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コーギーとお昼寝

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12月とどぶ汁

良いあんこうとめひかりが手に入ったから食べに来ない?という連絡が来た。
いわきさんいわきさんと煩い事に定評のある北茨城からそんな連絡がするのは珍しく、風邪でも引いたのかと聞いたら怒られた。
特に断る理由もないので高萩と共に北茨城のもとを訪れる。
「でもなんでこの面子?」
「いわきさんは県絡みの仕事で福島市内にいるからそれ以外で呼びやすい面子呼んだだけ」
即答である。
適当な理由ではあるが気にしないことにした。
ホットプレートには潰したあん肝と味噌が炒められたもの、そこに捌いた柳肉(あんこう)と高萩の持ち込んだ野菜やキノコが一緒に入れられて煮込まれる。
「めひかり焼きあがりましたよ」
「……ここ高萩の家じゃないよね?」
「面倒見に来る頻度が多いんで慣れました」
まるで自分ちのような調子で焼きあがっためひかりの干物を出してくるので聞いて見ればこれだ。
高萩がいかにこの隣人に振り回されているのかがよく分かる発言である。つくつく隣でなくて良かったと思う。
ぬるめの燗と一緒に差し出されためひかりを齧ってみればしみじみと美味い。
めひかりと言うといわきの方が有名だがこの辺りでもめひかりは取れるのだ。
「日立きょう車じゃないの?」
「面倒だから泊まる」
「えっ」
「ついでに僕も泊まりますね」
「いやいやいや」
いつも散々振り回されているのだ、たまにはこれぐらいいいだろう。
「ああそうだ、今夜のアド街北茨城でしたよね?」
「そうだったテレビ!」
ばたばたとテレビの電源をつければちょうどいい時刻だ。
番組開始を知らせるオープニングが響くと、いい具合に鍋の煮える匂いがした。






今更のアド街北茨城ネタ。

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真夜中の焼き鳥とビール

金曜日の夜だから、という理由でちょっとお高いビールとやきとりを買って遊びに来た兄に思わず驚きの声が漏れる。
「……にっちゃん、いま何時か分かってる?」
現在の時刻は午前2時。立派な真夜中だ。
ほろ酔い気分なのだろう、英国紳士然とした銀の瞳を甘く蕩けさせて「なんじだっけ」と笑ってくる。
「お迎え呼ぼうか?」
「やだ、ひさしぶりにきょうだいみずいらずでさけのみたい」
「酔ってんじゃん」
「そう?」
「十分酔ってるよ」
ああでもこの調子じゃあ帰らなさそうだなあと諦めて家にあげることにした。
ふわりと甘辛い焼き鳥の匂いがして思わず食欲がかき立てられて、ぐうっとお腹の虫がなる。
「びーるよりやきとりのほうがいいか?」
「食べる」
やきとりの入った箱を開けて、玉ねぎと肉の刺さったやきとりを一串づつとる。
ちょうど6串入っているから夜食にはちょうどいい量だ。
「おとうとのぜんとようようとしたみらいをねがって、Cheers!」
酔ってても発音はきれいなクイーンズイングリッシュだ。
とんと軽くやきとりを重ね合わせてから、ぱくりと口にほうばる。
室蘭やきとりらしく豚の油と玉ねぎ、それとたれの甘みが口に広がり練りからしがピリッと味を引き締めてくれる。
ここ室蘭のやきとりはやきとりという名前に反して豚肉と玉ねぎが標準で(八幡に言わせれば詐欺らしい)個人的にこの味が一番なじみ深い。
「わにし」
「なに、にっちゃん」
「むこうでいじめられたらおれにいえよ、やはたにガツンといってやるから」
「今更いじめる訳ないでしょ?」
「のちのしゅしょーもおいはらったこのおれがガツンといえば!」
「大丈夫だから、ね?」
「……わかった」



