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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

船で来た話

「福山さんお疲れ様です」
千葉中央港までフェリーに便乗してきた福山さんはスーツに日傘を差して現れた。
遠路はるばるやってきた客人によく冷えた麦茶のペットボトルを渡すと、おっとりとした笑みで麦茶を受け入れる。
プラ椅子に腰を下ろして一気に半分ほど飲み干すと「暑いですね」と告げた。
「ほんとですよねー、こっちはまだ梅雨入りの話出ないし……」
俺もマスクを外して水筒の麦茶を飲んで水分を取る。
「ほんとですよね。あ、これお土産のむらすずめと書類一式です」
そうだ俺の目的これだった。
船から薄板コイルの乗ったトレーラーが降ろされるのを見ながら「そういえば、」と思い出す。
「福山さんの今回の上京ってこのフェリー輸送の件で来たんでしたっけ?」
「そうなんですよ、ちょっと前から薄板コイルの輸送を長距離トラックから船と短距離トラックの併用にしたことでモーダルシフトの賞を頂くことになったので関係各所へのお礼とあいさつで」
「でも福山からトラックで運んでたのって結構幅広くて特殊な奴じゃ?」
「今長距離トラックも人がませんからね、それ用にわざわざトレイラー作ったんですよ」
福山さんは麦茶を綺麗に飲み干すと首周りの汗を軽くぬぐう。
その仕草を見てるとどこか京浜さんに似ていて、ああやっぱ綺麗な人だなあと思う。
「はー……お疲れ様です」
「本当は水島も一緒に来たかったみたいですけど」
「うちの馬鹿がすいません……」
「いいんですよ、そういうところも可愛いので」
間髪を入れずにそう答えるあたり、うちの妹分は愛されてるのだと思う。
最初に『合併するついでに福山と一緒になるから』と言い出したときは驚いたけど、上手いことやれてるように見えるしきっといいんだろう。
「私のほうからもうちの姉の事お願いしますね」
「京浜さんはしっかりしてるから俺のほうが甘えっぱなしですけどねー」
俺が苦笑いをすると「お互い様ですね」と告げる。
「?どこかです?」
「姉さんも千葉くんはしっかりしてるから甘えそうになるって言ってたので」
俺が持っていた水筒を落としそうになる。
憧れてた美人のお姉さんに甘えそうになるって言われる俺って!!!!!!!なに?!?!?!?!?
荷物の積み込みが終わったという知らせが着て「じゃ行きますね」と福山さんが腰を上げた。
「顔真赤ですし、熱中症には気を付けてくださいね」
置いてかれた俺は恥ずかしさで赤くなった顔を良く冷えた麦茶で冷ますしかなかった。




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千葉と福山

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お祝いものはどうしよう?

・始まり
リーグも終わって数日過ぎたある日、トップリーグ&トップチャレンジリーグの面々にある一通のメールが届いた。
送り主は今回の優勝者であるワイルドナイツであった。
『啓上 ともにラグビー界を盛り上げてきた皆々様方。
軽暑の候、日ざしに初夏を思わせるこのごろですがみなさまおおかわりはありませんでしょうか。
さて、例年であればリーグの閉幕後はそれぞれ優勝者が発案し地元で祝いの席を行うのが通例となって久しくなりましたが昨今の状況を見て今回は延期といたします。
ですが何かやらねばそれはそれで退屈と言うものであるかと考え、皆様に祝いものを選んで送ってもらうという事を考えました。
そしてそれらの祝いものを飲みながら全員で12日の日本代表対サンウルフズ戦をオンラインで楽しむイベントを企画します。
つきましては以下の条件の下、お祝いの品を選んで6月12日正午までに当方へ送付いただければ幸いです。
・祝いものはご当地の酒と肴&転居先で使えるものの組み合わせにすること
・予算は一万円程度(送料はこちらで負担します)
・冷蔵冷凍品生酒可、日持ちしない生鮮品や金券/カタログギフトは不可
・酒やつまみの種類と量は上の不可条件にはまらなければ不問
住所は(個人情報保護のため省略)です。
皆様からの祝いの品をお待ちしております 拝具』

