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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

一年経ちました

「直通一周年イベントの予定、見た?」
三国芦原線が思い出したようにそんな台詞を吐く。
自分の事務所で仕事の打ち合わせと言うのももはや日常茶飯事ではあるが、たまに不思議な気持ちにもなった。
「キーボがうちに来るんだろう?」
直通を記念して新たに導入されたえち鉄の低床車両であるキーボの初となるヒゲ線乗り入れは今回の目玉だった。
「そ、うちの可愛いキーボがね」
「確かにあれは芋虫的な可愛さがあるな」
「……それ、褒めてる?」
「褒めてる」
「なんだろ、この解せない感じ。まあいいけどさ」
コーヒーと雪玉のようなクッキーをほうばりながら、彼の明るい瞳がすっとこちらに突き刺さってきた。
「これでも、一年やってこれたんだねえ」
「そうだな」


「次の1年も、よろしくね。福武くん」


福武線と三国芦原線。もうすぐ直通一周年です。

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疑似姉弟

「ねーちゃん、」
呟くようにそう呼んでみると「なあに?」と問いかけられる。
ふんわりとした桜色のワンピースの家にきなり色のエプロンを纏った光は、知らない人が見たら初々しい若妻のようにも見える。
「……いや、呼びたかっただけ」
堺は時折光を『ねーちゃん』と呼んでいた。
普段は『光』と名前で呼んでいたけれど、私的な時間に二人きりの時だけは甘えるようにそう呼んだ。
客観的には堺よりも年下にしか見えない光ではあったが、実際は光の方が先に生を受けているのでそう呼ばれることは2人の間に限っては決して違和感のない事だった。
「堺くん、準備できたから運んで」
「はぁい」
台所にはご飯の炊けた匂いとみそ汁の匂い。
誰もが想像するあまりにも普通の家庭の匂いは、普段の堺の暮らしからするとどこか異質なものではあったけれど決して嫌なものではなかった。
ご飯とみそ汁、菜の花のおひたし、お漬物、サバの味噌煮。
光の作る素朴なメニューが大皿に乗せられてワンプレートランチのような姿で出される。
「前に私があげた食器類どっかやっちゃったんだね」
「あー……あんまり使わんから人にあげちゃった」
「私がいないとすーぐご飯抜くよね、堺くんにも佐賀関さんみたいに世話焼いてくれる人がいたらなぁ」
光が呆れ気味にため息をこぼす。
その心配から来る呆れすらも、ほんの少しくすぐったくて心地よかった。





堺と光の話。

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彼女の知ってること

ついった再録+アルファ。
神戸ネキとスティーラーズさんとシーウェイブスさんの話

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水仙の季節

日に日に春の近づく気配がする。
ぽかぽかとした温かな日差し、遠くから香る梅の花のにおい、雪解け水がたてる水音。
「福井さん、すいません」
「南越前が気にする事じゃないから、気にしないで」
若々しい少女がひょこりと顔を出してくる。南越前町だ。
県庁所在地は伝統的に市と県の仕事を兼任しているので、どうしても県庁まで行く余裕がない時は県の仕事を市役所まで持ってきてもらうことも時折ある(まあ元々閑職なので滅多にある事ではないが)
南越前が持ち込んだ書類にざっと目を通して、内容を大判の手帳に書き込んでおく。
「わざわざ市役所までありがとう」
「いえ。あと、ついでなんですけど」
鞄から出てきたのは新聞紙にくるまれた1輪のラッパ水仙だ。
「ちょうど庭に咲いてたんでお裾分けです」
「越前や池田には渡したの?」
「週末に丹南勢で一緒にご飯食べる約束してるんで平気です」
「そう、じゃあ後ろの引き出しに一輪挿しがあるから飾っておいてくれる?」
「はーい」
いい笑顔でそう答えたのちに残った書類に目を通す。
年度末の多忙さと書類の山の隙間に、黄色い水仙が花咲いていた。




南越前ちゃんと福井ちゃん。もうすぐ春ですね。

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ある朝のこと

朝、市街地は小雨模様であった。
しかし常磐神社へ向かう水戸の足取りは軽かった。
「やっぱこの時間は人が少ないね」
小雨模様と朝早いせいで人が誰もいない境内を通り抜け、その鳥居の前に軽く一礼をする。
明治に創建され、今も水戸市民から熱烈に愛されるこの神社に来るのは正月以来だった。
「義公さま、烈公さま、おはようございます」
お供え物のお饅頭(来る途中にコンビニで買った)を二つ並べてから言葉をつづけ直す。
「今度、義公さまのドラマの新シリーズが出来るそうですよ。是非無事に放送されるようにお見守りくださいね」
そうして軽く2柱の神となったかつての領主を拝み、ふいに後ろの方を向くと見慣れた幼馴染の姿。
「水戸くん、役場の人が探してたよ。わざわざ近隣にまで連絡きたんだから」
「ああ、ごめんごめん。でもよく分かったね?」
「日立くんが光圀さまゆかりの場所にいるんじゃないかって」
「……読まれ過ぎだなあ」
呆れつつも傘を開いて再び小雨の道を歩く。
遠くから梅の淡い匂いがした。


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