そうして、兄と弟の夜は更けていく。


室蘭兄弟の話。

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雨の日と名前の話

奇妙な取りあわせになってしまったな、と思わずため息が漏れそうになる。
毎年のように訪れる奥出雲の地で秋の通り雨に降られて雨宿り。
それ自体はいいのだが一緒に雨宿りする相手が問題なのだ。
隣にいた少女がちらりとこちらを見やるとチッと舌打ちを漏らす。
日立金属安来、たたら場の血を引き継ぐ日本で唯一の存在。
出雲は古来から日本有数の製鉄の地であったが、明治以降量産に不向きのたたらは高炉による近代製鉄にとってかわられ今や正当なたたら場の地を引き継ぐのは彼女ばかりとなった。
「……日立金属、「そんな風に呼ばせん」
ぎろりとした彼女の三白眼が突き刺さる。
安来訛りをきつく響かせてこちらを睨まれると妙な凄味があって思わず腰が引ける。
「すまん、ただこの雨がいつ止むかと思ってな」
「知らん」
懐に入れていた携帯が鳴ると八幡からの電話だった。
『釜石、今どこです?』
「林道で雨宿り中じゃが……」
『わかりました、迎えに行きますからそこにいてくださいね』
「ああ、それなら傘一本多めに持ってきてくれ」
『は?』
「頼むぞ」
電話を切ると安来はやはり先ほど以上に不機嫌になっていた。
「ここでずっと雨宿りしとっても仕方なかろう?」
すると安来は思い切りこっちの脛をけ飛ばされて雨の中を走り出す。
さすがに骨は折れなかったが結構痛い。
「釜石なんで蹲ってるんですか?!」
「脛蹴られた」
「……また安来ですか、あんな手負いの野良猫みたいのに構う必要ないでしょう」
「言うてもなぁ。出雲来るたびに敵意むき出しにされるのもしんどくてな」
「安来のことは佐賀関辺りに丸投げしておけばいいんですよ、ああいう手合いは構わないのが一番です」
「そうかねぇ?」
蹴られた向こう脛を引きずりつつ、雨の林道をゆらりと歩き出す。
まだ雨はやみそうにない。





日立金属安来と釜石さん。
2人の間にあったあれこれについてはいずれ。

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北陸とらいあんぐるはいいぞ

鯖江「北陸とらいあんぐる1巻が!出ました!!!!!!!!!!」
勝山「あんなにキラキラしたさばばー初めて見たねえ」
三国「ほうじゃな」
鯖江「……というか、なんでこの組み合わせ?」
三国「三国祭りと芝政ワールドと東尋坊が紹介されていると聞いて」
勝山「5話の扉絵が恐竜博物館だからだねー」
鯖江「なあ、気づいたんだけど」
三国「おう」

鯖江「登場する福井要素の半分ぐらい三国に持ってかれてねーか?!?!?!?!」

勝山「二巻でえーじ(※永平寺町)が出るから大丈夫だよー」
鯖江「越前和花ちゃん頼むからもっと俺を……鯖江要素を頼みます……」
三国「鯖江要素あるだろ」
鯖江「どこに?」
三国「和花ちゃんの眼鏡」
鯖江「やっぱりそこなのか!」



北陸とらいあんぐる1巻発売中です☆


という訳で北陸とらいあんぐる小ネタ話です。
1巻で出てきた福井の場所を改めて整理すると圧倒的三国率ですね……うちの鯖江さんはこれからも越前和花ちゃん推しです

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3月の夜に沈む

「『夏から春のすぐ来るやうな、そんな理窟に合はない不自然をどうかしないでゐていださい』」
今日だけでいいから添い寝して欲しいとねだられて数十年ぶりに同じ部屋で寝た翌朝、八幡が唐突にそんな言葉を漏らした。
確かそれは少し前に出た人気の詩集に出てくる言葉だ。
「なんで今それなんじゃ」
「『小鳥のやうに臆病で大風のやうにわがままなあなたがお嫁に行くなんて』」
そういうことか。言いたいことは理解した。
この男は拗ねていてるのだ。
突然訪れた別れを惜しむことなくあっさりと受け入れた事に対して自分はその程度の存在だったのかと子供のように不機嫌になっている。
「『元素智恵子は今もなほわたくしの肉にいてわたくしにわらふ』……物理的に離れたところで精神は離れんさ」
「釜石は、私がいなくても平気そうなのが嫌です」
どこぞの詩人が言うところの≪茶色い戦争≫が終わり、政治の判断により自分たちは別れて暮らすことになった。それを彼は嫌っているのだ。

「一人になったとしても、生きていくしかないからなあ」

そう言った人間らしい感情を持つには自分はあまりにもたくさんの人間の生と死を見過ぎてしまったのかも知れない。
自ら死ぬことの出来ないこの不便極まりない身体を抱えてただ歩くほかないのだ。





戦後の八幡と釜石のある夜の一幕。
引用した詩はこちらを参考にどうぞ。茶色い戦争は書かなくても分かるだろうけど中原中也です。

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