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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

7年ぶりに勝ちの味

「そういえば事務機ダービーで僕が勝つのって結構久しぶりですよね」
イーグルスは久しぶりの勝利への感涙をタオルで拭いながら此方に問う。
「七年ぶりになるか、随分汝も成長したな」
「速度はともかく成長しないものはないですから、これで安心して秋田遠征出来るなー!」
そう言いながらイーグルスは心地よい春の風を胸いっぱいに吸い込み、晴れやかな面持ちで空を見上げる。
正直に言えば今日の試合は最後のミスが響いてしまったように思う、しかしそれを誘い込むだけの地力を得たというのは正しく成長である。
「少々血の気が荒くも見えたがな、何度か揉めていただろう」
「あー、まあ、そうですね」
「何か心当たりが在るのか?」
僅かな躊躇いの後、周囲の目を確認して小さな耳打ちをする。

「……ここだけの話ですけど、今日うちの親が会長と一緒に来てたんですよね。勝ったら特別勝利給出すって言われてたんでそれでヒートアップしやすかったのかも」

そこまでこの試合に思い入れがあったのかと言う感想の前に、イーグルスは唇に人差し指を当てて他言無用を知らせてくる。
個人としての我らは付き合いの長い先輩後輩であるので話しても良いと判断したのだろう。
しかし内容が選手の士気に係わる事だ、我が必要以上に人の話す事を嫌がったのだろう。
「イーグルス、「はい?!」
「秋田土産は稲庭うどんを頼むぞ、我は稲庭うどんを食べた事が無くてな。ついでにいい酒を一本」
口止め料の意味も含め手土産を頼むと後輩は「……先輩のお望みのままに」とほほ笑んだ。


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ブラックラムズとイーグルス。
事務機ダービー楽しかったなー!

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俺の太陽が消えたとしても

2010年、5月だというのに肌寒い雨の日に届いた夕刊のことを今もよく覚えている。
-三洋の白物家電事業、パナソニックへ統合-
それは事実上三洋電機の消失を意味していた。
生みの父と育ての母を繋いでいたその名前の消失は、俺の心の柔らかな部分に深く突き刺さった。
「ワイルドナイツ?」
気付くと辿り着いていたサンゴリアスのもとで、俺はこう頼んだ。
「おれをころしてくれ」
「は?」

「三洋電機のまま俺を殺してくれ」

サンゴリアスの手で殺されることが、俺の願いだった。
パナソニックに殺されるぐらいならば最後のライバルに息の根を止められたい。
ラグビー場の芝生と汗のにおいの中で死ぬことのみが望みだった。
「馬鹿か」「は?」
「人間だって親は先に死ぬのに、なんでお前は親と一緒に死のうとするんだよ」
「親が死んだら俺たちは残れないだろ」
「クラブチーム化すればいいだけのことじゃん、実際それでシーウェイブスさんとか元気に走り回ってるし」
確かにその人の名前を出されてしまうと否定できない。
21世紀の終わりとともに父親とともに消え去る可能性があった彼が、地域の人々の情熱によって生き延びて今も芝の上に生きて居る。
「それに優勝してお前が生き延びれば、三洋電機の名前が残せるだろ」
サンゴリアスはからりとしていた。
初夏の風のように湿り気のない言葉が俺の心を軽くした。
「それに、ここからは俺のエゴだけど」
「なに」
「お前がいないと日本ラグビーはつまんなくなると思うんだよな」
「……じゃあ、今日死ぬのはやめる」
「うん」
「死ぬのはお前の全勝優勝記録を越えて、シーウェイブスの最多優勝記録を越えて、世界に自分の名前を忘れられなくするまでにするよ」




それはあの地震から半月ほどの、健やかなほどよく晴れた日だった。
目が覚めると昨日まで赤かった髪の毛の一部が青く染まっていた。
それは三洋電機の消滅を示す痕跡であった。
明るい春の朝日の中で死んだ家族を思って泣きながら、それでも生きていくことを小さく母に詫びて過ごした。

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ワイルドナイツの昔の話。
ガ〇アの夜明けが三洋電機だったから……

