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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ラグビーボールはベリー味

「練習試合の後、時間は空いてるか」
ダイナボアーズさんがふと思い出したようにそう問いかけてきた。
それは練習試合前の軽い打ち合わせを終え、さあユニフォームに着替えようという矢先のことだ。
「空いてますけどどうしてですか?」
「父が昼間ケーキを買って来たんだが一人では食べ切れそうにない」
「ああ……でも珍しいですね、ダイナボアーズさんがお父さんの事言うの」
「父は忙しい人だからな、試合も見てくれることも稀なくらいだ」
「単純に顔を合わせる頻度が低いってだけでしたか」
「国防を支える身である以上多忙はやむなしだろう」
諦めを含みつつも父親への憧れと誇りを強く滲ませた声色は少しだけ気持ちが分かる。
僕だってキヤノンという会社を愛している。そしてその化身たるあの人の事も。
「せっかくですし、夕飯一緒に食べましょうか。ピザが良いです」
「ピザか」
「お嫌いでしたか?」
「いや、構わない」

****

練習試合後、僕は彼の私室に招かれ大きなピザとサラダを二人で分け合って食べながら練習試合の反省会をした。
「トップリーグとして今回の結果はちょっと不甲斐ないものがありますね……」
「こちらとしては楽しかったがな。そろそろケーキに行くか?」
「はい、ついでにコーヒーも頂けますか?」
「ボトル入りの物で良ければ」
ボトル入りのコーヒーをなみなみとマグカップに注ぎ、冷蔵庫から出て来た白い箱がどんと食卓の真ん中に置かれる。
そうしてゆっくりをふたを開ければ、白いクリームに青と淡い緑の入ったトップリーグ公式球と同じデザインの立体的なケーキがお出まししてくる。
「……実物大ですね」
「ああ」
これを丸々一個は甘党でもない限り一人で食べるにはいささか大きすぎる。
僕も特別甘いものが好きな訳ではないし、目の前の相手の反応を見るに同感なのだろう。
「父が言っていたが、今日はラグビーの日らしいな」
「ええ、今日がイギリスでラグビーの原型となったスポーツの生まれた日だと言われてますね。前にラグビー発祥の学校行ってませんでしたっけ?」
「ラグビー校には行ったがさすがに日付までは覚えてない」
「まあそうですよね」
フォークを借りて隅の方を一口食べると生クリームの甘さとスポンジのふわふわ感が広がり、間に挟まれた苺やブルーベリーの酸味がクリームの甘さを引き締めてくれている。
「あ、美味しいですねこれ」
「本当だな」
ケーキを食べながらラグビーにまつわるトリビアを語り、それをダイナボアーズさんは静かに聞いている。
(まあ、これもシーズン前だからできる息抜きですよねえ)
今シーズンのトップリーグは短期決戦だから気を抜ける瞬間は例年よりも少ないだろう、ましてトップチャレンジリーグは降格組が2チームあって去年より多い。
ワールドカップ前の厳しいシーズンを生き抜く前に、ケーキで英気を養うぐらいきっと許される。




ラグビーの日のイーグルスとダイナボアーズ。

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つくば周辺の施設擬人化(仮)

半年ぐらい前に遊びで考えてたやつを今更まとめる。
主につくば周辺の施設の擬人化です。



・KEK(高エネルギー加速器研究機構)
日本最初の加速器を保有する素粒子物理学の聖地的な感じの施設。人間は好きだがコミュケーション能力が低いため若干敬遠されがち。でも最近自分が写真写りが良いと理解したらしく、写真を撮る人に好かれたいと四苦八苦している。
・石の百年館
日本国内外の石を専門とする博物館。とにかく地味だと言われるがどうせ地学者は地味と言われる宿命……と諦めた。専門は岩石。国土地理院は近くて遠い何か。
・国土地理院
人懐っこくさっぱりした気質だが、やっぱりオタクなのであとのことは大体察してほしい。
・筑波大学
つくば市を今のようにした諸悪の根源(嘘)
元々教育が専門だけあって子供好きでスポーツや美術にも詳しいのだが、いかんせん土地柄のせいで理系の専門家みたいに思われてしまっている。もう慣れたけどな。
・JAXAつくば
つくばを代表する名所的な施設の一つ。
空の向こう側に夢を見続けるロマンチスト。世間受けの良さは自覚している。