・サンゴリアスさんとブレイブルーパスさんの場合
「普通さあ、祝いの品って相手への好意で送るものだよな?」
「暇だったんじゃない?」
地元のショッピングモールで先輩と遭遇した俺は小さくため息が漏れた。
伊勢丹が潰れてさえいなければもっと手早く決められた思うけれどなくなったものはしょうがないので、駅前のアートマンを見て回る羽目になる。
「酒はどうせ自社の酒だろ?」
「とりあえずウィスキーとジンを一本づつとチョコレートボックスまでは決めてるんだけど、あとグラスでも送ろうかと思って」
「それでアートマンね」
「先輩は?」
「国府鶴と地ビール、あと新しいハードディスクまでは決まったけどつまみどうするかなって」
「試合録画してるとハードディスクすぐ埋まるもんね」
「なあ、このグラスよくないか?」
先輩が見つけたのは薄口のグラスセット。酒を飲むのに使えるし予算的にもちょうどいい。
ワイルドナイツはこういうの持って無かったと思うので引っ越し先でも酒を飲むのに使えるだろう。
「そうだ、俺が甲府鶴に合うつまみを作って先輩の名義で送れば良いんじゃない?」
「天才の発想か?」
そうと決まれば善は急げ。
グラスを買ったらよく合うつまみを作って送ってやらなくちゃ。

・レッドドルフィンズくんの場合
困った。実に困った。
ワイルドナイツさんからの突然のメールの内容に、俺はシンプルに困惑した。
まだ付き合いの浅い相手に送る祝いの品の王道と言えば金券やカタログギフトだろうにそれを封じられているのだ。
引っ越し先にあると便利なものって何だろう、と考えていたその時だった。
「……ブルーベリーの木?」
ブルーベリーは地域の特産であり健康食品である。それに紅葉して美しい。
氷砂糖とホワイトリカーで漬け込めば美味しいお酒にもなる。
「うん、そうしよう!ブルーベリーの苗木なら貰えるあてもあるし何よりブルーベリーはあって困らないし!」
「息子ぉ!!!!!!」
近くにいた親に全力で止められた。

・コベルコスティーラーズの場合
「神戸の酒と言うたらやっぱ日本酒よなあ」
灘五郷ワンカップ30本詰め合わせセットに明石だこの瓶詰をセットで箱に詰めてガムテープで封をする。
色々詰め過ぎたのでちょっと重くなったがご愛敬だ。
「あと住所はーっと……あ、」
メールを見返していると引っ越し先で役立つものという一文に目が留まる。
そんなもん入れてへんわーとつぶやきながら、ふとあるものの存在を思い出す。
「ねーさーん、使ってへんソムリエナイフあるよなー?あれ人にあげてもええー?」
姐さんの部屋に呼び掛けるといいわよーと返事が来る。
いつだったか人に貰ったがずっと使ってるものと使い勝手が違うのでしまい込んでいたソムリエナイフ。
未使用のまましまい込んであった奴だしあげてしまっていいだろう。
「ま、ワイン飲む機会もあるやろうし隙間にこれ入れとこー」
ガムテープの一部を剥がして隙間にむぎゅっと押し込むともう一度封をし直した。