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似たり寄ったり

日が暮れて肌寒くなったスタジアムにはもう一部のスタッフしかおらず、撤収作業が始まっている。
「シャイニングアークス」
「はい?」
「今日はありがとうございました、よかったらどうぞ」
差し出された豚汁と箸を受け取ればほんのりとちょうどいい暖かさと味噌汁の香りが心を和ませる。
これは冷たくなる前に食べてしまうのが礼儀だろう。
「いただきます」
ずっと口を付けた味噌汁からは馴染みのある優しい味がする。
「……正直今日の試合内容のせいであなたの事ちょっと嫌いになりそうなんですが」
「えっ」
「だって、本当ならトライになってたものを何度邪魔されたことか」
グラウンディング(※トライの際にボールを地面につける行為、これをしないと得点が認められない)を幾度となく阻止されたし逆転勝利は立ち消えになるし、なかなかやっていてキーッ!と歯噛みしたくなるような試合だった。
「それはそうですが……」
「けれども全力でぶつかってきてくれた証拠でもありますしね、この豚汁に免じて許します」
ダイナボアーズは納得いくようないかないような、不服そうな表情をしながら「はあ」と呟いた。
「次は勝ち点を倍返しにしていただいていきますから」
「いえ、次はちゃんと勝ち点を頂いていきます」
ごちそうさまでしたと豚汁の容器を返すと片付けも終わりだ。

「次は私のホームでお会いしましょうね」




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シャイニングアークスとダイナボアーズ

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青天を衝きたい

「最近釜石が大河の長文感想私に送ってくるんですよね」
八幡さんがため息をつきながら釜石さんから届いたという長文感想メールを私に見せてきた。
今年の大河の主人公と言えば多くの企業たちに影響をもたらした人物であり、元々大河が好きだという釜石さんがワクワクしながら見てるのも分かる気がする。
「長文ですね」
「ただ問題はここなんですよね」
そう言って指さしたのは3話で水戸藩が大砲を幕府に献上したシーンについての感想だった。
「『高任さんの大砲をもっと深堀りしてほしかった』……?どういうことですか」
「釜石、水戸藩が裏主人公って聞いてから『高任さんと那珂湊反射炉が出るかもしれん!』ってずっとワクワクしてたんですけどさらっと流されちゃったんで落ち込んでるみたいなんですよ」
水戸藩が現在の茨城県ひたちなか市に作った那珂湊反射炉は釜石さんの生みの親である大島高任の建造した反射炉である。
この反射炉づくりと水戸藩による大砲鋳造が橋野高炉や釜石製鉄所へつながっていくので、いわば水戸藩の大砲は釜石さんの兄弟分のようなものなのだ。
「それは無理筋では?」
「私もそう思ったんですけどね。ほんと、どう返事しますかねえ」
ため息をつきながら朝茶を口に含む八幡さんにふと思い立って口を開く。
「でも私と小倉さんなら出る可能性ありますしそっちで我慢してもらう、と言うのはどうですか?」
「関わってましたっけ?」
「ええ、渋沢さんはうちの創立に関わってますし小倉さんのお兄さんのとこは取締役会長でしたし」
「それで釜石の気が晴れるといいんですけどね」
そう言いながら釜石さんへのメールの返事を書き始める八幡さんの目は、どこか遠くを見てるのだった。


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戸畑と八幡。青天を衝け毎週見てますか。

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イーハトーブのもてなしを

「掃除はこれでよし、と」
グラウンドから枯れ草や鹿の落とし物(なんせ市街地を鹿が歩き回る土地柄なので)を回収し、袋の口を結ぶ。
ボランティアによるスタジアム整備ももうそろそろ終盤だ。
「……シーウェーブス」
「ああ、ダイナボアーズか。まだテント組むには早いんじゃないか?」
「天気や風を見たくて来たんだが」
「今日は大丈夫じゃろ、海風もゆるい方じゃし天気の急変もなさそうだからな」
うのスタは海が近いのでどうしても海風の影響を受けやすいし、芝も時々鹿に喰われたりする。収容人数も決して多くない小規模なスタジアムだ。
「いつもシーウェーブスのもてなしには感服するものを感じていたが、今回は直接関わり合いのないトップリーグの試合だと言うのに本当によくしてくれて助かっているんだ」
「うのスタで試合する奴はどこの誰でもみんなもてなすのがわしらの流儀なもんでな」
10年前のあの日、ラグビーが結んだ関係に救われて助けられた身の上だ。
ラグビーという縁でこの土地に来た人がここを素敵だと思って帰って行くことは本望なのだ。
「そうだ。今日の試合見にいくからな。チケットもとってある」

「……勝って帰ろう」

ダイナボアーズのその目に闘志の火がカチリと灯るのが見えて、ああ今日はいい試合になるなと確信した。

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シーウェイブスとダイナボアーズ

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