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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

もしも僕らに母が在るのならば

「釜石さん、今年もお荷物届きましたよ」
「ああ、すまないな」
今年は一輪のカーネーションの造花と共に小さいわりにずしりと重い箱が二つ、中身は酒だろうかと推測してみる。
母の日になるとカーネーションと共に荷物が名古屋と大分から届くようになったのはいつの頃だっただろう?
新日鉄内部で釜石を指して母なる製鉄所という呼び方が普及してきたころからだっただろうか。
小さな紙袋と一緒にカーネーションを一緒に渡してきた名古屋と大分に首を傾げた日のことを思い出す。
『はい、』
『釜石さんへのプレゼントです』
『……誕生日プレゼントにしちゃあ時期が違うが』
『大分君の発案で母の日のプレゼントを用意してみたんです』
名古屋がにこやかにそんなことを言って来る。
『なあ、大分わし一応男神なんじゃが』
『でも、新日鉄における『母なる製鉄所』だから』
『最近社内で釜石さんの事そう呼ぶ人が結構いるんですよ』
『……そう言う事か』
理屈はなんとなく分かったし、プレゼントに罪は無いからと受け取ったのを思い出す。
これ以降数年置きではあるが母の日になるとプレゼントが届くようになってきた、間が開くのは恐らく発案者である大分の気が向いた年に名古屋と共同で行っているからなのだろう。
(……まあ、設立経緯的にも親みたいなもんだがなあ)
名古屋は自分の規模縮小に伴って多くの人員を移したのだから息子のようなものであるし、大分も富士製鉄と呼ばれながらその設置に深く関わった場所だ。
ただ、年齢的には息子というよりも孫に近いので冗談であっても母と呼ばれるのは面はゆいような心地がした。


(もし、自分にも母が在るのならばどんな人だったのだろうな)

カーネーションの造花を窓辺の空き瓶に刺し、ふと初夏の空を見て考えた。


釜石と名古屋と大分。
完全に時季外れの母の日ネタですが、釜石が母なる製鉄所と呼ばれてるのに燃えたんですよ……。

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愛はそこにある

釜石は泊まりに来た客人に服を貸すとき、だいたいシーウェイブスのユニを貸してくる。
隙間なくびっちりと広告で埋められたそれは釜石にとって特別な意味を持つものでもあった。
「……過去のユニフォームよくこれだけ残してますよね」
「捨てられる訳が無かろう?」
最愛のシーウェイブス、彼の夢であり誇りである青年の足跡を釜石は一つとして手放そうとしない。それが釜石の愛情であるからだ。

「もう一度あいつを応援しに日本選手権を見にいくのが夢だからな」

釜石の愛情は、愚直でどこまでも真っすぐだ。


八幡から見た釜石おじじの愛情の話

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ぼくらは地獄を裸足で行く

『此花には怒られるんだろうなあ』
あの日、和歌山がそんなことを言っていたのを思い出す。
新日鉄との合併話が初めて世間に取り沙汰された日のことだ。
『怒るだろうなあ』
ぽつりと俺が返すと『だよねえ』と困ったような寂しいような苦笑いをこぼしてきた。
そんな事をなぜ今思い出したのだろうと重い身体を起こしながら考える。
「あ、おはよう海南」
「……ん」
壁時計を見るともう午後だ。昼飯どきは過ぎたがおやつ時には少し早い午後2時過ぎ。
しかしお腹は空っぽで何か食べたいような気はしていた。
「とりあえず焼きそば作ったけど食べる?」
「食べる」
のろのろと食卓に腰を下ろすと麦茶と焼きそばが目の前に置かれた。
「ああ、そう言えば今日久しぶりに此花に会ったよ」
その言葉で今日は和歌山が大阪へ行く日だったことを思い出した。
半月ほど前に新日鉄住金の社名変更が世間に知らされてから和歌山と此花が顔を合わせるのは今日が初めてだった。
「そうか、」
「……なにも無かったけど、発表直後だったら俺ぶん殴られてたかもね」
「ぶん殴られたらちゃんと傷冷やしといてやるから安心しろよ」
「うん、」
「此花の事をかわりにどやしてやってもいい」
腐っても和歌山は俺の大事な男なのだ、それを傷つけられて大人しくいられるほど俺は丸い性格はしていない。
「俺は一緒にいてやるから」
もしもこの身に死後があるのなら、地獄でデートしてやろう。



和歌山と海南が男夫婦してる話。

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サレンダーなんて出来やしない

*2005年ごろのいつかのお話

「シームレスパイプに特化する?」
「ええ、」
ブラックコーヒーに砂糖を溶かしながら和歌山がそう告げる。
「随分と賭けに出ましたねえ」
シームレスパイプ(継ぎ目なし鋼管)は主要用途である油田開発の停滞から売り上げが伸び悩んでいると聞いていたが、そのシームレスパイプの方にシフトするのは大きな賭けのように思た。
「中東も少しは落ち着きましたし、またそのうち油田開発も再開するでしょうから」
「……で、私を呼んだ理由は?」
「シームレスパイプへの特化で鋼板ラインを止めることになったんです……新日鉄は今鉄源が足りてないんですよね?」
顔は笑っていたがその目は妙に冷たく冴えたものだった。
瞳孔の淡い茶色はじっと私を見定めているように思え、腐っても此花の血筋だと思い知らされる。
「半製品の購入って訳ですか」
「そういう事です」
あなたなら買ってくれるはずだというその眼差しが嫌になる。
「……そこまでしてシームレスへの賭けが失敗したら死にますよ、あなたたち」
「その時はその時です、最悪鹿島や直江津を連れて新日鉄傘下に入るのも止む無しでしょうね」
自虐めいた口ぶりで和歌山がそんな言葉を漏らす。
コーヒーを勢いよく飲み干すと叩きつけるようにコップを机に置いた。

「僕は住友金属の代表権を持つ身ですから、これ以上赤字を垂れ流す役立たずと呼ばれる訳にはいかないんですよ」

その言葉には曇りのない本気故の強さが滲んでいた。
小さくため息が漏れたのはきっとその本気の風圧に負けたのだ。
「……話は通しておきますよ」
彼はもう賭けのテーブルについている。
損をしてでも止めるなんて、出来るわけがないのだ。

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【パラレル】今まで通りでいられない

小倉と和歌山が師弟の一線を超えそうで超えない感じのお話。
いちおうパラレルです。


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