「この一年でずいぶん良くなりましたね」
モンバレーは「八幡さんや日本の皆さんのお陰ですよ」と朗らかに返す。
USスチール合併から1年、状況は随分と良くなったように思う。
「まあそもそも90年前の設備を普通の顔して使ってたあなた方が異常だと思うんですけどね」
「そこは色々あったんですよ……」
モンバレーが視線をそらし気味にしつつそんな事を言う。
「まあ、やる事が多くて退屈しないとも言えますけどね」
実際うちの社員たちが改善点を洗い出して、改善していくとそれだけで経営は改善し始めた。
無論この状態が永続的に続くかは不明だがこの改善された数字への期待感はあった。
「日本の人と同じこと言いますね」
「事実ですよ。頼みますから投資した分はちゃんと出してくださいね?」
「そりゃそうじゃないですか、行き止まりで死にかけてたのを救って貰った恩ぐらいはちゃんと理解してますから」
モンバレーは年齢で言えば私より少し上くらいになるだけあり、現実が見えていると思う。
自力で立て直せない状況にあった自分を拾った理由がこのアメリカ国内の内需であることをちゃんと知っている。
「ならいいです。ぼちぼち日本帰りますかね」
「空港まで送りましょうか?」
「平気です、ちょっと散歩しながら帰りますよ」
そんな話を終えて、モンバレーの街を歩く。
21世紀初頭から現在に至るまで鉄の都であり続けたこの街は、学術都市だけあって穏やかではある。
しかしモンバレーに言わせればこれでも随分静かになったのだという。
(まあそう言う意味では地元とそんなに相違ないんですよね)
この街の景気も私の方に懸かってる、と言われるとそれはそれで重く感じてしまう。
ポケットに入れてあったスマホがバイブを鳴らす。釜石からのLINEだった。
『いつ帰国する?』
『明日の朝には東京に戻ります』
『じゃあ明日の昼、本社に顔出せるか?一緒に飯食おう』
そんな連絡に頬が緩む。
日米を行き来する生活は厳しいけれど、帰りを待ってくれる人が居るというのは嬉しいものだ。
ここからは10時間以上の飛行機の旅。
帰りの楽しみが一つ増えたことに穏やかな気持ちになりながら、空港行きの路面電車を探して歩くのだった。
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八幡とモンバレー。もうあの合併から一年なんですねえ……。