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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ビアガーデンはじめました

熊谷に引っ越して迎える夏はやはり過酷だった。
「これ、一歩間違えたら死ぬんじゃない?」
「夏だからね」
まだ朝の9時だというのに30度超えの外気温のなか、ストレッチの時点で汗がダラダラと吹きだしてくる。
「夏ってこんな死と隣り合わせだっけ?」
「そういうもんでしょ」
根っからの熊谷人だからなのか、それとも昭和の夏を知らずにいるからなのか、アルカスはそういうものだという口ぶりだった。
さっさと日陰に逃げ込んで出ていった分の水分を補いつつ、改めてグラウンドを見返す。
広く青い芝生に面した俺のクラブハウスにアルカスのいる管理棟。
そのはす向かいにはカフェやショップ、そして大きなホテル。
「つくづく、良いもん貰ったな」
「ホントにね。あんたのおこぼれとはいえ私も助かってるしね」
「そりゃよかった」
そんなことを話しつつ水分を取り体を冷やしていると、アルカスが思い出したように口を開く。
「……今度ホテルのほうでビアガーデンやるんだって」
「ビアガーデン?」
「そう、オープンは1日なんだけどその前に練習も兼ねてプレオープンやるから来ないかって支配人が」
「初耳なんだけど」
「今思い出したから、明日一緒に飲みに行く?」
「奢り?」「奢りというかただ酒」「じゃあ行く」
熊谷の暑い夏の夜に冷たいビール。
想像しただけでなかなかおいしそうだ。




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ワイルドナイツとアルカス。
ビアガーデンで思い付いたネタでした。

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プールにいた話

最近知ったけど、京浜さんは泳ぐのが好きだ。
『お迎え頼んでごめんなさい』
「別に大丈夫ですよ、どうせ目的地は同じですし」
塩素の匂いが残る湿った髪にプールバックをぶら下げたその姿は誰がどう見てもプール帰りと分かる。
車の助手席に京浜さんを乗せ、荷物を後部座席に積んでもらう。
「お昼ご飯どうします?」
『コンビニで大丈夫』
「じゃあ見かけたらコンビニ入りますね」
エンジンをつけてクーラーもかける。
ここからだと京浜さんとこの事務所までの道順が分かりづらいので近くまでカーナビをセットして、さっそく車を走り出させる。
あんまりよく知らない道なので間違えないよう集中して走り抜ける。
しばらくするといつも通る太い道に出た。ここから先は何とかなりそうだ。
「そういえば、京浜さんって潜水士取ってましたよね?」
こくりと彼女が頷く。
前に浚渫工事で潜水士が足りないときに手伝って貰った事があるが、知った時はびっくりした覚えがある。
「泳ぐの好きなんですか?」
京浜さんがスマホをポチポチと打つのが横目に見えた。
しばらくすると読み上げソフトで文章が再生されてくる。
「京浜さんというよりも私個人が泳ぐのが好きで、その一環で潜水士も取った感じかな」
私個人、という事は渡田さんとかは泳ぐのにはそこまで興味がないという事だろうか。
「水の中にいると元気になるの」
「穏やかに?」
「渡田は『扇島は元々海水浴場だし原初の記憶がお前を水に引き寄せてるのかもな』って言ってた」
「そうなんですか?」
「私は覚えてないんだけど、元々海水浴場の小島だったところを埋め立てて製鉄所にしたのが私だからその影響じゃないかって」
お前たちの性格は土地の歴史や文化に影響されるところがある、と親父さんが生きていた時に言われたことがある。
土地と工業のはざまで複合的な要素が絡み合った末に人のなりを得て俺が生まれ落ちたのだとすれば、生まれる前の事が性格や趣味嗜好に影響しててもおかしくないのかもなあ。
そんなことを考えながら車を走らせていく。
「京浜さん、というか扇島さんか。扇島さんは海の子なんですね」
そう告げて横目に見てみるとどこか納得したように彼女が微笑んだ。




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千葉と京浜。
この間おけいさんちを見に行ったときに聞いた話から生まれた設定の小話。

