手に気仙沼までやって来た兄さんは珍しく手土産付きだった。
「正月でもないのに?」
「一関の方だと隙あらば餅つくからな……」
「ああ、あっちは餅文化なんだっけ。お茶でも入れるよ」
「冷たい奴で頼む」
冷蔵庫から氷と一緒に冷たい水出し緑茶を取り出すと、ビニール袋から次から次へと小さなパックに入った餅が次から次へと出てくる。
小ぶりのパックが総勢10個、確かにこれは一人で食べるには多すぎる。
「多くない?」
「おばちゃんに持たされた」
「ああ……」
「残ったら南リアスにやるから好きなの選んでいいぞ」
「じゃあずんだとみたらし貰うね。兄さんは?」
「俺は向こうで食わされたからいい」
セロテープでとめられたパックを開くと、ずんだ餅の鮮やかな緑が食欲をそそる。
冷たい緑茶が夏の身体を程よく冷ましてくれて気持がいい。
「じゃ、いただきます」
「おう」
つきたてのお餅は箸で掴んでも分かるぐらいに柔らかく、美味しそうだ。
一口ほうばれば仙台でもお馴染みのあの味である。
兄さんは冷たい緑茶を飲みながらため込んでいた書類(ここのところ一関にずっといたせいだ)を読み始めていた。
元々僕が生まれる前の南三陸の足であった路線の時代を想像させる真剣な眼差しだ。
(……昔はいっつもこういう顔してたのかなあ)
三陸が陸の孤島であった時代、政治によって歪められた奇怪な線形に振り回されながら一人で頑張っていた時代。
「兄さん、」
「うん?」
「……緑茶のお代わり要る?」
兄さんは手元のグラスを覗いてから、残りを一気に飲み干して「お代わりくれ」と答えた。



おまけ:盛駅にて
大船渡線「南リアス、餅食うか!」
南リアス線「たべる!」
日頃市線・赤崎線「「餅と聞いて!」」
大船渡線「お前らいたのかよ!」
南リアス「ふたりがきたらぜんぶたべちゃうでしょ!かえって!」
この後南リアスと日頃市・赤崎による餅争奪戦が繰り広げられたという……。


大船渡線と気仙沼線。
某くもじいの番組に大船渡線が登場した記念に。

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朝食は始発の前に

午前5時前、まだ薄暗い部屋のカーテンを開ければ初夏の日差しが布団の上に落ちた。
いつものようにやかんに温度計を指してからお湯を沸かし、昨日の残りのごはんも温め直しておく。
80度のお湯でお茶を淹れ、温めたごはんには塩昆布と梅干を一つ。
あとは兄さんを起こしてご飯にお茶をかけるのみだ。
食卓の上にはお茶漬けと昨日貰った漬物の残りが少し。
「兄さん、朝だよ」
「……なんだ、兄弟か」
「早く着替えて朝ご飯食べよう」
「おう」
2人で朝ご飯を食べることも、まあたまにはある。
この気仙沼の宿舎は僕らが共用で使っている部屋であり、子どもの頃はよくここで一緒に過ごしたものだった。
「「いただきます」」
食卓の上には茶漬けと漬物だけ。
愛想のない食卓だが、大して料理が上手い訳でもない僕らにはこれが限界なのである。
夜なら魚でも焼くけれどさすがに面倒だ。
「……お前の淹れるお茶は美味いねえ」
「そうかな」
「美味いよ」
率直な褒め言葉が、胸に温かく落ちていく。





気仙沼線と大船渡線。
ツイッターで「フォロワーさんの好き要素を詰め込んだ小説をいつか書く」というのをやったら同居してる二人のごはんというリクエストを頂いたので。

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