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きょうは35度を超えてない

「あつい」
ぽつりとそんな台詞が口から洩れる。
一時期の連日40度に迫ろうかというような酷暑に比べれば落ち着いたとはいえまだ8月の下旬、暑いもんは暑い。
ましてやここは酷暑で名高い埼玉・熊谷、東京から流れ込む熱風とフェーン現象により余計に暑い。
「……なら熊谷に来なけりゃいいのに」
出迎えたのは浅黒い肌にオレンジと紺のグラデーションの髪をした勝気な雰囲気の女性・アルカス熊谷だ。
女子ラグビーの強豪として名高いが同じ熊谷に縁のある者同士なにかと顔を合わせることはあった。
「これも仕事の一環だから、ちょっと涼ませて」
アルカス熊谷は呆れたようにクーラーの効いた部屋へと誘導し、そのまま冷風のよく当たるソファーに寝ころんだ。
「そうだ、ガリガリ君いる?」
「いる……」
「ソーダ、コーラ、梨、グレープフルーツ、どれがいい?」
「普通にソーダでいいよ」
冷凍庫の前から放り投げるように渡されたのはグレープフルーツだった。なら何故聞いた?と言いたくもなるがまずはこの身体に溜まった熱を冷ます方が優先だ。
ガリっと齧ればグレープフルーツの酸味とシャリシャリ食感が心地よく、身体のほてりを冷ましてくれる。
「というか、オーストラリアにいたんじゃ?」
「昨日戻ったよ」
「へえ、帰国翌日仕事なんて大変そう」
「企業チームはそんなもんだよ」
しゃりしゃりと氷菓子をかみ砕き、冷たい風を浴びながらようやくひと心地着いた気分になれる。
「まあ、うちもお金が無いから一長一短なのかなあ」
「……クラブチームってそんなに貧乏なの?」
「野球やサッカーだと大きい会社がスポンサーついてくれたりするけどラグビーはね。あ、今度クラウドファンディングやるから投資してよ、50万」
「もっと安いコースなら検討しとく」
ちえっと呟いてアルカスは俺から視線を外す。
不機嫌な妹分(としかこの関係性を言いようがない)は面倒なようなそうでもないような、よく分からない感じだ。
(まあ、うちは兄弟分みんないなくなったしなあ)
一応大阪の方にいなくはないけど、あれは松下の子だ。三洋の子じゃない。
今はもういない兄弟と特別縁が深かった訳じゃないし、兄弟という感覚はいまいち掴みかねるところがあった。
「チラシぐらいなら貰っておこうか、うちのイベントに置いとくぐらいならできるし」
「むしろTwitterで拡散してよ」
「SNS繋がってないし無理じゃない?」
「無理って……ガリガリ君代取るよ」
「100円置いとけばいい?」
不愉快ではないこの距離感を案外俺は楽しんでいる。




野武士とアルカスさん。

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その腕に花束を抱いて

その日付は彼にとっては特別で、その場所に居合わせることが出来ることは僕にとっては本当に素晴らしく喜ばしいことでもある。
「シーウェイブスさん、」
「ジュビロか」
お祝いの品の積みあがった部屋で、彼は嬉しいような困ったような表情をこぼした。
「落成試合、呼んでくれてありがとうございます」
「こちらこそわざわざ釜石くんだりまで来てくれて助かるぐらいだ」
「これ、お祝いの花束です」
お祝いに持って来た花束はゴミにならないようチョコレートで作られた花束にしたが、甘いチョコの香りを嬉しそうに嗅ぐと「ありがとうな」と顔をほころばせた。
「これ、チョコで出来てるから食べられるんですよ。お嫌いでないと良いんですが」
「甘いもんは嫌いじゃないから大丈夫だ」
「なら良かったです」
尊敬する先輩の記念すべき場面に立ち会あえることが、僕にはとても喜ばしい。
チョコレートの花束を抱きしめた先輩と、今日は本気の試合になるだろう。
さいわい、今日は晴天の涼しい日だ。きっといい試合になるだろう。





ジュビロとシーウェイブス。うのスタのこけら落とし楽しみです。

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Take Me Out to the Ball Game!