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ラストゲームは君と

最後の一球が蹴り出され、試合終了の声がスタジアムに響いた時何故か無性に泣きたくなった。
「あ゛ー゛……優勝出来なかったなあ」
ひと席空けて隣にいたサンゴリアスが伸ばしていた背筋をだらんと後ろに傾けて空を見た。
ここ数日の悪天候からは想像もつかないほどによく晴れた東京は蒸し暑いくらいだ。
「前半うちの優位で進められたのが大きいかもね」
「まあそうだけどな、審判もまあアレだけどそこは選手で合わせられないといけないわけだし」
「何より今日は福岡堅樹のラストゲームだから気合の入り方も違ったのかもね」
「……ボーデン・バレットも今日が最後だよ」
文句を言いたげにそう告げたサンゴリアスに「それもそうだけどね」と呟いた。
そう考えると今日はいろんなものが随分と終わりを迎える日だということに気づく。
「後で試合見返しながらオンラインで感想戦しようよ」
今日の試合は今日だけに留めておくにはもったいない。
節目の試合でありラストゲームだ、骨まで味わい尽くしたい。
「いいよ、ただ先輩が焼肉連れてってくれるって言うからその後でいい?」
「むしろブレイブルーパスさん参加して貰えばいいんじゃない?」
「じゃあそっちも人呼んでよ、アルカスさんとかさ」
「アルカスはちょっと無理だけど人は呼んどく」
これは全ての終わりのゲーム。その舞台に共に入られたことを俺は心底誇りに思っているのだ。
そして、始まりの舞台にも二人で立ってやろうじゃないか。

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ぽんぽこたぬきは吉兆か

『うちのグラウンドに狸が出た!』
サンゴリ明日からハイテンションのLINEとともに届いたのは、芝生で一休みする一匹の狸。
そこそこの大きさのように見えるし大人だろうか。
『都内で狸ってたまに見るぞ?』
『そうなの?!』
『ブラックラムズのところはよく見かけるって聞いた』
サンゴリアスはまだ若いから見たことがあまりないのだろうが、ブラックラムズやグリーンロケッツの所にはよく出てくると聞いた。
でもまさか狸でこんなにテンションが上がるのか。
(こういうところは都会育ちだよなあ)
戦前生まれなんかむしろタヌキは捕まえて食うものぐらいの感覚だろうに、と思うと苦笑いがこぼれる。
『珍しいから明日優勝できるぞって意味だと思ったのにな(´・ω・`)』
明日の日本選手権の吉兆と言う風にとらえたらしく、しょんぼりの顔文字までつけてくる。
『神頼みはいいけど最後は実力だろ』
『そうだけどね』
『タヌキは他を抜くで吉兆と思うのは間違いじゃないけど、最後は実力で勝たないとな』
『優勝したら酒奢ってね』
調子のいいスタンプまでつけてくるサンゴリアスに思わず苦笑いが漏れる。
俺より強いくせにこういうところでは後輩っぽいところを見せてくるからずるいよなあ、と思いながら『次の週末ならいいぞ』と返信をした。
せっかくだしたぬき汁でも探してやろうと思いながらスマホの検索画面に狸と打ち込むのだった。


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ブレイブルーパスとサンゴリアス。
公式がたぬきでテンション上がってて可愛かったので。

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大舞台で待ち合わせ

『決勝進出おめでとう』
ワイルドナイツからの第一声はそれだった。
試合後の浮かれ騒ぎのなかでかかってきた電話の声はどこか熱があった。
「ありがと、また今年もこの組み合わせだな」
『順当でしょ』
「そうだけどさー、試合前にLINE送ってきたろ?決勝で待ってるって。ちょっとは負ける可能性考えてたろ?」
『ちょっとだよ、8割がたお前が勝つかなって思ってた』
「残り2割は負けかよ」
『勝負は時の運だしね』
それを言われると言い返せなくてちょっとムッと来た。
「俺は100パーお前が勝つと思ってたんだけどなー」
『そうなんだ?』
「おう、お前のラグビーをよく知ってるのは俺だしな!」
しばらく妙な間が空いて『……一瞬求婚しそうになった』と呟いた。
「お前と一緒になったら試合できないじゃん」
『そうだけどさ……俺の純情もてあそんでない?』
「純情もてあそんでないって、一番のライバルとしてパナソニックワイルドナイツをよく知って居るって自負があるだけだよ」
俺の言葉にワイルドナイツは深い深い溜息を吐いた。
果たして俺は呆れられるようなことを言ったか?と疑問が沸く。
『……まあいいや、23日楽しみにしてる』
「俺も!」


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サンゴリアスとワイルドナイツ。

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