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ワイルドナイツのすこし多忙な休日

キックオフ10分前に滑り込んだ秩父宮立見席の最前列にはいつもの顔なじみがビール片手に俺を待っていた。
「ずいぶんギリギリに来たな」
駆けつけいっぱいの冷たいビールをサンゴリアスから受け取って飲み干す。
「っはー……」
「今日は随分と遅い到着だったな」
珍しく紅白に包まれたブラックラムズ先輩の問いかけには「午前中仕事だったもので」と返す。
「土曜日だと云うのに一苦労だな」
「優勝記念イベントが重なったもんで」
地元のお菓子屋さんからいただいた生サブレを二人に渡すと、これまでずっとカメラ小僧だったイーグルスがふと顔をあげた。
「あ、ワイルドナイツさん」
「ちょっと写真見せて」「どうぞ」
生サブレと引き換えに写真を見せてもらう。
うちの選手たちの練習の様子を写真で見た限りでは好調そうだ。
「国内戦が終わったと思ったらすぐ代表戦で心配だったけど調子良さそうだね」
「気になることがあるとすればこの湿気ですよね、雨降らないといいんですけど」
「天気予報だと降らないって話だったし大丈夫だと思うけどな」
冷えたワインとカリーヴルストをつまみながらサンゴリアスが言う。
選手入場を眺めながら思うのは一つだけ。

「今日は勝ちたいよね」
「一戦目だもんな」

カリーヴルストをぱくりと口に放り込むと、梅雨の湿った風の向こうから試合開始のカウントダウンが始まった。


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ワイルドナイツとサンゴリアスとイーグルスとブラックラムズ。
昨日の試合良かったね……

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日出ずる国から南方の友へ

「おう、ブラックラムズやん。ひさしぶり」
カメラのセッティングを終えた我にそう声をかけてきたのはライナーズであった。
手には赤っぽい色味のジュースや軽食を携え、滅多に見ない赤いTシャツの上に日よけの長袖を羽織っている。
「ずいぶんと久しぶりだな、今回はトンガの応援か?」
「当然やろ、スタッフも選手もうちの関係者多くてほぼ俺やん」
「……観客の半分ぐらいが思っていても言わずにいた事を言うんじゃない」
客席は随分と埋まっており、誰もが赤地に白と赤十字の国旗やグッツをぶら下げている。
トンガ国旗やトンガへの支援や連帯を掲げるシャツを着た人々にふと視線が向き、シャッターを切る。
「日本ラグビーにとってのトンガって、ほんま大きな存在よな」
「在日トンガ人選手のみでチームが作れる程だからな」
今回の試合は日本代表候補と在日トンガ人チームによるチャリティーマッチである。
スクラムハーフを除き選手スタッフが全員トンガ人もしくはトンガの血を引く選手で構成されたチームで、このチャリティーマッチのために所属を問わず集められた。
「みいんなトンガを想ってここに来てくれたんよなあ」
ライナーズが飲んでいたジュースを飲みながらぽつりとつぶやく。
「募金あつめたりグッツ作ったりオタイを作ったり、みいんな何かしらの形でトンガを近しく思うてくれてるからこんな試合も開かれるんよな」
「然うだろうな。ちなみにオタイってなんだ?」
「トンガのフルーツジュース、飲みさしでええなら味見してもええけど」
そう言いつつ押し付けられたオタイはココナッツとスイカの味がした。
「異国の味がする」
「トンガから日本に来た味やからな」
ダラダラと話していると選手たちが入場し、二つのチームが相対するように並ぶ。

「̪シピタウが来るで」

浅黒い肌に赤をまとった男たちが声をあげる。
空間が震えるほどの声と、全身から匂い立つ闘志。
そして日本からの支援への感謝のこもったその踊りに全身がびりびりと震えるようだった。
「感謝!」
その一言でシピタウが終わる。
「……我らには良き友がいるな」
「せやろ?」
南方の美しき侍たちよ、闘え。祖国のために。



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ブラックラムズとライナーズ。
ちょっと遅刻したけどチャリティーマッチのお話でした。

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口ずさむブルーノート

夜の海に飲まれてしまいたい、と思った。
「……結局間に合わんかったな」
新しい引き取り先を探して奔走した5月がもうすぐ終わろうとしている。
さようならとか、ありがとうとか、そう言ってくれる奴はいてもうちにおいでよとはついぞ言って貰えなかった。
まだやりたい事は沢山あった。日本一の称号に触れることも無いまま自分はこれから長い長い眠りにつくのだ。
いちおう最後かもという気持ちで挨拶はしたし、今夜はひとりにして欲しいとも頼んだ。
この世界と別れるその時に泣いてしまう自分を見せたくないという最後の意地だった。
梅雨入り前の穏やかな海に足をつける、月の光と混ざって足がとろけていく感じがする。
「行くか」
ざぶん、ざぷん、と海の底へ歩みを進める。


またいつかこの海辺の練習場に帰る日まで、迎えを待っている。

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ブルースさんの話。早く戻って来いよ……

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