7月某日、東京ドームの入り口。
「……蒸し暑い」
「この酷暑だからなあ」
諦め気味に酷暑への文句を吐いた君津に、東京が諦めの言葉を吐く。
ぶぶぶと電話が鳴ると相手はさっきチケットを取りに行った名古屋だ。
「はい?」
『僕です、いま鹿島君と合流したんでそっち行きますね』
『東京ドーム意味分かんないなんでこんなに広いの?!』
電話越しにヒステリックに叫んだのは鹿島だ。
「わかった、あと鹿島にはカシスタも大概広いって言っといて」
『あ、はい』
ブチっと電話を切ると「きみつさぁん」「君津、」と疲れ気味の声と少し覇気のある声が並ぶ。
売店で買い込んだビールとつまみの弁当やから揚げを抱えたかずさと広畑だ。
「君津さん、一応これでも私めも本選出場チームなんですけど」
「勝ち進んだら試合するかもしんないだろ」
「まあそうですけど……」
よしよしと軽く宥めてやればちょっとだけ機嫌がよくなったように見える。うん、うちの野球部はやっぱり可愛い。
「君津さん、」
「きみつー!マジでここ広過ぎなんだけど!」
「カシスタと変わんねえだろ、つーか千葉は呼ばなかったのか」
「なんか川鉄は7月がお盆だから西宮とズッキーニで精霊船やバイク作るんだって」
「精霊船って長崎の風習じゃ……つーかきゅうりじゃねえのかよ」
「なんか川重は伝統的にきゅうりで軍艦とか飛行機作って死んだ人に乗って貰うんだってさ」
「神戸川崎ってなんでこうねじが飛んでるんだろうな?ところでお前んとこの野球部は?」
「つばさならかずさくんの後ろに……「呼びました?」

「「「「?!?!?!?!」」」」

背後からぬっと音もなく顔だけ鹿の人間がかずさの後ろから出てくるのはちょっとしたホラーだ。
他の面々がビビるなか、鹿島だけが当然のツラしてる辺りが慣れを感じる。いや、つばさはいつも無言でぬっと出てくるけどな。
「つばさ、アントンちゃんと送ったね?」
「もちろんですよ」
ジャニ系きらきら男子にニコニコと応える鹿人間というシュールな光景は、鹿島製鉄所ではおなじみの光景であるが東京ドームだと違和感がすごい。
「……君津、アントンって誰?」
広畑さんがぽつりと耳打ちをしてくる。
「Jリーグの鹿島アントラーズですよ、あいつ鹿島の眷属なんで」
「へえ」
時々顔を合わせる旧住金組が全力で溺愛する鹿の角を持つクールで真面目な男のことを思い出す。
今でこそ全社あげて応援しているが、元々は此花が面倒を見ていたとかで今でも旧住金組はアントラーズにめっぽう甘い。
「とりあえず僕はここで失礼しますね。鹿島さん、今年こそ黒獅子旗を鹿島に持ち帰りますからね!」
「持ち帰るのは私めですからねー」
「かずさくんはまず僕の成績超えてからにしてくださいねー」
つばさのナチュラルに喧嘩を売りつつその場を去ったその後ろ姿を、かずさが納得いかない顔で眺めている。
「……君津さん、あの顔だけ鹿男が直轄なの非常に納得いかないんですが」
「そりゃーうちのつばさは北関東の社会人野球三強の一角だもの」
「とりあえず中入りましょうよ、ね?それに本線出れただけ十分ですよ……レックス君いないのに……」
「……うちのも本選出れなかったし」
取りなしてくる名古屋と広畑のコメントがさらりと自虐になっているのがなんか申し訳ない。
「それもそうか。名古屋、席案内してくれるか?あたし東京ドームあんま詳しくないんだ」
「え、でも東京さんプロ野球好きですよね?」
「神宮球場は目ぇ瞑ってても歩けるんだけどね」
「名古屋、東京は根っからのヤクルトと中日ファンだ」
「あー……まあ僕もそんなに詳しくないですけどね」
チケットを取りに行っていた名古屋を先頭に東京ドームへ入場していく。
仕事のない休日、気の合う仲間とビール片手に野球観戦ってのは悪いもんじゃない。
「♪Take me out to the ball game,Take me out with the crowd;~」
横に立っていたかずさの口から小さくハミングが漏れる。
「東京ドームにはクラッカージャックが無いのが残念だな」


さあ、楽しいボールゲームのお時間だ。

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